「青年海外協力隊になりたい」という人は考え直した方がいい~OBの経験談~

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【更新 2018/06/06】 タケダノリヒロ( @NoReHero

アフリカ・ルワンダで青年海外協力隊として活動しています、タケダノリヒロです(追記:18年1月に任期終了)。

ときどき「青年海外協力隊になりたいです」という方がいます(「海外青年協力隊」って言う人もいるけど、それは間違いね)。SNSのプロフィールに書いてあったり、ぼくに質問をくださる方であったり。

そうやって、自分のやりたいことをはっきりと言えるのは素晴らしいことだと思います。

でも、協力隊の2年間の任期をもうすぐ終えようとする者として、そんな方々に改めて考えてほしいことがあるので書いておきますね。

ひとことで言うと「手段と目的をはき違えないで」というお話。偉そうな語り口になりますが、いち経験談として参考にしてもらえればうれしいです。

「協力隊」は手段にすぎない

青年海外協力隊になりたい

そういう意見を聞くと、現役の隊員としてはとてもうれしく思います。

でも、「青年海外協力隊」と一口に言っても、職種や任地によって状況や活動内容はまったく違うんです。

たとえばぼくがいるルワンダの「コミュニティ開発」という職種でも、水・衛生環境の改善に携わる人もいれば、コーヒー栽培の支援をする人もいるし、女性組合を支援する人もいます。


↑JICAルワンダのボランティア要請情報。次回2018年度春募集は3月1日(木)情報公開予定。過去の情報は閲覧可能。

だから、たとえば「『途上国の人といっしょにビジネスをやりたい!』と思って応募したのに、職場やJICAから求められるのはビジネスとは関係のない衛生啓発活動だった」なんて可能性が大いにあるんです。

「思ってたのと全然ちがう!」という状況になってしまったら、自分自身も受け入れた側もハッピーとは言い難いですよね。

そんな事態を避けるために、「目的は何なのか」をとことん考えることをおすすめします。「青年海外協力隊」はあくまであなたの「目的」を達成する「手段」です

協力隊は「目的」を叶えるための「手段」にすぎない

この場合の目的とは、たとえば「国際協力に携わりたい」とか「途上国の貧困問題を解決したい」とか「アフリカに住んでみたい」とか。それを突き詰めていったところに、ほんとうの目的があるはず。

でもその目的を達成するためだったら、協力隊以外にもJICAに就職したり、開発コンサルタントになったり、国連に入ったり、NGOやNPOで活動したりとさまざまな手段がありますよね。

そのなかで、なぜ協力隊でなければならないのか

あなたはきちんと答えられますか?

青年海外協力隊になった目的

参考までに、ぼくが協力隊に参加した「目的」をお話しておきます。ぼくが協力隊で得たかったのは「手触り感のある社会貢献活動に携わる」という経験でした。

大学在学中に、NPOフローレンスの駒崎さんe-Educationの税所さんの著書を読んで、「ソーシャルビジネス」「社会起業家」という生き方を知りました。

ソーシャルビジネスとは、ビジネスを通じて社会問題の解決に寄与するもの。「なんてかっこいいんだ!」と憧れを抱き、仕事を通じて社会貢献活動にも携わりたいと考えるように。

それから就職活動を経て、CSR活動に力を入れている大手食品メーカーに就職しました。就職活動中に東日本大震災が起こり、その復興の過程を自分の目で見たいと思い、東北配属を希望。

その希望通り仙台に配属してもらい、仕事で震災復興支援の取組みを実施してみたり、地域の団体のボランティアにも参加させてもらったりしました。

案内役を務めた被災地ツアーで訪れた閖上(ゆりあげ)中学校の机

でも、そうやって望んでいた「社会貢献活動」にかかわりながらも、「ほんとうにこの支援は必要とされているんだろうか」とどこか釈然としない気持ちがあったんです。

本来なら手渡しで渡すボールを、壁の向こうの見えない誰かに向かって「この辺かな?」とあたりを付けて投げているような。

ぼくは仙台に住んでいましたが、ただ近くに住んで、ちょこっとお手伝いに行くだけでは、「被災者」と呼ばれる方々のコミュニティに入り込むことは結局できませんでした。「こんな支援がきっと必要とされてるんだろう」という推測の範囲でしか行動できていませんでした。

そうやって過ごすうちに入社3年目を迎え、「仮にこのまま希望する社会貢献事業部に行けたとしても、うすっぺらい支援しかできないかもしれない」「5年10年待っていたとしても、ほんとうに自分のやりたいことができる場所にいけるとは限らない」と考えて退職を決意。

その3年間では得ることのできなかった、「手触り感」のある社会貢献ができる選択肢を考えることに。

そこで、現地の人々と限りなく近い目線で生活を送り、いっしょに問題解決に当たれる「青年海外協力隊のコミュニティ開発」が自分にとっていちばんのキャリアだと思い、参加を決心しました。

青年海外協力隊でできたこと

東北で震災復興支援のお手伝いをしていたときに、「力になりたい」と思っていた対象は「東北」とか「仙台」とか「石巻」というレベルで、とてもふわっとしていました。

でも、協力隊の2年間の任期を終えようとしているいまは、「○○さんや○○くん、そしてその未来の子どもたちの力になりたい」と、この村の人たちひとりひとりの顔と名前を思い浮かべて、より明確に考えることができます

ルワンダ・ムシャの近所の人たちと

そういった意味では、「社会貢献の現場で手触り感のある支援に携わる」というぼくの目的は達成することができました

青年海外協力隊でできなかったこと

でも、逆に「協力隊ではできないこと、難しいこと」にも気づきました。それは「大規模なインパクトのある支援」。

協力隊として活動していると、同僚から「JICAからお金を引っ張ってくることはできないのか?」と聞かれたり、住民から「公共の水道を増やしてくれ」と頼まれたりすることがよくあります。インフラ整備などの多額のお金や人手を必要とするものですね。

もちろん本当に必要な経費であれば、JICAに申請して多少のまとまった資源を用意することもできます。

でも、そういった大規模な支援なら、政府や国際機関、商社などの大きな組織のほうがよっぽど向いてるんですよね。わざわざ協力隊がちまちまとやらなくても。

だからぼくは協力隊は「無力感」との闘いだと思っています。

ぼくらにできることは、目の前のだれかひとりと向き合って、その人の意識や行動を変えること。その小さな変化が積み重なって大きな変革を生むと信じています。

とは言え、その変化はあまりにも小さく、「自分がやっていることに意味はあるんだろうか?」と自ら疑問に思ってしまうこともしばしば

だから結局、どんな現場に行ったとしても一長一短なんですよね。大事なのは、自分がどこに価値を置くか。

さまざまな層のプレイヤーがいて、得意なこと・ニガテなことがあり、それぞれに「役割分担」があります。

だから、協力隊は協力隊にしかできない形の支援に徹するべきだと思うんです。それが「草の根の支援」。

政府や国際機関・大企業は、どーんとまとまった金額のお金を出したり、国レベルでインフラを整えるような大型の支援を得意としていますが、住民の暮らしや価値観を踏まえてひとりひとりの意識や行動を変えていくような取組みは地域に根ざした支援者でなければ困難です。

そして「大規模な支援」と「草の根の支援」、どちらが大事という話ではなく、どちらも大切なんです。

井戸がなくて困ってる地域には、まず井戸をつくるお金が必要(大規模な支援)。でも作りっぱなしではだめで、それを現地の人たちだけで維持管理していけるようサポートしてする人も必要(草の根の支援)。

あなたはどのレベルで国際協力に携わっていきたいですか?

川上か川下か

ここまで、青年海外協力隊は目的ではなく単なる手段であり、その目的を達成する手段はたくさんあるという話をしてきました。

だから、「国際協力を仕事にしたい」という方がその手段を選ぶうえで、「川上と川下、どのレベルで国際協力に携わりたいか」を考えることがキャリアを決めるためのひとつの指針となるはずです。

支援対象とのかかわりは薄く「手触り感」を得づらいものの、大規模なインパクトを与えやすい川上かーー

大規模なインパクトは与えられず「無力感」を抱きやすいものの、支援対象と密接にかかわることができる川下かーー

どのレベルで働きたいかを考えよう

あなたにとって、国際協力に携わるうえで大切なことはなんですか?

協力隊になってよかった?

「青年海外協力隊になりたい」という方をぼくは応援します。

でもその前に、「ほんとうに自分のやりたいことはなにか?」とあらためて考えてもらえればと思います。国際協力がしたいのなら、協力隊以外にも手段はたくさんあるからです。

そのうえで、協力隊について疑問に思うことや聞いてみたいことがあれば、メッセージを送ってください。ぼくに答えられる範囲で力になれればと思います。

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最後に、個人的な感想。会社を辞めてまで参加した協力隊ですが、協力隊になって、ルワンダに来れて、心から良かったと思っています

社会起業家にふんわりと憧れていただけの2年前から、「手触り感」のある支援を通じて具体的に「やりたいこと」や「それを実現するための手段」を語れるようになりました。

青年海外協力隊は草の根の支援を通じて自己成長をうながす、という点で非常に優れた人材育成制度でもあると思っています。

ひとりでも多くの方が、協力隊を通じて「なりたい自分」に近づけますように。

↑活動でなやんでいるときに、JICAスタッフさんからおすすめされて読んだ本。「協力隊だからこそできること」を見つめ直すことができました。

当記事への反応

元ウズベキスタン隊員のすぎっしゅさん。

別人になったのなら協力隊に参加して大成功ですね!

フリーランスとして国際協力にたずさわっている原貫太さん↓

協力隊は国際協力ではなく、国際交流である」とは耳の痛いことばですね。これについても思うところがあるので、またあらためて書きたいと思います。

【追記】

「国際協力と国際交流」について書きました。

青年海外協力隊は「国際協力」ではなく「国際交流」?

タケダゴロク
 
協力隊は、使い方によってはとてもいい制度です。

 

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