『人新世の「資本論」』要約〜エコバッグやマイボトルはむしろ有害!?〜

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アフリカのルワンダでスタディツアーや情報発信を仕事にしています、タケダノリヒロ(@NoReHero)です。

突然ですが、まずこれを読んでください。

温暖化対策として、あなたは、なにかしているだろうか。レジ袋削減のために、エコバッグを買った? ペットボトル入り飲料を買わないようにマイボトルを持ち歩いている? 車をハイブリッドカーにした?  はっきり言おう。その善意だけなら無意味に終わる。それどころか、その善意は有害でさえある

どうでしょう?ドキッとしませんでしたか?ぼく自身もこれを読んだときに「えっそうなの!?エコバッグやマイボトルを使うだけじゃダメなの!?」と思いました。

これは『人新世の「資本論」』(※ひとしんせい の しほんろん)という本に出てくる一節です。

※「人新世(ひとしんせい)」=人類が地球の生態系や気候に大きな影響を及ぼすようになった時代のこと。

さきほどの「その善意は有害でさえある」という言葉の後には、こう続きます。

なぜだろうか。温暖化対策をしていると思い込むことで、真に必要とされているもっと大胆なアクションを起こさなくなってしまうからだ。

そう、決してエコバッグやマイボトルといった行動自体がダメなわけじゃなくて、それで安心してもっと大事なアクションを取らずに終わってしまうことが問題なんです。じゃあその「真に必要とされているもっと大胆なアクション」って何?

それは、「資本主義」という形式を抜け出して、平等で持続可能な脱成長型経済に移行することなんです。……と言われても何のこっちゃって感じですよね。この記事では本書を要約して、気候変動がどのくらいヤバいのか、その問題の元凶は何なのか、その問題を解決するためにはどうしたらいいのかをまとめたいと思います。

これを読めば、「環境問題なんてどうせ未来の話でしょ?自分が生きている間は関係ないよ」なんて幻想が吹き飛びます。ぜひ最後までお付き合いください。

日本への影響と責任

まず気候危機の重大さについて考えてみましょう。地球の気温上昇を食い止めるため、世界共通の目標が立てられています。その目標とは、2100年までの気温上昇を産業革命以前と比較して、2℃未満(できれば1.5℃)に抑え込むこと(2016年発効のパリ協定)。

「たったの2℃」でも地球にとっては大きな変化 Photo by Jonathan Kemper on Unsplash

え、たったの2℃でいいの?」と思いますよね。2℃くらいの温度変化なら日常的に体感しているので、そんなに大したことがないように思えます。でも、実はたったの2℃上がるだけで、この世界は大変なことになってしまうんです。ことの重大さをイメージしやすくするために、まず日本に起きることを例にあげてみましょう。

「たったの2℃」の上昇でも、サンゴは死滅し、漁業にも大きな被害が出ます。夏の熱波で、農作物の収穫にも大きな影響が。さらに毎夏、各地に傷痕を残す台風の巨大化が一層進むと考えられているんです。2018年の西日本豪雨が甚大な被害をもたらしたことはみなさんの記憶にも新しいと思います。この規模の豪雨がすでに毎年起きるようになっていて、その確率はさらに高まっていくんです。

では、もし気温が4℃上昇したら?被害は壊滅的なものになり、東京の江東区、墨田区、江戸川区のような地域では、高潮によって多くの場所が冠水するようになるといわれています。世界規模で見れば、億単位の人々が現在の居住地から移住せざるを得なくなります。そして、人類が必要とする食料供給は不可能に。まさに「世界の終わり」ですよね。

もし現在の二酸化炭素排出ペースが続けば、2030年には気温上昇1.5℃のラインを超えてしまい、2100年には4℃以上の気温上昇が起こると考えられています

この気候変動、実はぼくら日本人にも大きな責任があるんです。

日本は二酸化炭素排出量5位。。

なんと日本は二酸化炭素排出量が世界で5番目!そして、日本を含めた排出量上位の5ヶ国だけで、世界全体の60%近くの二酸化炭素を排出しています。こりゃ責任重大ですよね。

最大の被害者、最大の加害者

気候変動で特に影響を受けるのは「グローバルサウス」と呼ばれる地域と、そこに住む人々です。以前使われていた「南北問題」(北側に多い先進国と南側に多い発展途上国の格差の問題)と同じような意味ですが、近年では新興国の台頭や、先進国への移民増大によって必ずしも地理的な関係で語れなくなってきているのでこう呼ばれています。

グローバルサウスが受ける被害は、ぼくら先進国の人間にとってはなかなかイメージしづらいですよね。でも、実はぼくらが便利で豊かな生活を楽しんでいるせいで、その「ツケ」が彼らにまわってきてしまっているんです。

※ここであげた例は過去記事『小泉環境相の「生態系の破壊」発言がまともだと思う理由』でも取り上げたものです。すでに読んでいただいた方は、次の章へ!

東南アジアのパーム油

たとえば、東南アジアにおけるパーム油の例。

Photo by Marija Zaric on Unsplash

パーム油は安くて酸化しにくいため、加工食品やお菓子、ファストフードによく利用されています、日本人の食生活の影の主役とも言うべき存在。生産国はインドネシアやマレーシアです。パーム油の原料となるアブラヤシは、近年栽培面積が増え、熱帯雨林の乱開発による森林破壊が急速に進んでいます。

パーム油の生産の影響はこれだけではありません。熱帯雨林を農園として切り開いた結果、土壌侵食が起き、肥料・農薬が河川に流出して、川魚が減少しているんです。地域の人々は川魚からタンパク質をとっていましたが、それができなくなったので以前よりお金が必要に。その結果、野生動物、特にオランウータンやトラなど絶滅危惧種の違法取引に手を染めるようになってしまったんです。

ぼくら先進国の人間が安い値段でおいしいものを食べたり、便利な暮らしを楽しんだりするために、実は途上国の資源がうばわれ、環境へのダメージが押し付けられているんですね。だから、なにかを買うにしてもそれが環境に配慮された商品かどうかをもっとひとりひとりが考えるべきだし、大量消費、大量廃棄をしないような社会にしていかないといけないなと感じます。

プラネタリー・バウンダリー

「地球の限りある資源を大切に!」という言葉はよく耳にしますよね(サービスエリアのトイレに貼ってありそう)。でもその「限界」ってどこまでなんでしょうか?それを分かりやすく示してくれるのが「プラネタリー・バウンダリー」という考え方。

地球には、自然本来の回復力が備わっています。でも一定以上の負荷がかかると、その回復力は失われ、北極・南極の氷が溶けたり、野生動物が大量に絶滅してしまったり、急激で後戻りのできない変化を引き起こす可能性があるんです。これは人間にとっても危険なものなので、人類が安定して生きていけるように9項目において決められたギリギリのポイントが「プラネタリー・バウンダリー」なんですね。

▼プラネタリー・バウンダリーの九項目

  • 気候変動
  • 生物多様性の損失
  • 窒素・リン循環
  • 土地利用の変化
  • 海洋酸性化
  • 淡水消費量の増大
  • オゾン層の破壊
  • 大気エアロゾルの負荷
  • 化学物質による汚染からなる

「環境問題」とひと口に言ってもいろんな分野があるので、こうやって項目が決められていると分かりやすいですね。ところが、悲しいことに気候変動や生物多様性などの4項目は、人類の経済活動によって、すでにプラネタリー・バウンダリーを超えてしまっているそうです。。

富裕層トップ10%が二酸化炭素の半分排出

ではそんな気候危機をもたらしている「戦犯」は誰なのでしょうか?それは先進国の富裕層です。世界の富裕層トップ10%が二酸化炭素の半分を排出しているという、驚くべきデータも。この10%の人たちが排出量を平均的なヨーロッパ人の排出レベルに減らすだけでも、1/3程度の二酸化炭素排出量を減らせるといいます。この層がすこしがんばるだけでも大きな成果が期待できるんですね。

ただしこれは他人事ではありません。先進国の人間であるぼくらは、そのほとんどがトップ20%に入っているんです日本なら大勢がトップ10%に入っていると考えられますし、これを読んでいるあなたもそうかもしれませんね。つまり、気候危機はまったく他人事ではなく、ぼくら自身が当事者として考えていかなきゃいけないことなんです。

気候変動の元凶は資本主義

そもそもぼくらは何故、二酸化炭素をたくさん排出するような暮らしをするようになってしまったのでしょうか?その元凶は「資本主義」です。この社会が資本主義というシステムにもとづいているからこそ、ぼくたちは地球へのダメージを止めることができないんです

「そんなこと言ったって、資本主義っていうシステム自体を変えることなんてできないんじゃね?」と思うかもしれませんが、著者はちゃんと答えを用意してくれていますし、なんだかそれも不可能ではなく思えてくるので、ぜひ最後まで読んでくださいね。

資本主義=善、社会主義=悪?

ここでいったん、補足を。「資本主義が環境問題の元凶だってことは、社会主義を目指せってこと?なんか危ないニオイしない?」と思いますよね。ぼくも思いました。でも決してそういうわけではなくて、あくまで「経済成長を減速させて、気候変動対策をもっと重視しましょう」ということがポイントだと思います(著者の意向と違ってたらごめんなさい)。

とは言え、ぼくらは「資本主義=善、社会主義=悪」だと決めつけすぎなのではないでしょうか。実際、最近ではアメリカのZ世代の半分以上が資本主義よりも社会主義に肯定的な見方を抱くようになっています

これはびっくりですよね。ぼくだって世界や自分自身が社会主義になるのは嫌ですが、現在の資本主義の形を変えないかぎりは格差や環境破壊の進行は止められないと考える人が増えてきているのは事実です。その理由をこれからくわしく解説します。

生産性の罠

資本主義のもらたらす害は「生産性の罠」という言葉であらわすことができます。資本主義ではコストカットのために、労働生産性を上げようとします。労働生産性が上がれば、より少ない人数で今までと同じ量の生産物を作ることができる。これは一見良いことのように思えますよね?でもその場合、経済規模が同じままなら、失業者が生まれてしまうのです。でも、資本主義のもとでは、失業者たちは生活していくことができません。失業率が高いと政治家の支持率が下がってしまうので、雇用を守るために絶えず経済を拡張していくよう圧力がかかるのです。こうして、生産性を上げると、経済規模を拡大せざるを得なくなる。これが生産性の罠です。

つまり資本主義を続ける以上は経済成長をし続けなければいけないし、そうなると地球への負荷はますます強くなっていくということですね。

グリーン・ニューディール

そこでいま注目されているのが「グリーン・ニューディール」という政策です。

再生可能エネルギーや電気自動車など、環境に良いものを普及させるために国のお金を使います。それによって安定した高賃金の雇用を作り出し、需要を増やし、景気を刺激することを目指すのです。すると好景気がさらなる投資を生み、持続可能な緑の経済への移行を加速させる、というもの。これが実現すれば、環境にも良いし、雇用が生まれて景気も良くなるなんて最高ですよね。実際、この政策を掲げている政治家も多くいます(バイデン大統領の就任式で、分厚い手袋を付け「郵便局に来たグランパ」のようだとSNSでバズっていたバーニー・サンダースさんなど)。

でも、この夢のような政策も、結局は問題を転嫁しているだけだと言われています。たとえば、電気自動車やスマホやノートパソコンに使われているリチウムイオン電池の例。

※ここであげた例は過去記事『小泉環境相の「生態系の破壊」発言がまともだと思う理由』でも取り上げたものです。すでに読んでいただいた方は、次の章へ!

Photo by David Ballew on Unsplash

このリチウム、どうやって採取されるのでしょうか?リチウムの多くはアンデス山脈(南アメリカの西側に沿って走る世界最長の山脈のひとつ)沿いの地域に埋まっています。リチウムは長い時間をかけて地下水として濃縮されていき、塩湖の地下からリチウムを含んだ鹹水(※「かんすい」、塩分を含む水のこと)をくみ上げて、その水を蒸発させることで採取されるんです。

つまり、リチウムを採掘するということは地下水を吸い上げるのと同じなのですが、問題なのはその量。一社だけでも、1秒あたり1700ℓ もの地下水をくみ上げているそうです。もともと乾燥した地帯でこれほど大量の地下水をくみ上げると、地域の生態系に大きな影響を与えてしまいます。

例えば、鹹水(かんすい)に生息しているエビを餌にしているアンデス・フラミンゴの個体数が減少したり、急激な地下水のくみ上げにより、住民たちが使える淡水の量が減少したり。

つまり、環境にやさしい電気自動車が増えることは一見良いことのように思えますが、実はその生産が生態系の破壊につながっていると言えるんです。そう考えたらグリーン・ニューディールも全然夢の政策ではないですよね。

ドーナツ経済

経済成長と環境保護、その両立を目指す政策がグリーン・ニューディールですが、このバランスを保つうえで「こんなに分かりやすい概念があるのか!」とぼくが感動したのが「ドーナツ経済」の図です。

ドーナツ経済

水や所得、教育などの基本的な「社会的な土台」が欠けていれば、人間はけっして繁栄することはできません。社会的な土台が欠けることは、自由に良く生きるための「潜在能力」を実現する条件が欠けていることを意味します。人々が本来もっている能力を十分に開花できないならば、「公正な」社会はけっして実現されないのです。これが今、途上国の人々が置かれている状態であり、ぼくも現地に住んでいて、土台がないために可能性を発揮できていない人たちを見て実感しているところ。  

しかし、だからといって自らの潜在能力を発揮するために、それぞれが好き勝手に振る舞っていいわけではありません。将来世代の繁栄のためには、持続可能性が不可欠。そして、持続可能性のためには、現在の世代は一定の限界内で生活しなくてはなりません。それが前述のプラネタリー・バウンダリーと呼ばれる「環境的な上限」であり、ドーナツの外縁です。

つまり、この上限と下限のあいだに、できるだけ多くの人々が入るグローバルな経済システムを設計できれば、持続可能で公正な社会を実現することができるのです!

資本主義に変わるシステム「脱成長コミュニズム」

そこで著者が解決策として示しているのが「脱成長コミュニズム」です。これはもともと晩年のマルクスが思い描いていた理想の社会の姿なんだとか。

コモン(社会的に人々に共有され、管理されるべき富)

脱成長コミュニズムのカギとなるのは、「コモン」という概念。社会的に人々に共有され、管理されるべき富のことです。水や電力、住居、医療、教育といったものを公共財として、自分たちで民主主義的に管理することを目指しています。しかし、これらのコモンが資本主義のもとでは、ときに商品として価格をつけられているために問題が起きているのです。

たとえば、人間が生きていくうえで「水」はかならず必要ですよね。水に価格をつけることは、水という限りある資源を大切に扱うための方法だという考え方もあります。無料だったら、みんなが無駄遣いをしてしまいそうですからね。

しかし、水に価格をつけると、水道料金の支払いができない貧困世帯への給水は止められてしまいます。運営する企業は、水の供給量を意図的に減らすことで、価格をつり上げ、より大きな利益をあげようとするのです。水質の劣化を気にせず、人件費や管理・維持費を削減するかもしれません。つまり、水というコモンが商品になることで、誰もがアクセスできるものではなくなったり、持続可能性や安全性が損なわれてしまう可能性があるんですね。

たしかにいまルワンダで暮らしていて、水や電気など、先進国ではあって当たり前のものでさえ満足に使えていない家庭がたくさんあります。これらが無料で誰でもアクセスできるようになれば良いのに、と思ったことは一度や二度ではありません。そういう意味で、水や電気などの公共財を、政府や企業に任せるのではなく自分たちで民主主義的に管理するという考え方は理想的に思えますね。

5本の柱

著者の提唱する脱成長コミュニズムには5本の柱があります。

  1. 使用価値経済への転換
  2. 労働時間の短縮
  3. 画一的な分業の廃止
  4. 生産過程の民主化
  5. エッセンシャル・ワークの重視

ここでは特に①の「使用価値」について説明します。

使用価値と価値

著者はマルクスの「使用価値」と「価値」という用語の違いを説明しています。「使用価値」とは、空気や水などがもつ、人々の欲求を満たす性質のこと。これは資本主義の成立前からあったものです。それに対して「価値」とは市場経済においてしか存在しない、お金に換算できる値打ちのこと。

本来であれば「使用価値(有用性)」のほうが大切なはずなのに、資本主義では「価値」ばかりが求められてしまう。そのせいで、「一度売れてしまえば、その商品がすぐに捨てられてもいい」というように、商品の質や環境負荷がないがしろにされてしまうのです。だから単純に財産を増やすことを目指すのではなく、人々の基本的なニーズを満たすことを重視する「脱成長」、そして消費主義からの脱却を著者は訴えているのです。

その他は、②「労働時間の短縮」は労働時間を削減して、生活の質を上げること(マーケティング、広告、パッケージングなど欲を不必要にあおることは禁止。必要のないものを作るのをやめて、社会全体の労働時間をへらす)。

③「画一的な分業の廃止」は、画一的な労働をもたらす分業をやめて、労働の創造性を回復させること(単調な作業ではなく、多種多様な労働に従事できるようにすることで、楽しく働き、能力を発揮させる)。

④「生産過程の民主化」は生産のプロセスの民主化を進めて、経済を減速させること(知識や情報をコモンとして共有することで、競争がなくなり私企業によるイノベーションは遅くなる。市場の強制から解放されて、各人の能力が発揮される可能性も)。

⑤「エッセンシャル・ワークの重視」は、機械化が困難な労働集約型のケア労働(介護福祉士、保育士、教師など)を重視すること。

これらが脱成長コミュニズムの柱だとされています。

理想を実現するフィアレス・シティ

使用価値を重視して、労働時間を短縮して、画一的な分業を廃止しつつ、生産過程を民主化して、エッセンシャル・ワークを重視するなんて無理じゃない?いまの日本社会と比べたら、そんなの絵空事だよと思いますよね。ぼくもそう思いました。でも、世界には、すでにこういった社会を実現しつつある都市も出てきているんです。希望!

そのような国家が押しつける新自由主義的な政策に反旗を翻す革新的な地方自治体は、「フィアレス・シティ」と呼ばれています。なかでも、最初に「フィアレス・シティ」の旗を立てたのはスペインのバルセロナ。その革新的な姿勢は2020年1月に発表されたバルセロナの「気候非常事態宣言」にも表れています。

  • 2050年までの脱炭素化(二酸化炭素排出量ゼロ) という数値目標をしっかりと掲げている
  • 宣言は、自治体職員の作文でもなく、シンクタンクによる提案書でもなく、市民の力の結集
  • 行動計画には、包括的でかつ具体的な項目が240以上も並ぶ。二酸化炭素排出量削減のために、都市公共空間の緑化、電力や食の地産地消、公共交通機関の拡充、自動車や飛行機・船舶の制限、エネルギー貧困の解消、ごみの削減・リサイクルなど

この画期的な宣言も一夜でできたものではなく、10年に及ぶ粘り強い市民の取組みがありました。

  • スペインはリーマン・ショック以降、失業率が25%に達し、貧困が広がり、EUの押し付ける緊縮政策によって社会保障や公共サービスが縮小
  • バルセロナでは観光業が過剰発展し、市民向けの賃貸住宅を観光客用の「民泊」に切り替えるオーナーが続出。家賃は急騰し、住まいを失う市民も
  • 物価も上昇
  • このひどい生活状況に耐えかねた若者が中心となって、2011年に運動開始
  • 運動は形を変えながら継続し、バルサローナ・アン・クムー(英語名バルセロナ・イン・コモン)という地域密着型の市民プラットフォーム政党誕生
  • 2015年の選挙で党の中心人物が市長に就任。彼女は反貧困運動、特に住民の権利のための活動を続けてきた社会活動家
  • 市議会は住民の声をすくい上げ、まとめ上げるプラットフォームとして機能するようになった

先述の「気候非常事態宣言」は市民の力でつくられたと書きましたが、そのプロセスには自然エネルギーの公営企業や住宅公団など「コモン」の領域で仕事をする人々も携わっており、多様な市民参加型のプロジェクトとなったのです。これまでにもバルセロナでは、水、電力、住宅などをめぐって、さまざまな社会運動やプロジェクトが展開されてきました。でも、水道の公営化要求など、ひとつの課題ごとのバラバラな取り組みだった運動を、互いに結びつけたのが気候変動問題だったのです。さまざまな問題につながる気候変動対策の視点を入れ込むことで、個別の問題を超えた横の連帯が生まれるんですね。

3.5%で社会が変わる

どうでしょう、すでに成功をおさめつつある街の事例を聞くと、なんだか机上の空論とは思えなくなってきますよね。さらに、ハーヴァード大学の政治学者エリカ・チェノウェスらの研究によると、「3.5%」の人々が非暴力的な方法で、本気で立ち上がると、社会が大きく変わると言われています。

フィリピンのマルコス独裁を打倒した「ピープルパワー革命」(1986年)、大統領のエドアルド・シェワルナゼを辞任に追い込んだグルジアの「バラ革命」(2003年) は、「3.5%」の非暴力的な市民不服従がもたらした社会変革の、ほんの一例です。

どんな運動も最初は少人数。環境活動家グレタ・トゥーンベリさんの学校ストライキなど、たったひとりでした。しかし数人で始まった抗議活動は数万〜数万人規模のデモになり、SNSでその動画は数十万〜数百万回拡散されます。そうなると選挙では数百万の票になるので、政治家もその声を無視できなくなり、変革につながっていくのです。

「3.5%」という数字を知ると、なんだか出来る気がしてきませんか?

グローバルサウスの住民として

最後に個人的な感想を。この本を読むまでは、正直「環境破壊なんて自分にはあまり関係のないことだし、問題が起きるとしてもどうせ遠い未来のことでしょ?」と思っていました。でもそれは間違いでした。ぼくらはだれもが環境問題の当事者だし、危機はもうすでに始まっています。

そして、アフリカのルワンダというグローバルサウスに住んでいるからこそ、この地域の人々への負荷は他人事ではないと痛感させられました。本書では「グローバルサウスから学ぶべき」ということも書かれているのですが、まさにそう感じる場面も多々あります。

たとえば、本書ではコモンの話から派生して、資本家や株主なしに、労働者たちが共同出資して、生産手段を共同所有し、共同管理する組織である「ワーカーズ・コープ(労働者協同組合)」が紹介されていますが、ルワンダでも「コーペラティブ」と呼ばれる協同組合が農家、タクシードライバー、女性グループなどさまざまな分野で組織され、機能しています。

自給自足的な暮らしをしている人も多いので、大量生産・大量消費・過剰な広告やパッケージングともかけ離れていて健全に感じます。もちろんまだまだ「社会的な土台」が満たされていない部分もかなり多いので、そこは改善しなければいけないのですが、それと同時にルワンダから学べることをグローバルノースに対して発信していきたいと思います。

長くなりましたが、最後までお付き合いくださりありがとうございました。ここまで読んでくださったあなたは、まちがいなく「3.5%」の仲間ですね。本書で提唱されている「脱成長コミュニズム」が正解かどうかはわかりませんが、気候危機に対してぼくらにもできること、いっしょに考えて行動していきましょう。

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