小泉環境相の「生態系の破壊」発言がまともだと思う理由

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アフリカのルワンダでスタディツアーや情報発信を仕事にしています、タケダノリヒロ(@NoReHero)です。

ツイッターでトレンドに入っていた「生態系の破壊」。どういう話題だろうと思ったら、小泉環境相の発言が取り上げられていました。

小泉進次郎環境相は同日の閣議後の記者会見で、菓子類や洗剤などの食料品や日用品の生産過程で、生態系の破壊が進んでいる可能性があると指摘、「生物多様性に配慮した商品が選ばれる社会に再構築する必要がある」と述べた。
引用元:悪化続く生物多様性、回復に「社会変革が必要」 環境省: 日本経済新聞

この発言に対して、ネットでは「また…誰に何を吹き込まれたの」、「こいつやべぇ宗教にでも入信したの?」、「小学生レベルの思い付きで発言するな!」などネガティブな反応が次々と上がっていました。

でも、これってそんなにおかしい発言ですかね……?私はとてもまともなことを言っていると思ったのですが。たぶん批判してる人たちは「食料品や日用品の生産」と「生態系の破壊」が結びついていることを知らないから、突拍子もない陰謀論でも言い出したように感じたんだと思います。

じゃあ実際、食料品や日用品の生産がどのように生態系を壊しているんでしょうか?ちょうど最近読んだ『人新世の「資本論」』という本に、その具体例がわかりやすく書かれていたので整理してみました。

パーム油と森林破壊、絶滅危惧種の違法取引

食料品の生産による環境や生態系への悪影響がすごく分かりやすいと思ったのは、パーム油の例です。

Photo by Marija Zaric on Unsplash

パーム油は安くて酸化しにくいため、加工食品やお菓子、ファストフードによく利用されています、日本人の食生活の影の主役とも言うべき存在。生産国はインドネシアやマレーシアです。パーム油の原料となるアブラヤシは、近年栽培面積が増え、熱帯雨林の乱開発による森林破壊が急速に進んでいます。

パーム油の生産の影響はこれだけではありません。熱帯雨林を農園として切り開いた結果、土壌侵食が起き、肥料・農薬が河川に流出して、川魚が減少しているんです。地域の人々は川魚からタンパク質をとっていましたが、それができなくなったので以前よりお金が必要に。その結果、野生動物、特にオランウータンやトラなど絶滅危惧種の違法取引に手を染めるようになってしまったんです。

リチウムイオン電池とフラミンゴの減少、水不足

今度はリチウムイオン電池の例。スマホやノートパソコン、電気自動車などに使われています。

Photo by David Ballew on Unsplash

このリチウム、どうやって採取されるのでしょうか?リチウムの多くはアンデス山脈(南アメリカの西側に沿って走る世界最長の山脈のひとつ)沿いの地域に埋まっています。リチウムは長い時間をかけて地下水として濃縮されていき、塩湖の地下からリチウムを含んだ鹹水(※「かんすい」、塩分を含む水のこと)をくみ上げて、その水を蒸発させることで採取されるんです。

つまり、リチウムを採掘するということは地下水を吸い上げるのと同じなのですが、問題なのはその量。一社だけでも、1秒あたり1700ℓ もの地下水をくみ上げているそうです。もともと乾燥した地帯でこれほど大量の地下水をくみ上げると、地域の生態系に大きな影響を与えてしまいます。

例えば、鹹水(かんすい)に生息しているエビを餌にしているアンデス・フラミンゴの個体数が減少したり、急激な地下水のくみ上げにより、住民たちが使える淡水の量が減少したり。

これもぼくらが毎日使う(なんならあなたが今も触れているであろう)スマホやノートPCなどのものが、生態系の破壊につながっている例と言えますよね。

だれもが環境問題の当事者

こういった例を知れば、小泉環境相の「菓子類や洗剤などの食料品や日用品の生産過程で、生態系の破壊が進んでいる可能性がある」という指摘は至極まっとうだと思えるのではないでしょうか。

このようにぼくら先進国の人間が安い値段でおいしいものを食べたり、便利な暮らしを楽しんだりするために、実は途上国の資源がうばわれ、環境へのダメージが押し付けられているんです。だから、なにかを買うにしてもそれが環境に配慮された商品かどうかをもっとひとりひとりが考えるべきだし、大量消費、大量廃棄をしないような社会にしていかないといけないよね、というのが小泉さんの言いたかったことだと思います。

ぼくも今回紹介した本『人新世の「資本論」』を読むまでは、正直「環境破壊なんて自分にはあまり関係のないことだし、問題が起きるとしてもどうせ遠い未来のことでしょ?」と思っていました。でもそれは間違いでした。ぼくらはだれもが環境問題の当事者だし、危機はもうすでに始まっています。

小泉進次郎さんはなにかと揚げ足を取られがちですが、少なくとも彼が大臣になったおかげで環境問題が話題になりやすくなったのは間違いないですよね。「生物多様性に配慮した商品が選ばれる社会に再構築する必要がある」という姿勢は応援していきたいです。今回は彼の発言は別におかしくないよね?という趣旨の記事を書きましたが、それでも「いや、ここが間違っている!」というご意見があればぜひ教えてください(メンタル弱いのでやさしくお願いします)。

人新世の「資本論」』の要約・解説記事もあらためて書くつもりなので、この話題に興味をもった方は読んでもらえるとうれしいです。それでは!

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