映画『ホテル・ルワンダ』は嘘だった?主人公モデルがテロリストとして逮捕された理由

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※音声配信アプリstand.fmからの書き起こしです。

どうも!アフリカのルワンダからお送りしています、タケダノリヒロです。

2021年4月8日火曜日、『アフリカから世界を学ぶゴリラジオ』、やっていきましょう!この番組では、あなたの暮らしやお仕事にもつながる、ルワンダの意外な事実や、知ってほしい話題をお届けしています。

【追記】2021/09/21
映画『ホテル・ルワンダ』の主人公が、有罪判決を受けるまでの背景をYouTubeで解説しました(下記動画)。

 

 

今日のテーマ、映画『ホテル・ルワンダ』

今日のトピックは映画『ホテル・ルワンダ』という作品についてです。

ルワンダのことは全然知らなくても、この映画だったら観たことがある、という方も多いかもしれないですね。これは1994年のルワンダ虐殺を描いた作品です。

現地では昨日から虐殺の追悼期間に入りました。1994年の4月7日に大虐殺が発生して、その日から27年が経ったんですね。それで昨日はカガメ大統領が演説をする様子が、テレビや SNS などでライブ中継をされていました。ちょうど虐殺について思いを馳せる時期でもあるので、その様子を描いた『ホテル・ルワンダ』についてご紹介をさせていただきます。

この作品はアカデミー賞にもノミネートされて、名作とされていたんですね。ところがルワンダ国内では、この作品の内容が嘘だったということになっているんですね。それだけではなく、昨年8月には主人公のモデルとなった人物がテロリストとしての容疑をかけられて逮捕されてるんですね。いったいどういうことなのか、解説をさせていただきます。

映画『ホテル・ルワンダ』とは

まずはこの映画『ホテル・ルワンダ』とは、一体どういう作品なんでしょうか。

ルワンダでは、1994年にフツ族からツチ族に対して大量虐殺が発生しました。これによって約100万人の命が奪われたんですね。そしてこの作品の主人公は、有名ホテルのマネージャーであるポール・ルセサバギナさん。この人は実在の人物です。そしてこのホテルも、今でもホテル・ミルコリンズという名前で運営をされています。

そしてこのホテルのマネージャーが、フツ族の攻撃を逃れてきた1200人以上のツチ族の難民をかくまって、命を救ったというお話です。なのでこの作品の中では、ルセサバギナさんはヒーローとして描かれています

ふたりのポールの関係性

ここまでが映画のざっくりした説明ですね。そして現実世界では、ルセサバギナさんがどういう動きをしていたのかということを、これから説明していきます。まず1994年の虐殺が終わった後、彼は身の危険を感じてベルギーに亡命をしました。そこでこの作品を作った映画監督と出会うんですね。

そして2004年に映画が公開されました。この映画がヒットしたことによって、彼は有名人になったんですね。それだけではなく、2005年にはアメリカで大統領自由勲章というものをもらいます。これはアメリカでは相当栄誉のある賞らしくて、当時のブッシュ大統領から表彰されている写真も残っています。

そしてそこから、彼は世界各地で平和に関する講演会などを行うようになるんですね。また映画のモデルになったっていうところから、ハリウッドスター、例えばジョージ・クルーニーとか有名な俳優さんと一緒に、平和を訴える活動なども行なっていました。

しかし雲行きが怪しくなってくるのが、2006年からですね。ここで”An Ordinary Man”(普通の男、邦題『ホテル・ルワンダの男』)というタイトルの本を出版します。

その中で現在のルワンダの大統領である、ポール・カガメ大統領を批判しました。それによってルワンダとの関係性が悪化したんですね。ルワンダ側もニュータイムズという国営新聞のようなものがあるんですが、その新聞の中でルセサバギナさんに対して批判する記事を公開しました。それ以降ルワンダ国内では、「この映画の内容は嘘だ」つまり「ルセサバギナさんはヒーローなんかではない」という認識が広まっていたんですね。

ルワンダ人「彼を許せない」

僕も最初に映画を見たときは、まさかそんな話があるとは思っていませんでした。2016年に青年海外協力隊としてルワンダに来て、その年の虐殺の祈念式典に、ちょうど5年前に参加した時に、はじめて映画が嘘だと言われているということを知りました。

その式典で、近所の20代のお兄ちゃんと会ってちょっと話してたんですね。「僕がルワンダのことを初めて知ったのは、映画の『ホテル・ルワンダ』を見た時だったんだよね」っていう話をしたら、「その映画は嘘だよ」ということを教えられました。そして彼は、主人公のモデルになっているポール・ルセサバギナの事を許せない、と言っていたんですね。なんでかと言うと「彼はホテルにツチ族の人たちをかくまって、たくさんの人の命を助けたことになってるけど、実際は彼らを置いて逃げたから、その人たちも殺されてしまったんだ」っていう風に彼は言っていました。

その時に、国内ではこの映画が嘘だという風に捉えられているということを初めて知って驚きました。この映画を見たことある方の多くが、感銘を受けたんじゃないかと思います。僕も衝撃でした。こんなにひどいことがアフリカのルワンダっていう国で起きてたんだ、っていうことを知ったので、それぐらいこの映画に心を動かされた人ってたくさんいると思うんです。

でも現地では、それが嘘だったということになっているんですね。そして去年の8月末に、ルセサバギナさんが逮捕されることになりました。何故逮捕されたのかと言うと、テロ、放火、誘拐、殺人などの容疑で捕まったんですね。去年からずっと裁判にかけられてるんですけど、まだはっきりとした結論は出ていないという状況になっています。

この容疑がかけられたそもそものきっかけが、2018年の6月と12月に起こったテロ事件です。ルワンダの地方で民間人に対してテロ行為が行われたんですけど、それがルワンダの反政府組織によるものではないかというふうに考えられています。そしてその反政府組織を立ち上げたのが、このルセサバギナさんだということなんですね。

で僕も最初は本当にそうなのかなと思ったんですけど、このルセサバギナさんが野党、別の言い方をすれば「反政府組織」(もはやルワンダ政府にとってはテロ組織)を立ち上げたのは事実なんですね。そしてその組織の中には武装組織があるということも事実として受け止められています。

これに対してルセサバギナさんは、組織の立ち上げにおいて役割を果たしたことは受け入れたんですけど、暴力を促したっていうことは否定をしています。組織の目的も難民の窮状を訴えることだとしてるんです。ただ、「この組織が犯罪を犯したことは否定はしないけれども、私の役割は外交です」という表現をしています。

なので、彼がどこまで関わっていたかというところが焦点になりそうですね。そしてその目的が難民の窮状を訴える事って言っている部分も、ルワンダの闇に関わる部分ではあります。そのルワンダの闇の部分っていうのがどんなことなのかというのは、ごくごく簡単にだけ説明させてもらいます。

ルワンダの闇?

ルワンダの現在の大統領であるポール・カガメさん、そして彼が率いている RPF という政党があるんですけど、彼らは国際的な非難を浴びていることがあるんですね。それが隣国のコンゴ民主共和国などとも関わっていることだったりとか、あとはカガメさんがあまりにも独裁的で、反対派に対して強い弾圧をしているんじゃないかっていう風にも言われていたりします。

なので今回のルセサバギナさんの件に関しても不当逮捕なんじゃないかっていう声が、海外の有名なメディアやハリウッドスターからも多く上がっていて、彼を救いましょうというキャンペーンも今行われていたりするんですね。カガメ大統領や彼が率いている RPF にどんな批判があるかっていうことは、後ほどお知らせするオンラインイベントの中で詳しくお伝えしたいと思います。

まとめ

まとめるとこの『ホテル・ルワンダ』という映画は、虐殺を描いたことによってすごく高い評価を得て、世界的に有名になりました。ただその主人公のモデルになったという人は、現在ルワンダ国内ではテロリストとして認識をされて、実際に彼が立ち上げた政党が事件を起こしたりもしています。

映画の主人公のモデルと、ポール・カガメ大統領が敵対関係にあるという、映画にまつわる人間関係と言うかね、裏の部分を多少わかっていただけたかなと思います。こういった視点を持って、改めてこの映画を見てみると、少し違った見方ができるかもしれないですね。

ちなみに、個人的にはこの映画『ホテル・ルワンダ』もすごくいい作品だと思うんですけど、もう一つ『ルワンダの涙』っていう作品もあります。こちらの方がよりリアルな感じがするかなーと、現地在住者としては思います。というのも、『ホテル・ルワンダ』は撮影地が南アフリカらしいですね。でも『ルワンダの涙』は現地で撮影をしていて、スタッフさんとかエキストラの方にも、現地の方々を多く使っているので、すごくリアリティがあるんですね。

例えばちょっとしたシーンで出てくるお店とか、家の中に置いてあるものを観て「あ、これ見たことあるわ」と感じたり、「このお店、すぐ近くにあるお店の雰囲気とそっくりだな」っていうところが、すごくリアリティがあるので、どっちかと言うと『ルワンダの涙』のほうがおすすめです。

ただし、観た後は「観なきゃ良かった」と思うぐらいショッキングな内容なので、かなり精神的には辛いんですけど、心に余裕がある時に見てもらえるといいかなと思います。ということで、今日は映画『ホテル・ルワンダ』とそれにまつわる出来事について、お話をさせていただきました。

お知らせ

最後にお知らせです。4月10日(土)にオンラインツアーを開催します。HIS旅カレッジさん主催で、私が案内人を務める「大虐殺を乗り越えた国をめぐり考える、ルワンダ ピーススタディツアー」というイベントです。3月にもおこなったのですが、43名に参加いただき、大変好評でした。

ルワンダ虐殺の背景や、虐殺を生き延びた現地の女性へのインタビュー、現在のルワンダの姿などお伝えしていきます。参加費は2000円で、ZOOMを使ってオンラインでの開催となります。リンクを貼っておきますのでご確認ください。画面越しですが、みなさんとお会いできるのを楽しみにしています!

大虐殺を乗り越えた国をめぐり考える、ルワンダ ピーススタディツアー

本日の『アフリカから世界を学ぶゴリラジオ』は以上です。今日の放送を聞いて面白いと思ってもらえたら、ぜひフォロー、いいね、コメントなどお願いします!お便りも募集しているので、レター機能を使ってどしどし送ってください。

ここまでのお相手は、タケダノリヒロでした。じゃあまたねー。

アフリカから社会問題を考えるオンラインイベント「ワールドノオト」

2016年に「ホテル・ルワンダは嘘」と初めて聞いたときのブログ

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