青年海外協力隊で得たものと今後の活かし方~手触り感・社会貢献・社会起業~

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タケダノリヒロ( @NoReHero

青年海外協力隊(JICAボランティア)としての2年間の任期を終え、アフリカのルワンダから帰国してはや一ヶ月。

JICAの帰国後研修を受けてきました。内容は協力隊での体験の棚卸し。グループディスカッションなどを通じて、「協力隊で得た成果とその活かし方」を整理することができました。

似たようなことはこれまでにもちょこちょこ書いていましたが、良い機会なので改めてまとめておきます。

私が協力隊で得たものは以下の3つ。

①求めていた「手触り感」が何か分かった
②自分にとっての「社会貢献」とは何かが分かった
③どんな「社会起業」をしたいかが分かった

そしてこれらを活かす方法がルワンダでのスタディツアー運営と、日本の中小企業支援を通じた地域づくりだと考えられるようになりました。

「手触り感」とは「たったひとりの誰かのために働くこと」

私が青年海外協力隊に参加した理由のひとつは、社会貢献に対する「手触り感」を得ること。

きっかけは就職活動に遡ります。ちょうど就活中に東日本大震災が起こり、自分のなかで「社会貢献」への意識が高まりました。

途上国支援などのCSR活動にも力を入れている大手菓子メーカーへの就職が決まり、震災復興に関わりたいと思い東北配属を希望。仙台で営業として3年間働きました。

菓子メーカー時代に出演した仙台のローカル番組『あらあらかしこ』

その中で震災復興支援に絡めた取り組みをしたいと考えて実施した企画が「お菓子の家づくり教室」です。

震災でストレスを抱えた子どもたちに少しでも喜んでもらおうと思って企画したのですが、実際にやってみると想像とはまったく違う反応が返ってきました。

もちろん楽しんでくれる子どもの方が多かったのですが、中には「早く帰りたい」と泣き出してしまう子もいたのです。これはショックでした。

結局「復興支援」とか聞こえの良いことを言ってるけど、自己満足に過ぎないじゃないか。

社会貢献は「喜んでもらえるだろう」なんて浅はかな気持ちでやるもんじゃないんだ。

そう思ったときに、社会貢献に対してもっと「手触り感」のある経験が必要だと痛感しました。

それを得るためには、社会問題があふれる途上国で、現地の人たちと一緒に問題解決に当たる経験が必要なんじゃないか。そう考えて青年海外協力隊に応募しました。

このときはまだよく分かっていなかった、自分にとっての「社会貢献に対する手触り感」が何かという問題。でも、2年間のルワンダでの活動を通してそれがよく分かりました。

私にとってそれは「顔の見えるたったひとりの誰かのために働く」ということでした。

東北で震災復興に携わっていたときは、私が「役立ちたい!」と思っていた対象が「東北」というあいまいな場所になっていました。そして国際協力に関しても貢献したいと考えていた対象も、「途上国」や「世界の子どもたち」といったふわっとしたものばかり。

それがいまでは「ルワンダのムシャセクターの○○さん」と顔と名前を思い浮かべて考えることができるようになりました。

そこまで具体的に考えられないと、誰かに喜んでもらえるような仕事をするのは難しいのだと思います。仮にそれがたったひとりに向けた取組みであっても、ひとりが喜んでくれたのなら同じ方法で幸せになれる人は他にもたくさんいるはず。

東北にいたときには得られなかった「手触り感」を得ることができ、さらにその正体が「たったひとりの誰かのために働くこと」であると分かったこと、それをこれからの働き方の軸にしていきたいと思えたことが、2年間の協力隊生活で得た収穫のひとつです。

「社会貢献」とは「スタートラインに立たせること」

協力隊における2つ目の成果が、自分にとっての「社会貢献」とは何かを理解することができたことです。それは「可能性にフタをされている誰かをスタートラインに立たせること」。

ルワンダから日本に帰国する1週間ほど前、突然家に知らないおじさんが訪ねてきました。彼の名前はパスカルさん。石けんづくりを仕事にしているものの、材料を買うお金がなくなってしまったので資金を援助してほしいということでした。

そこで彼に初期費用を渡して材料を買ってもらい、商品を作って市場で売り、無事にビジネスがまわるようになりました。

石けんを完成させたパスカルさんと。

「これで一安心」と思ったのも束の間、パスカルさんからまたお金を要求されてしまったのです。「いまの状態ではゆっくりとしか成長していけないけど、もう少しまとまったお金があればもっと早く改善することができるから」と。

迷いました。せっかく仲良くなれたのにここで申し出を断ったら関係が崩れてしまうかもしれないし、できるだけ早くパスカルさんに楽な暮らしをさせてあげたい。

でも、結局彼にはもうお金を出さないことにしました。なぜなら、彼はもう自力で走っていけるレベルに達したから。以前は自力ではどうにもならなかったものの、今では私のサポートがなくてもなんとかやっていけるはず。

そこで、「自分にとっての社会貢献とは、スタートラインに立たせることなんだ」と実感することができました。言い換えると「マイナスの状態にあった人をゼロやプラスの状態に持っていき、自助努力ができるようにすること」かもしれません。

ちなみに、お金を出さないと伝えたところ、パスカルさんは理解してくれました。きちんと説明すれば分かってくれるし、関係が壊れることもないんですね。

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やりたい社会起業は「スタディツアー」

3つ目の収穫は、具体的なビジョンもなく単なる憧れだった「社会起業」という選択肢が実現可能なものになったこと。

大学時代から、病児保育のNPOフローレンスや、e-ラーニングで途上国に教育革命をもたらすNPO e-Educationの取組みがカッコイイなあ、ソーシャルビジネスを仕事にしたいなあと思ってはいたものの、「じゃあ自分はどんな問題を解決するのか」「何ができるのか」という一番肝心なところはわからないままでした。

それが「ルワンダで日本人向けのスタディツアーを運営したい」というはっきりとした目標に変わったのです。

きっかけは、私が住んでいたムシャセクターまで遊びに来てくれた多くの日本人のみなさん。ブログを通じて私のことを知り、ただの旅行では知ることのできない農村部の様子を知りたいということで、ルワンダ人の家庭を紹介してホームステイをしてもらったり、一緒に学校に行って生徒たちと交流してもらったりしました。

ホストファミリーと日本から来た大学生たち

何よりうれしかったのが、たった数泊の滞在でもホストファミリーと涙を流して別れを惜しむくらい、彼らが現地の方々と関係を深めてくれたことでした。その様子を見て、「本当にいいところですね」ということばをもらって、自分もこんな交流をつくることを仕事にできたら楽しいだろうなと思えるようになったのです。

だから、これまでボランティアとして受け入れていたホームステイや村の案内をきちんとプログラムにして、「ルワンダの歴史と文化とビジネスを学べる、農村ホームステイとボランティア体験を含むスタディツアー」を運営したいと思っています。

この取組みは「アフリカに行ってみたいけどちょっと怖い」「国際協力に携わってみたいけれど何から始めていいか分からない」という方々にその入口を提供するものですが、日本人だけでなくルワンダの方々にも与えられるものはあると思っています。

ルワンダの特に農村部では、テレビやインターネットを日常的に使える人は限られており、「外の世界」と接する機会は非常に稀です。私が赴任して間もない頃は「イタリア人ですか?」と聞かれたほど(絶対違う)。

それだけ触れる情報が少ないと、「自分の世界」も狭くなってしまいます。人は未知のものごとを知ることで興味や好奇心を育てていけるもの。

交流したことのない外国人が村にやって来る。そして、その出会いを通じて知らない言葉や文化を知る。それがなにかの「きっかけ」になるかもしれない。

出会うはずのなかった人たちが出会うことで生まれる「何か」を、私は期待しています。

協力隊経験をどう活かすか

前述のように、私は協力隊の2年間でたったひとりの誰かのために働くことが幸せな働き方であること、社会貢献とはスタートラインに立たせること、スタディツアー運営が社会起業の第一歩であることに気づくことができました。

これらの経験を、今後にどう活かすのか。目下の目標は、スタディツアーを通じてひとりでも多くの日本人に社会貢献や海外への入口に立ってもらい、ひとりでも多くのルワンダ人に世界を知るきっかけを提供することです。

さらにその先のことを考えると、日本国内でもこの経験を活かすことができるのではないかと考えています。

東北での3年間のボランティアと、ルワンダでの2年間の協力隊を経て帰ってきた地元の熊本は「被災地」になっていました。実家は倒壊こそなかったものの、庭の小屋は傾き、家族も相当怖い思いをしたようです。家がひしめき合うように立っていた近所にも、空き地が増えました。

空き地が目立つ近所

トータル5年間も社会貢献やボランティアに関わってきたのに、自分の家族や地元には何もできない。2年ぶりに帰国して一番感じたことはそんな無力感でした。

だから、ルワンダでいまやりたいことをやり遂げて「自力で価値を生み出す力」をつけたら、地元に貢献できるような仕事をしたいという想いを持ち始めています。

協力隊活動で経験したコミュニティ開発という仕事。そしてこれから運営するスタディツアーで養える、地域の魅力を発信する力。これらの経験を熊本に持ち帰って、「たったひとりの誰か」の役に立てるように中小企業の支援などから地域づくりに携わることができたら自分自身も幸せなのではないかと考えています。

自分にとっての社会貢献とはスタートラインをつくることだと書きましたが、私自身もようやくスタートラインに立とうとしているところです。これからが本番。がんばります。

タケダゴロク
 
我ながらこれからが楽しみ。

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