『サピエンス全史』まとめ・要約・あらすじ・感想~空白の地図を描こう~

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【更新 2020/05/18】 タケダノリヒロ( @NoReHero
世界48カ国で200万部以上売れているという大ベストセラー、ユヴァル・ノア・ハラリ(ユバルハラリ)さんの『サピエンス全史』を読みました。

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お世辞抜きに言って、28年間の人生で読んだ本のなかでいちばん面白かったです。

いままで考えたこともなかった世界の成り立ちや、文字やお金や宗教の役割を知り、断片的だった世界史やら科学やら人類学やら経済学やらいろんな知識のつながりが見え、「…そういうことか!」と何度も膝を打ち、天を仰ぎました。

そして最後には、「幸福とはなにか?」「人間とはなにか?」という壮大な問いを投げかけられます。

全サピエンス(つまりみなさん)におすすめです

この記事ではそんな『サピエンス全史』の日本一分かりやすい要約と、個人的に面白いと思った本書に出てくるエピソードを紹介します。

本書を読んで最強の教養を手に入れましょう。

サピエンス全史 要約

『サピエンス全史』は、歴史の道筋を決めた3つの重要な革命を軸に語られます。

その革命とは、7万年前の「認知革命」、1万年前の「農業革命」、500年前の「科学革命」です。


画像出典:本書にもとづいてタケダが作成

第1~4章(認知革命)要約

序盤はサピエンスの誕生から、人類が「虚構」の能力を手に入れる「認知革命」までのお話。

内容をざっくり箇条書きにすると、こんな感じ。

  • 私たちの祖先は、東アフリカの片隅で捕食者をおそれてほそぼそと暮らしていた「取るに足りない動物」だった
  • しかし、その「ホモ・サピエンス(「賢いヒト」の意)」は食物連鎖の頂点に立った
  • それはサピエンスだけが、多数の見知らぬものどうしが協力し、柔軟にものごとに対処する能力(社会性、協調性)を身につけたから
  • それを可能にしたのが「想像力
  • サピエンスだけが、約7万年前の「認知革命(新しい思考と意思疎通の方法の登場)」を経て、「虚構=架空のものごと」について語れるようになった
  • 虚構とは、伝説や神話にとどまらず、企業や法制度、国家や国民、人権や平等、自由までもふくむ


画像出典:本書にもとづいてタケダが作成

人間の言語は「噂話」のために発達しました。社会的な動物であるため、社会的な協力が生存と繁殖のカギとなったんです。


現代でも、噂話は派閥やコミュニティをつくるうえで欠かせません

1対1ではライオンに勝てなくても、人間は多数の他人と言語を通じて協力することができます。

また「Aさんが権力を持ち始めている」「BさんがCさんとデキている」といった噂話を通じて、コミュニティが形成・変化していきました。

この「虚構、架空のものごとについて語る能力」がサピエンスの特徴となり、人間を食物連鎖の頂点まで押し上げたんですね。

第5~13章(農業革命)要約

約1万年前、狩猟採集生活に終止符を打って、農業によって定住する「農業革命」が起こります。

  • 約1万年前農業革命
  • 狩猟採集生活から定住生活
  • 小集団が統合へ
  • その動きを速めたのが、貨幣・帝国・宗教(イデオロギー)という三つの普遍的秩序


画像出典:本書にもとづいてタケダが作成

それまでバラバラだった集団が、徐々にまとまっていきます。

その過程で活躍したのが、経済面では「貨幣」政治面では「帝国」宗教面ではキリスト教・イスラム教・仏教など。

特に貨幣は、「これまで考案されたもののうちで、最も普遍的で、最も効率的な相互信頼の制度」と言われています。

改めて考えてみると、天才的な発明ですよね。

だってお金を使えば、どんなものにでも転換できるし、富を蓄えることもできるし、持ち運びも可能なんですよ。しかも、お金自体には実態がないのに。


転換性、保存性、携帯性に優れた「貨幣」という発明

たとえばリンゴと靴を物々交換しようと思っても、何個ずつ交換すればいいのかも分からないし、リンゴは腐るし、大量に持ち運ぶこともできません。

しかしそこに「貨幣」という仲介が入ることによって、これらの問題をまるっと解決することができてしまいます。お金すごい。

最近では、仮想通貨やそれを応用したサービスもどんどん普及してきているので、「お金とはなにか」という概念もここに来てまた変わっていきそうですね。

第14~18章(科学革命)要約

500年前って自分からすると大昔なのに、ここまで『サピエンス全史』を読み進めてくると「なんだ、超最近じゃん」って思ってしまうから不思議。

つい500年前に、ようやく「科学革命」が起こり、人類が急速に力をつけていきます。

  • 約500年前科学革命
  • サピエンスが空前の力を獲得し始めるきっかけが、自らの無知を認めることだった。以降、貪欲に知識を求めていく。
  • 知識の追求にはお金がかかるため、イデオロギーと政治と経済の力に左右される
  • 科学と帝国主義と資本主義が、過去500年にわたり歴史を動かす最大のエンジンとなった
  • これを推し進めたのはヨーロッパだったが、アジアが技術的に遅れていたわけではなく、西洋のような「探検と征服」の精神構造と、それを支える価値観や神話、司法組織、社会政治体制がなかった

1500年からの500年間で、人口は14倍、生産量は240倍、エネルギー消費量は115倍に。

空前絶後の成長ぶりです。イエェェェ~イ!いーけ!ボコっ!ざ~き!ジャスティス!!

さきほどまでの図と比べて、この500年間はあまりにも短期間にさまざまなことが起こったため、下図では本書で触れられている歴史的なできごとをピックアップして並べています。

45億年前に地球ができて、30億年前に火を使うようになって、長い長い時間をかけて500年前にやっと大陸をまたぐグローバルな時代が来たと思ったら、そこからたったの数百年で月まで行っちゃうんですよ。半端ない進化速度。

この人類の進歩を主導したのは西洋諸国でしたが、アジアの国々が技術的に遅れていたというわけではありません。

アジアでは「探検と征服」という精神構造と、それを支える価値観や社会政治体制が未熟だったというのが著者の主張で面白いところです。

第19~20章(人類の幸福とは)要約

そして話はようやく現代から未来へ。

  • サピエンスは幸福になったのか?
  • サピエンスの未来は、これまでの延長線上にはない
  • サピエンスは自然選択の法則を打ち破り、生物学的に定められた限界を突破し始めている
  • サピエンスはいずれ特異点(シンギュラリティ)に至る
  • テクノロジーや組織の変化だけでなく、人間の意識とアイデンティティの根本的な変化も起きる
  • サピエンスがふたたび唯一の人類種ではなくなる時代の幕開け…?

「生物学的に定められた限界を突破」して、生物工学、サイボーグ工学、非有機的生命工学などの知的設計が発展しています。

遺伝子操作によって誕生した蛍光性の緑色のウサギや、脳とコンピュータを直接結ぶ双方向型のインターフェイス

これらの自然選択の法則を打ち破った研究は「病気を治療し、人命を救うため」とされますが、果たして倫理的に「正しい」のでしょうか?

たしかに、手足がない人でも脳の信号を受信して「意志」で動かせる義手や義足は、たくさんの人を救います。


画像出典:サピエンス全史

これ自体は、間違いなく素晴らしいテクノロジーの利用方法ですよね。

ただ、もっと人体と機械の融合が進んで、思考を他者と共有できるようになったり、永遠に若さを保てるようになってしまったら、それは「人間」と言えるのでしょうか

テクノロジーや組織の変化だけでなく、人間の意識やアイデンティティを根本から揺さぶるような変化がもうすぐそこまで来てるんですね。

そのうえで筆者は、目的も分からぬまま発展を遂げてきた人類に対して「私たちは何を望みたいのか」と問いかけて本論を終えています。

唯一私たちに試みられるのは、科学が進もうとしている方向に影響を与えることだ。私たちが自分の欲望を操作できるようになる日は近いかもしれないので、ひょっとすると、私たちが直面している真の疑問は、「私たちは何になりたいのか?」ではなく、「私たちは何を望みたいのか?」かもしれない。この疑問に思わず頭を抱えない人は、おそらくまだ、それについて十分考えていないのだろう。

サピエンス全史 感想・書評

ここからは、個人的に面白いなと思った『サピエンス全史』に登場するエピソードを3つご紹介。

「狩りから稲作へ」で人類は不幸になった

1万年ほど前、人類は狩猟採集による生活を捨て、小麦や稲を育てる定住生活を始めました(農業革命)。

しかし著者は、農耕民よりも過去の狩猟採集民の方が豊かな暮らしをしており、「農業革命は、史上最大の詐欺だった」と語っています。

言い換えると、ホモ・サピエンスが小麦や稲に家畜化されたんです。ホモ・サピエンスがそれらの植物種を栽培化したのではなく。


人類の家畜化に成功した小麦

それまでただの野草に過ぎなかった小麦は、突然世界中で大事に育てられるようになりました。「小麦は植物のうちでも地球の歴史上で指折りの成功を収めた」んです。

それ以来、人間は畑を荒らす動物から守ったり、水を苦労して運んだり、糞便まで集めて地面を肥やしたりという労働を強いられました。

サピエンスの身体はこのような作業のために進化していなかったために、古代の骨格を調べると椎間板ヘルニアや関節炎などの疾患があったことがわかるそうです。

しかしそこまでしても、飢えや病気のリスクは狩猟採集生活よりも高かったんだとか。

縄文土器 弥生土器 どっちが好き どっちもドキとか言ってる場合じゃねぇ(©レキシ)

では、なぜそんな定住生活からもとの生活に引き返さなかったのか。その理由は2つ。

  1. 社会の変化には何世代もかかり、かつて違う暮らしをしていたことを思い出せる人が誰もいなかったから
  2. 人口が増加して後戻りできなかったから

贅沢の罠の物語には、重要な教訓がある。より楽な生活を求める人類の探求は、途方もない変化の力を解き放ち、その力が、誰も想像したり望んだりしていなかった形で世界を変えた。農業革命を企てた人もいなければ、穀類の栽培に人類が依存することを求めた人もいなかった。数人の腹を満たし、少しばかりの安心を得ることを主眼とする些細な一連の決定が累積効果を発揮し、古代の狩猟採集民は焼けつくような日差しの下で桶に水を入れて運んで日々を過ごす羽目になったのだ。

とは言え、小麦は個々の人々にはなにも提供しなかったものの、サピエンスという種全体には恩恵がありました

単位面積あたりの土地からは以前よりもはるかに多くの食物が得られ、そのおかげで指数関数的に数を増やせたんです。

「男らしさ・女らしさ」も虚構に過ぎない

人間社会が成立する過程では、想像上のヒエラルキー(階層組織、身分制度)が重要な役割を果たしてきました。

上層自由人と一般自由人と奴隷、白人と黒人、貴族と平民、バラモンとシュードラなどなど。

これに関して著者は、生物学的な性別(セックス)と社会的・文化的性別(ジェンダー)の違いにも触れています。

人間にも生物学上の「オス」「メス」という明確な違いがありますが、「男らしさ」や「女らしさ」は人間の想像を反映したもの、つまり「虚構」に過ぎないから意味がないと。

女性の自然な機能は出産することだとか、同性愛は不自然だとか主張しても、ほとんど意味がない。男らしさや女らしさを定義する法律や規範、権利、義務の大半は、生物学的な現実ではなく人間の想像を反映している。

生物学的な区分は客観的であり歴史を通じて不変ですが、社会的・文化的な「男らしさ」「女らしさ」という特性は共同主観的で、たえず変化しているんですね。

こちらは18世紀の「男らしさ」を示す、ルイ14世の肖像画。


画像出典:サピエンス全史

現代の王様がこんな格好してたら「王様やべぇよw」って言われかねないですよね。足のセクシーさ。

でも当時はこれが「男らしさ」の象徴だったんです。

これだけ価値観が変化するということは、現代における「男らしさ」なんて全然本質的ではなく、ぼくらが作り出した神話に過ぎないんですね。

そう考えると性別だけでなく、黒人と白人、バラモンとシュードラといった区分も、生物学的なものなのかそれとも社会的なものなのか、自分のフィルターを疑ってみる必要がありそうです。

空白の地図を描こう

個人的にいちばん面白かったエピソードがこれ。近代社会の発達は、世界地図の発展と照らし合わせればよく分かるというもの。

近代以前、アフロ・ユーラシア文化がアメリカ大陸について知らず、アメリカ文化がアフロ・ユーラシア大陸を知りませんでしたが、多くの文化が世界地図を描いていました。

しかしよく知らない地域があるはずなのに、その地図に空白はなく、省略されたり空想の怪物で埋められたりしていたんです。


画像出典:サピエンス全史

その時代の人たちにとっては、まったく未知の大陸があるなんて思いもしなかったんですね。

卓越した思想家や学者だけでなく、「絶対的な存在である聖書が世界の半分を見落としていた」なんて考えは彼らにはあり得なかったんです。

1492年にアメリカ大陸を発見したコロンブスでさえも、その大陸がインド諸島だと思っていました。

しかし後にアメリゴ・ヴェスプッチが数回に渡ってアメリカ探検に参加し(1499~1504年)、それが新大陸であることが分かって、彼にちなんで「アメリカ」と名付けられたんです。

15世紀から16世紀にかけて、ヨーロッパ人は空白の多い世界地図を描き始めます。


↑の注釈が素晴らしすぎる。画像出典:サピエンス全史

著者はこの「私たちには分からないことがある」と認める姿勢を、「植民地支配の意欲だけではなく、科学的な物の見方の発達を体現するもの」としています。

新たな大陸を認識できなかったコロンブスはまだ近代人とは言えず、「わからない」と言う勇気があったアメリゴ・ヴェスプッチが近代人の第一号であると。

この「無知の自覚」とそれに対する探究心・好奇心によって、ヨーロッパ人たちは新たな世界へと進出し、急速に社会が発展していったんです。

途上国では想像力が生まれにくい

私はいま、人類生誕の地と言われる東アフリカのルワンダに住んでいます(ルワンダが発祥ではないだろうけど)。

1年半ほど現地の人たちと暮らしながら、この「知らないことを知らないと知ること」が社会を発展させるうえでものすごく重要だと実感していたので、著者の主張にも首がもげるほどうなずけました。

ルワンダの地方に住んでいる人たちの多くは決して裕福とは言えないので、テレビやネットも使えず、情報に接する機会がかなり限られています。学校教育も十分ではありません。

だから「知らないと知らないこと」がたくさんあるんです。

道を歩いているとたまに「チャイナ!」と言われます。ひどいときには「チンチョンチャン」と中国人の真似をして侮辱されることも。

侮辱してくる人はごく少数で、基本みんないい人ですが。

これって、「アジア人=中国人」っていうステレオタイプなんですよね。アジアには中国以外にもたくさんの国があるということに想像が及ばないし、そうやって侮辱されることで嫌な気持ちになるということも理解ができない。

「知らないことがたくさんあるということを知らない」ので、自分の外の世界に対する想像力と、それを知りたいという探究心が育たない。

「未知のもの」に触れる機会が少ないがために、アメリゴ・ヴェスプッチが「この先にはなにがあるか?」と心を踊らせたような、好奇心や向上心がきわめて生まれにくい環境になっていて、それが途上国の発展を遅らせている要因のひとつなんじゃないかと思っています。

マンガ『進撃の巨人』に登場するアルミンは、頭は良いもののひ弱でいじめられっ子でした。

それでも彼が巨人の討伐に参加しようという強い意志をもてたのは、壁の向こうにあると言われる「海」を見たいという好奇心があったからです。

そのような「まだ知らないものを知りたい」という思いは、人と世界を動かす原動力になり得るんですね。

幸福とはなにか

本書は「幸福とはなにか」という壮大な問いも読者に投げかけています。

幸福は富や健康、社会的関係だけで測れるものではありません。著者はその指標のひとつとして、「期待に対する満足」を挙げています。

たとえば牛に引かせる荷車がほしいと思っていて、それが手に入ったら嬉しいけども、フェラーリの新車が欲しかったのに、フィアットの中古車しか手に入らなかったらみじめだと感じるだろう、と。

そのうえで著者はこんなことを書いています。

第三世界における不満は、貧困や疾病、腐敗、政治的抑圧ばかりでなく、先進国の標準に接することによっても助長されうる

これはまさにアフリカでボランティアをやっている自分が感じていることです。

ルワンダに来る前は「困っている人がたくさんいるだろう」と思っていたのに、いざ来てみたらみんな幸せそうに暮らしていました。

『サピエンス全史』で、「社会的貧困(他者には得られる機会を一部の人が享受できない状態)」はずっと続くかもしれないが、「生物学的貧困(食べ物や住む場所がないために生命そのものが脅かされる状態)」は過去のものとなったと語られている通りでした。

でも、もしかしたら、日本からこうやってボランティアがやってきて、村人には高くて手が出ないMac Book Airでブログを書いて、ルワンダでは富の象徴のようになっているiPhoneを何の気なしに使っているのを見て、「なんでおれたちにはあんな豊かな暮らしができてないんだ!」と不満を募らせてしまうかもしれません。

そんなネガティブな感情を生んでしまうのなら、先進国からのボランティアなんて来ないほうが良いですよね。

だから「知らなかったことを知る」ことは、好奇心や向上心というエネルギーにもなる反面、「知らなければよかった」と思うことだってあるのかもしれません。

そんなさまざまな可能性があることを知ったうえで、「自分と、まわりの人にとって、幸福とはなにか」と考えていかないといけないんですね。

世界的に評判になっているとおり、人類の歴史を体系的に学べて「これが勉強するってことか…!」と読みながらめちゃくちゃワクワクさせられました。

ぜひ読んでみてください。

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要約・書評・感想『ライフ・シフト』3つの新ライフステージ

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