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[:ja]青年海外協力隊のタケダノリヒロ(@NoReHero)です。
アフリカ・ルワンダで住民の生活向上をお手伝いする「コミュニティ開発」という仕事に携わっています。
自分の任務は「水・衛生環境の改善」なんですが、ぼくは水道屋さんでもなんでもなく前職は食品メーカーの営業でした。
なので水道を修理できるわけでもプロフェッショナルな衛生の授業を行えるわけでもありません。その代わりにできるのは「仕組みづくり」。
住民だけで給水施設を円滑に維持管理できるような体制を整えたり、学校が自主的に衛生啓発活動を継続できるような組織をつくったり。
これまで1年ちょっとやってきて、少しずつその「芽」のようなものが出てきたなと実感しています。
コミュニティ開発をやるうえで大事なのが、いかに人を巻き込むか。
この「巻き込み力」に関しては、営業のしごともコミュニティ開発も通じるところがあるなあと思ってます。
なのでこの記事では<営業3年→アフリカ地域開発ボランティア1年>という経験から感じた、人を巻き込みながら仕組みをつくるためのコツをまとめてみました。
「もっとこうすればよかったな」とか「これからはこれをもっと意識していこう」という反省を込めた未来の自分向けのノートですが、きっと他の分野でも応用できるはずなので誰かのお役に立てれば幸いです。
もくじ
ワクワクさせる
まず大事なのが、相手をワクワクさせること。
人を「その気」にさせるには、外発的動機づけよりも内発的動機づけのほうが大事だって心理学でよく言われますよね。
要するにお金などの外的な要因でモチベーションを上げるのではなく、その人自身が「これをやりたい!」と思うように仕向けること。
そのためには、「あなたのアクションによって、こんなに良い影響があなたやあなたのまわりの人に起きますよ」ということを心から理解(ハラオチ)してもらう必要があります。
たとえば自分が衛生啓発活動に学生を巻き込むときは、「啓発活動を学生のみんながすることによって、この地域の大人たちが『子どもたちが頑張ってるならおれたちも頑張らなきゃ』って刺激されて、地域全体の衛生意識が向上するんだよ。そしたら病気になる人が減るかもねー」と言って、その行動によってどんな良いことが起こるかをイメージしてもらってます。
社会的な意義があることであれば、なおさらモチベーションは上がりますよね。
キーマンとのコンタクトポイントの明確化
つぎに「キーマンとのコンタクトポイントの明確化」。
要は「どうやったら確実に連絡が取れるのか」「どうやったら確実に会えるのか」を把握しておくということ。
ルワンダでの活動でよくあるのが、「仕事相手と会えない/連絡がつかないせいで、仕事が先に進まない」という問題です。
これを回避するために必要な行動が以下の3つ。
・初対面の際に連絡先を必ずゲットする
・相手にとってどの連絡手段がベストなのかを把握する
・相手に必ず会える時間や場所を知る
連絡先をゲット
当たり前ですが、まずは相手の連絡先を教えてもらうこと。
アフリカのこんな田舎の地域開発現場では名刺交換なんかしないので、あえて「連絡先教えて」と言わないとせっかく会えた人とのつながりが途絶えてしまいます。
どの連絡手段がベスト?
連絡先を聞くのと合わせて確認したいのが、「どの連絡手段がベストか?」ということ。
日本で営業していたとき、取引先との連絡は電話とメールで十分でした。
でもルワンダではほとんどメールを使いません。
ぼくが配属されている「セクター」(日本で言う村役場)でもメールよりWhats appをみんな使ってます。
電話に関しては、番号が変わってて繋がらないこともしばしば。
逆に向こうから新しい番号でかけてきてるのに名乗らずにふつうに会話してくるので、「ハロー、元気だよー、ところでお前だれだ」ってよくなります。
人によって電話が使えなかったり、ネットに繋げなくてWhats appやMessengerが使えなかったりするので、その人にとってどの連絡手段がベストなのかを最初に確認しておきましょう。
そういえば日本でも「電話は無理やり時間を奪われるからメールがいい」って人いますもんね。
必ず会える時間や場所を知る
それから「必ず会える時間や場所を知る(つくる)」ということ。
仮に連絡が取れなくても、「その場所に、その時間に行けば会える」というコンタクトポイントがあれば便利ですよね。
ぼくはいま小学校で衛生クラブ(※)の組織化に取り組んでいます。
※生徒が自主的に衛生啓発活動を行う校内のグループ。日本で言う委員会のようなもので、ルワンダの多くの学校で設置されているが機能していないところが多い。
衛生クラブが形骸化している学校も多いんですが、ぼくは先生と話し合って「毎週金曜の午後3時をクラブ活動の時間にしよう」</b>と決めたため継続的な取り組みにすることができました。
逆にこういう定期的な機会をつくれていない学校では、なかなかプロジェクトが進まなくて苦労しています。
忙しくて連絡がつかない得意先に対する営業でも、その人が「火曜日の19時には必ず行きつけのお店にいる」っていう情報を知っていれば直接会って話したりできますよね。
次の一歩を常に考えておく
「キーマンとなかなか会えない」という話をしてきましたが、逆に「村をぶらぶらしてたら会いたかった人とばったり会えた」っていうこともルワンダではよくあります。
ただし、せっかく会えたのにいきなりすぎて用件を伝え忘れ、挨拶だけで終わってしまったなんてことも。
なので千載一遇のチャンスを逃さずに、その機会を活かしましょう。
いわゆる「エレベーターピッチ」ですね。たまたま居合わせたエレベーターで相手の興味関心を引いたり、売り込んだりするあれです。
そのわずかな時間で相手にお願いごとや交渉をするためには、「次は誰に何を頼まなければいけないか」と次の一歩を考えておく必要があります。
せっかく重要人物に会えたのに、大事なことを伝えそびれないように日頃からやるべきことを整理しておきましょう。
不要な前置きはしない
滅多にないキーマンとの貴重な時間をモノにするもうひとつのコツは、「不要な前置きをしない」こと。
計画中のイベントについてルワンダ人の上司に承認をもらおうと思ってたんですが、その上司が忙しくてなかなか捕まりませんでした。
ようやく数日ぶりに会えたとき、
「ちょっと相談があるんですが…」
「いまは時間がないから午後か明日の朝じゃダメかな?」
「1分で終わるんですけど、いま話せませんか?」
「じゃあ、また後で戻って来るから!」
と先延ばしになってしまいました。
結局、数時間後に話が出来たので結果オーライだったんですが、そのちょっとした相談ならわざわざ改めて時間を取ってもらわなくてもさっきの時間があればできたんですよね。
だから、忙しい相手と話すときは「ちょっと相談があるんですが…」っていう前置きはいらないんです(おはようとか最低限の挨拶はいるけど)。
「〇月〇日にイベントをやりたいんですけどいいですか?」っていきなり本題を切り出すべき。
それで思い出したのが『世界の果てまでイッテQ!』の「出川イングリッシュ」。
道行く人に声をかけるとき、英語に堪能な河北麻友子さんは「ちょっといいですか?お時間いただけますか?」って声をかけても全然立ち止まってもらえませんでしたが、お世辞にも英語が上手いとは言えない出川さんはいきなり「○○って知ってますか?」と本題を切り出し、会話を成立させていました。
そしてこの名言。
「質問いいですか?」とか要らないの。アンケートも「あ、すいませんね。すいません時間ありますか?」なんて言ったら「ああ、ごめんなさいごめんなさい」ってなるじゃん。
「ちょっとお聞きしたいんですが、あなたの好きな食べものは何ですか?カモン!ハイ!言って言って!ハイ!言って言って!」って言うと「あぁ…リンゴです」って言うでしょ。絶対それ人間の心理だから。
引用:世界の果てまでイッテQ!
出川さんを見習いましょう。
キーマン以外とも仲良くする
ものごとを進めるうえで「誰がキーマンなのか」を把握するのも大事ですが、一見重要でなさそうな人が実は重要だったなんてことも。
破天荒な新任教師の登校初日、花壇の手入れをしているみすぼらしいおじさんにそっけない態度を取ったら、じつはその人が校長先生だった、ってシーンがドラマでよくありますよね(そして大体その役は平泉成)。
ここまで大げさじゃなくても、現実の世界でもこれに似たケースは多いです。
営業時代、おもな得意先はスーパーマーケットでした。
スーパーではバイヤーやその店舗の店長が立場的には偉いんですが、実質的な売場の権力を持ってるのはパートのおばちゃんだったりするんですよね。
その人と仲良くなることで自社商品の売場面積を広げてもらえたり、その人から本部に自分のいい噂を広めてもらうことで商談が楽になったり。
なので、当たり前のことですが、分け隔てなく誰とでも仲良くしてたら良いことあるよ、ってことですね。
組織図、関係性を知る
とは言え、順序は守りましょう。
相手の会社で課長が窓口になっているのに、そこを飛び越えてたまたま仲良くなった部長に商談をしてしまったら課長の立場がなくなってしまいますよね。
「アフリカではそんなこと気にしなくていいだろう」と思いがちですが、ルワンダも意外と縦社会です。序列意識が強く、相手によって態度がかなり変わります。
プライドが高い人も多いので、その人のメンツを損なったり立場をまずくするようなことは避けましょう。
日本だろうとアフリカだろうと、筋を通しつつ関係者に気を配って根回しを忘れないってことですね。
自分でやらずに人にやらせる
仕組みをつくるうえで大切なのが、自分でなんでもやろうとしないということ。
もう人にやらせちゃえばいいんです。
と言うと、無責任なように聞こえますが、自分がいなければまわらない仕組みは仕組みとは言えません。
前述の、小学校の衛生クラブ組織化もそうです。
1年目はぼくが自分で衛生に関する授業やワークショップをやって生徒を指導していましたが、そのせいで学校側は「ノリに任せとけばいいや」と思ってサポートが薄くなってしまいました。
このままではぼくが帰国したらまたクラブが形骸化してしまいます。
なので、2年目の今年からは担当の先生を中心にクラブを運営するようにしました。
ふたりでクラブの目的と意義を確認して、運営の手助けとなるガイドラインを渡して、先生と生徒だけで継続的に啓発活動をやってもらう。
それが定着すれば、もうこの学校にはボランティアは要りません。
まだ始まったばかりですが、自分がいなくてもまわる仕組みをつくるために、人にやらせてみるというのも「巻き込み力」のひとつだと思います。
まずは1つの成功事例から
営業時代の上司に口ぐせのように言われていたのが「まずは1店舗、小さくてもいいから成功事例をつくれ」ということ。
というのも、その上司がちっちゃなローカルスーパー1店舗に対して始めた企画が大成功して、全社を挙げて取組むような一大企画になって全国のスーパーで水平展開され、結果として社長賞を取るまでになったという成功体験があったからなんです。
0から1を生むよりも、1を100にするほうが簡単です。そして0から100は生まれません。
いま取り組んでいる衛生啓発活動についても、まずは自分が住んでいる地域や学校でモデルとなる成功事例をつくって、それをほかの地域やルワンダ全土に広めていけたらと思っています。
まずは1つの成功事例から。
まとめ
以上、まとめます!
「人を巻き込みながら仕組みをつくるコツ」は
- ワクワクさせる
- キーマンとのコンタクトポイントの明確化
- 次の一歩を常に考えておく
- 不要な前置きは捨てる
- キーマン以外とも仲良くする
- 組織図、関係性を知る
- 自分でなんでもやろうとしない
- まずは1つの成功事例から
の8つ!
仕組みづくりは面白いです。
これからもルワンダでいろいろ実験しながらがんばります!
タケダノリヒロ(@NoReHero)
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国際協力の現場で「頼れる人」になってはいけない[:]
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