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「現地の人たちは、お金がなくても幸せそうに暮らしていた」
東南アジアやアフリカなど、途上国を訪れた人たちからよく聞く言葉です。
特に海外ボランティアやスタディツアーに参加した大学生がよくブログやSNSに書いていることなので、「みんな同じことしか言わないな」と揶揄するおじさんたちの姿もよく見受けられます。
ぼくは3年ほどアフリカのルワンダで暮らしていますが、冒頭の”よくある”途上国観も、本人が現場に足を運んで体感できたことなら価値のある気づきだと思います。
ただし、考えなければいけないのは、「幸せそう」ならそれでいいのか、ということです。
先日、落合陽一さんの『2030年の世界地図帳 あたらしい経済とSDGs、未来への展望』を読んでいたときに、ノーベル賞を受賞した経済学者アマルティア・センの「ケイパビリティ(潜在性)・アプローチ」という考え方を知りました。
「このアプローチにおいて貧困とは、単に金銭を多く持たないことではありません。未来に開かれた可能性(潜在性)を持たないことが、ここで定義する「貧困」となります。たとえ現在の収入が少なくても、給与の上昇が見込めたり、転職してよりよい条件で働ける可能性がある場合は貧困とはいえないし、逆に、改善の見込みのない閉ざされた環境での生活を強いられている場合は貧困とされる考え方です。センは評価に当たり、「国の経済成長はもちろん重要であるが、財や収入の多さで社会の豊かさ、発展度は測定できないし、国民が幸福であるとも限らない」と考え、選択の自由や機会を重視しました。
「貧困」とは、未来に開かれた可能性をもたないこと。
恥ずかしながらアマルティア・センという名前はなんとなく聞いたことがあるものの、この概念を知らなかったぼくは「おれと同じこと考えてるじゃん!」と思いました(偉そう)。
ぼくもルワンダの農村部で暮らしはじめたときは、多くの人たちと同じように「思ったよりもみんな幸せそうに生きている」と感じていたんです。
ただし、村で過ごすうちに、実は単純労働にすらなかなかありつけないとか、実は外の世界を知る機会が非常に少ないとか、実は学校を中退してしまう子が多いとか、ぱっと見では分からないような問題がたくさんあることを知ったんです。
そして、それらはいずれも将来の可能性にフタをしてしまうものばかりでした。
特にルワンダでは小学校を中退してしまう生徒が多いことが個人的には大きな問題だと思っていて、就学率は95%なのに、修了率を見ると 70%にも満たないんです。
参考:数字で見るルワンダの改善点と問題点〜Vision2020は達成できる?〜 | Rwanda note
つまり、3割以上の子どもたちが小学校を卒業できていないということ。そのため満足な初等教育を受けられず、社会に出てからもその能力を発揮することができなくなってしまうのです。
「人間開発指数」という、ケイパビリティ・アプローチを発展させたものがあります。これは「今日生まれた子供が完全な教育と健康を達成した場合と比べた生産性」を表していますが、1に近づくほど高いこの数値がルワンダはたったの0.37しかありません(日本は0.84)。
小学校の中退問題はこの原因のひとつにすぎないかもしれませんが、ルワンダの人間開発指数が低いことは事実です。
実際に現地で暮らしていると、2桁の暗算が出来ず電卓を使う人や、地図が読めないタクシードライバーによく出くわします。
暗算ができなくても地図が読めなくても、幸せに生きていくことはもちろん可能です。
でもそういった基本的な能力を養うことができなかったために、さまざまな「可能性」を逃してしまっているんです。
仮に読み書きが満足にできない人がいたとして、どこかの会社に雇ってもらうことも独立することもできず、まわりに助けてくれるような人もおらず、低賃金のバイトを続けざるを得ないとなったら、その状況から抜け出すのが難しいのは容易に想像できると思います。
だからこそ、選択の自由がないこと、より良い環境で生きる機会を得られないことが「貧困」だとするアマルティア・センの主張は非常に納得できますよね。
世界的に見れば、死に直結するような貧困はどんどん減ってきています。
しかし、それで良しというわけではなく、これからはみんなが選択の自由をもち、自分の人生に納得感をもって生きていけるような社会をつくっていく必要があるのではないでしょうか。
途上国に限らずひとりひとりが自分らしく可能性を発揮できる世の中を、少しずつつくっていきたいですね。
その手段のひとつとして開催しているのが、「START」というスタディツアーです。
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「アフリカに行ってみたいけどひとりでは不安」「先進国や東南アジアには行ったことがあるけど、アフリカはまだ」という方、まずはスタディツアーから一歩踏み出してみませんか?
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