スポンサーリンク
青年海外協力隊としてルワンダに来て、三ヶ月が経ちました。
そろそろルワンダ人の良いところも悪いところも見えてきたんですが、ぼくがいちばんイラッとするのは「距離感の近さ」、いわゆる「パーソナルスペース」を侵されることです。
歩行中、バスの中、メッセージのやりとりなどなど、身体的にも精神的にも「うわ…近いな…」と不快に感じることがよくあります。まれに「ラッキー♪」と思うこともなくはないですが、大抵は不快です。
今回はその意識の違いが生まれる理由について、言語、性別、環境の違いなどから考えてみました。
この意識を変えることが出来れば、ルワンダ生活をもっと楽しむことが出来そうです。
パーソナルスペースとは
パーソナルスペース(英:personal-space)とは、他人に近付かれると不快に感じる空間のことで、パーソナルエリアとも呼ばれる。一般に女性よりも男性の方がこの空間は広いとされているが、社会文化や民族、個人の性格やその相手によっても差がある。
女性よりも男性の方がパーソナルスペースが広い、つまり男性の方が近い距離に不快感を感じやすいということですね。
確かに女性のほうが身体的接触に寛容なイメージがあります。
「手おっきいんだね!」と言って勝手に手を合わせて比べてきたり、「血管すごいね!」と言って腕を撫でられたり、隣に座っていて太ももにそっと手を置かれたり――。
少女漫画を読んでキュンキュンしているぼくみたいなピュア男子は勘違いしてしまうのでどうぞご自由にそういうもてあそび方は止めてください。
話を戻します。
男女で意識の差がある――ということは「女性が多い国の方がパーソナルスペースは狭いんじゃないか」と思い、国別男女比ランキングを調べてみました。
ぼくが日々距離感の近さに不快感を覚えているルワンダはと言うと…
性別差
案の定、ルワンダは世界一女性が多い国になってました(2012年)。女性の出生数を1としたときの男性の数。
1位は中国で、女性1人に対して男性1.16人。男性の方がだいぶ多いですね。
日本は60位。女性1人に対して男性1.056人。若干男性が多い。
ルワンダは一番下の193位。女性1人に対して男性1.02人。ほぼ変わりません。
引用元:世界・女性出生1人に対する男性出生数(出生男女比)ランキング – 世界ランキング
パーソナルスペースが狭い女性が多いということは、それだけ他国に比べてルワンダでは距離感を取るという意識が希薄だと言えますね。
そういえば、ルワンダでは恋愛関係にない男性同士でも手を繋ぎます。これも日本とは異なる文化ですね。
ルワンダ人(男)と手を繋いで歩いてみた。異文化適応について考える。
恋愛への応用
急に話は変わりますが、パーソナルスペースの考え方は恋愛に応用することも可能です。
女性の方が男性よりもパーソナルスペースが狭いという話をしましたが、背後に対する警戒心が強いというのが両性に共通する特徴です。
よく女性で「男性に後ろからギュッとされるのが好きだ」と言う方がいますが、これは攻撃を防げない背後を守られている安心感から包容力を感じるため。
狙い目は彼女がキッチンで料理をしている時です。こういうの。
引用元:LINE公式スタンプ
振り返りざまに包丁で刺されないように気をつけましょう。
もう少し詳しい内容は知りたい方は下記を参照のこと。
参考:パーソナルスペースを知れば、気になる相手をドキドキさせられる! – 心と体を大切にする
言語
続いては、言語とパーソナルスペースの関係性。「接触行動の異文化比較 : 心理学的研究の展望」という論文(呉, 映妍、2009)にこんな記述がありました。
バーンランドは研究の中で両文化のプロフィールと非言語的行為の結果と付き合わせ、両者が一致していると考えた。つまり、アメリカ人は、身体的活発さ、豊かな顔の表情、ジェスチャーのはなばなしさなどで有名で、「ボディ・イングリッ シュ」に頼ることが大であるのに対し、日本人は顔の表情のなさ、身体的な親密 さは避けられ、ことばを補強するための身振りでさえも控えめだと述べた。
アメリカ人と比べて、日本人は非言語的行為(ボディータッチなどの物理的コミュニケーション)に頼らないんですね。
先日、ルワンダ語を勉強する過程で、ペラペラになるのにどの程度の語彙数が必要なのか調べてみました(過去記事)。下記は各国の言語を80-90%理解するのに必要な語彙数。
・日本語:10000語
・ドイツ語/ロシア語/韓国語/中国語:5000語
・英語:3000語
・フランス語/タイ語:2000語
・スペイン語/イタリア語/ポルトガル語:1500~1800語引用元:しらべぇ
日本語はペラペラになるまでにかなりのボキャブラリを必要とします。
ということは、逆に言えば語彙が多く言語による表現の幅が非常に広いため、ボディー・ランゲージなど非言語的行為への依存度が低くなります。
それに伴い、身体的接触も少なくなるため、パーソナルスペースも広くなっているのではないでしょうか。あくまで推測に過ぎませんが。
上記の表を見ると、必要な語彙が少ないスペイン、イタリア、ポルトガルあたりはパーソナルスペースなんかお構いなしにベタベタ触って来そうなイメージがあるので、語彙の豊かさとパーソナルスペースの関係性もあながち間違ってはいないと思います。
環境
性別差、言語と見てきましたが、環境に依るところも大きいのではないかと思います。つまり、密度の高い環境で育ったらそれだけ人との接触に抵抗が無くなるんじゃないかと。
ということで、国別の世帯当たり人員数を調べてみました。
ルワンダは1世帯当たり4.5人。
一方、日本は2.5人。データが出ている中で最下位はドイツの2.1人。
アフリカというと広大な土地に暮らしているイメージがありますが、人口密度ではルワンダは日本を上回っており(※)、小さな家に大家族が身を寄せあって暮らしている家庭も沢山あります。
※ルワンダ380人/平方km、日本336人/平方km (国の人口密度順リスト -Wikipedia)
これもあくまで推測ですが、ルワンダなど世帯当たり人員の多い国ほど身体的接触に抵抗が少なく(パーソナルスペースが狭い)、日本やドイツなど世帯当たり人員が少ないほど身体的接触に抵抗が大きい(パーソナルスペースが広い)と言えるのではないでしょうか。
「自分」は身体だけじゃない
ルワンダで特に他人と密着するのがバスの中です。地方では特に、定員を無視してぎゅうぎゅう詰めにすることも多く、日本では3人で座るようなシートに5人で座ることもあります。
他人と密着するだけでも嫌なんですが、もっと嫌なのはこちらが見ているスマホや本を無遠慮に覗き込んでくることです。
もちろん日本でも、買い物中にすれ違うおばちゃんがジロジロと自分の買い物カゴを見てきたりするのが嫌だなと思ったことはあります。ただルワンダ人はあからさまに覗き込んでくるんです。
どうせ見られても日本語は分からないのでプライバシーを侵害されるわけではないんですが、心の底から不快です。しょっちゅう舌打ちしてます。
なんでこんなに嫌なんだろうなと思ったんですが、パーソナルスペースの研究者がこんなことを語っていました。
「自分」というのは、身体だけじゃなくて、身体も含めたもっと大きな広がりなんですね。
例えば、自分が着ている洋服は自分自身ではないですが、他人に触られると不快です。あるいは、自分の持ち物に他人が勝手に触ったりすると、嫌な感じがする。車で走っている時近くに寄ってこられたり、駐車中に誰かに車を触られただけでも不快でしょう?自分の家の玄関に知らない人がいてドアを触ったりしていたら、すごーく嫌な気持ちですよ(笑)。
つまり、これらはある意味で「自分」なんです。
自分の持ち物ももはや自分の一部。だからスマホや本の中身を覗き込まれるのは、大げさに言えば全裸の自分をジロジロ見られているようなものなんですね。そりゃ不快だ。
ではパーソナルスペースを保つのが困難な中で、ストレスを溜めずに生活するにはどうすればいいのか?この先生はこう述べています。
元来、日本人というのは小さい空間をうまく生かすことが得意な民族ではないかと思うんです。盆栽とか、幕の内弁当等がいい例です。狭い長屋住まいでも、みんな仲良くうまくやっていた。空間が狭くても、意識の広がりによって、快適に生きていくことができるのではないでしょうか。
「意識の広がり」が大事だと。それが出来れば苦労はしないんですけどね…。
些細なことでイライラしてエネルギーを消耗していたら勿体無いので、ルワンダ人のようにおおらかな心を持てるように深呼吸して、のびのび暮らしていきましょう。
タケダノリヒロ(@NoReHero)
スポンサーリンク