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アフリカのルワンダでスタディツアーや情報発信をしています、タケダノリヒロ(@NoReHero)です。
みなさんは「寄付」という言葉を聞いて、どんな印象をもちますか?おそらくほとんどの人が「困っている人を助けるためにする良いこと」というイメージをお持ちではないでしょうか。
でも、実は寄付って100%良いことばかりではないんです。ぼくはそれをここルワンダで実感したのですが、日本にいるとそのデメリットはわかりにくいと思います。
そこでこの記事では、寄付によるデメリットや気をつけるべきことを、現地での体験を交えてお伝えします。
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もくじ
高校生の学費を支援してみた
ぼくが最近寄付についてあらためて考えさせられたのは、実際に寄付する場面があったから。知人Aさんの娘がこの10月で高校生になり、その学費を支援してあげたのです。
ことの顛末はこう。
- Aさんはぼくの友人(日本人)宅の警備員だった ※ルワンダでは警備員を雇うのはよくあること
- その友人宅にはよく泊まったり遊びに行ったりしていたので、ぼくとAさんも知り合った
- コロナ禍になり友人は日本に帰国、Aさんは無職に
- その後もAさんは何度か我が家を訪ねてきて、「仕事がなくて困っている。ノリが引っ越すようなことがあれば警備員として働かせてほしい」と言われていた ※ルワンダでは相手の家を訪ねることが友好の証
- とは言え決してガツガツはしてないし、その都度お土産に家のニワトリが産んだ卵を持ってきてくれたりしていたので嫌ではなかった
- 我が家も引っ越すことはなく、Aさんは無職のままだった
- 10月になりAさんの長女が高校に進学。しかし入学時に授業料だけでなく、制服やその他の学用品にもお金がかかるため支払いの目処が立たず、このままでは長女が進学を諦めざるを得ないと相談された
- 何度かSMSでやり取りした後、Aさんが我が家に来て、家族写真や購入の必要な物品のリストを見せてくれた。必要な金額は約1万6千円(おそらくルワンダ人の平均月収3ヶ月分程度)
- それでも直接的に「お金をくれ」とは言われなかったが、そのAさんの様子を見ていたらなんとかしてあげたいと思ったので、最終的にはこちらから学費を支援することを申し出た
寄付のデメリット
Aさんのことは好きだったので、わりと最初のほうから「支援してもいいかなあ」とは思っていました。それでもこれまでの経験上、お金が絡むと面倒なことになることも多いんですよね。
ぼくの考える、途上国での寄付に起こり得るデメリットは以下の3つ。
【途上国への寄付で起こり得るデメリット】
・「支援慣れ」で自立を阻害するかも
・しつこく頼られて、自分が嫌な想いをするかも
・相手の周囲に不和を引き起こすかも
支援慣れで自立を阻害
まずは「支援慣れ」を起こす可能性があるということ。「こんなに簡単にお金をもらえるなら、自分でがんばって働く必要なんてないや」と相手に思わせてしまって、長い目で見ると悪影響を及ぼしてしまう可能性があるんですね。
一生面倒を見る覚悟があるのであれば問題ないと思いますが、ぼくは相手の自立を阻害して、他人への依存度を高めてしまうような「支援」はむしろ「悪」だと思っています。
しつこく頼られる
さきほどの悪影響は相手に及ぶものですが、いちど支援したことでしつこく頼られてしまい、自分が嫌な思いをしてしまう可能性もあります。
実はこれ、実際に経験してるから支援するには覚悟がいると思っているんですが、以前別の高校生の学費を出してあげたら、なにかにつけて「お金をくれ」とねだられるようになってしまったんです。彼にも事情があったのかもしれませんが、当時のぼくにはそれに上手く対応する力がありませんでした。
他人のためにお金を出してあげる義務なんてそもそもないのですが、困ってるっぽい人のお願いを無下にすると自分が悪いことをしてるような気がして後味が悪いんですよね。。だから金額が少ないからといって、軽い気持ちでお金をあげることには注意が必要です。
相手の周囲への不和
最後に相手の人間関係への悪影響。だれかが支援を受けたことを知ると、まわりの人が「お前だけずるい!」と言ってその人を責めてしまうかもしれません。相手の問題を解決したいから支援してるのに、新たな問題を生み出してしまうのは本意ではないですよね。
自分と相手だけでなく、そのまわりにも影響を及ぼしてしまう可能性を覚えておく必要があるかなあと思います。
寄付で気をつけること
これらを踏まえて、ぼくも今回Aさんを支援するにあたり、以下の3つのことに気をつけました。
【Aさんへの支援で気をつけたこと】
・何にいくら必要か具体的に知る
・自分も簡単にお金を出せるわけじゃない、と知ってもらう
・どこまで支援するか明確にする
何にいくら必要か知る
まず、「何にいくらお金が必要か知る」こと。今回はAさんが学校からもらったプリントを見せてくれたので、お金の使いみちがはっきりとわかり、同時に安心することもできました。
悲しいかな、ウソをついてお金をもらおうとする人がいるのがこの世の中。相手がどんなに良い人でも、信頼している人でも、数字の確認はしっかりおこなうべきです。そうすれば相手を疑うことなく、気持ちよくお金を出してあげられますからね。
お金を出すことは簡単ではないと伝える
それから、自分の痛みも分かってもらうこと。「いいよいいよ、数万円くらい」とポケットからさっと出せるお金持ちならいざしらず、「これは決して簡単に出せるお金ではなく、自分にとっても大切なものだけど、どうしてもあなたの力になりたいから渡すね」と伝えるのは大事なことだと思います。
まあそこまで言うと恩着せがましいと思われるかもしれませんし、決してカッコよくはないですけどね。。
でも大事なお金を「あー、ありがとー」と軽く受け取られたらショックなので。すくなくともぼくはそんな風に受け取られるくらいなら、自分や家族のためにそのお金を使いたいと思います。だから自分の気持も正直に伝えます。
どこまで支援するか明確にする
最後に支援の範囲を明確にすること。さきほども書いたように、いちど支援するとしつこく頼られて嫌になってしまう可能性もあります。それを防ぐために、お金を出す範囲を決めて合意しておくことが大事だと思います。
今回ぼくもAさんに「あくまで今回は特別で、継続的に支援するわけではないよ」ということをお伝えしました。でも次回以降はどうするんだろうと思ったのですが、今回の学費は1学期分だけど、来学期以降は学用品を買わなくて済むので2000円程度になるとのことでした。
それなら自力でなんとかなりそうなので、Aさんも今回限りの支援ということで了承してくれました(まあぼくのつたないルワンダ語での会話だったので、どこまで伝わってるかわかりませんが、ちゃんと理解し合えてると信じたい……!)
第三者の必要性
一見すごく良いことに見える寄付にも、これだけデメリットや気をつけるべきことがあるんですよね。
「寄付なんかに頼らず、自分でがんばって働いて稼げ!甘えるな!自己責任だ!」と言う人もいるかもしれません。たしかに、日本にいて、心身ともに健康な人だったら、仕事やバイトはいくらでもあるので生計を立てることはそこまで難しくないでしょう。
でも、このルワンダにおいては、仕事を見つけることすら困難なのです。働きたくても働けない。そんな人に「がんばって働け」と言うのはあまりにも酷だし、見当違いなのではないでしょうか。
ルワンダをはじめとした途上国では、いまだに「負のループ」が存在しています。
仕事がないから稼げない
→稼げないから子どもに教育を受けさせられない
→子どもは教育を受けられなかったから稼げる仕事につけない
→その子どももまた満足に教育を受けられない
この負のループを断ち切るのは、本人たちの自助努力だけではかなり難しいんです。だからこそほんのすこし余裕をもっている、ぼくらのように恵まれた環境で生まれ育った第三者が介入して、そのループを断ち切ることが大事なんだと思います。
今回学費を支援したことで高校に通えるようになったAさんの長女。彼女の未来の可能性が、すこしでも広がっていくことを願っています。
【後日談】寄付ってやっぱり良いことばかりじゃない
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