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ミスチルの歌詞を考察する本シリーズ。
今回はアルバム『Q』に収録されている『ロードムービー』について。
先の分からない将来に対する漠然とした不安を抱えつつも、大切な人の存在を感じながら一歩ずつ進んでいく前向きさを感じる曲になっています。
サウンドも絶妙にやさしくて、大好きな曲です。
この曲の魅力はどこにあるのか、解説します。
もくじ
ミスチル『ロードムービー』とは
『ロードムービー』は2000年発売の9枚目のアルバム『Q』に収録されています。
シングルカットはされていないものの、ファンの間では非常に人気の高い曲です。
ミスチル『ロードムービー』歌詞の意味
では、さっそく歌詞の中身を見ていきましょう。
全体としては先の見えない未来を一歩ずつ進んでいくような、前向きな歌詞になっています。
シチュエーションは夜のバイク
いびつなうねりを上げながら オートバイが走る
寝ぼけた君を乗せて ほんの少しだけ急いで
月明かりが誘う場所へ
シチュエーションは夜。主人公はうしろに「君」を乗せてオートバイを走らせています。
500R のカーブの意味
嘆きもぼやきもため息も 風に飛んでいくよ
そして幸福なあの歌を 高らかに歌いながら
500Rのゆるいカーブへ
「嘆き」「ぼやき」「ため息」などネガティブなことばが並んでいますが、それらはオートバイに乗って走っていることで飛んでいくんですね。
そして「幸福なあの歌」を、「高らかに歌」う。
ここからは悩みを抱えながらも、幸せに生きようとしている主人公の姿勢が垣間見えます。
ちなみに「500R」というのは道路の曲率のこと。
カーブを円とした時の半径を数字で表しており、500Rなら半径500mの円、300Rなら半径300mの円となります。
数字が大きいほどカーブがゆるくなるので、「500Rのゆるいカーブ」と歌われているんですね。
はじめは国道500号線のことかと思って調べたら、大分県別府市から佐賀県鳥栖市に至る一般国道でした。
絶対ちがうw
何者でもない自分と支えてくれる君
カーラジオも無く そしてバックもしない オートバイが走る
ただ君の温もりを その優しい体温を
この背中に抱きしめながら
ここの歌詞が個人的にすごく響きました。
「カーラジオも無く そしてバックもしない オートバイが走る」
この「オートバイ」は主人公自身のことを指すメタファーですよね。
ラジオ付きの車のように大した才能や特筆すべき点もない、何者でもない自分。
「バックもしない=過去には引き返せない」人生。
そんな平凡な自分だけれど、「君」がいてくれる。
「背中に抱きしめながら」という逆説的な表現がいいですよね。
現実的には背中で抱きしめるなんて無理ですが、うしろから自分を支えてくれている「君」を抱きしめるように大切に思っているって気持ちが伝わってきます。
情景の浮かぶ体言止め
『ロードムービー』は聴いていると、まるで情景が目に浮かぶようなイメージの豊かさがありますよね。
その秘密は「体言止め」(文章を名詞で終える技法)の多用にあります。
泣きながら君が見てた夢は 何を暗示してるの?
カラスが飛び交う空に モノクロに輝く虹
誰も笑っていやしない動物園汗ばむ季節 君がふと見せてくれた情熱
ファミレスの裏の野良犬が見てたキス
スカートの裾を濡らしはしゃいでたあのビーチハウス
前半は「君が見てた夢」を通じて、彼らの漠然とした不安と希望を対にして表していると思われます。
不安:希望=カラス:空、モノクロ:虹、誰も笑っていない:動物園
そして後半には、桜井さんがラブソングでよく歌っている「何気ない日常の大切さ」が。
「汗ばむ季節 君がふと見せてくれた情熱」これはまあアレのことですよね。
『Sign』のカップリング曲『こんな風にひどく蒸し暑い日』のイメージとだぶります。
ふつう体言止めを使いすぎたらポエム感が強すぎたり、キザったらしくなるんですが、「ファミレス」とか「野良犬」とか「スカート」とかありきたりなことばが並んでいるおかげか嫌味な感じはまったくしないですよね。
そういったバランスがうまく取れていることで、体言止めのメリットである余韻をもたせ、イメージをふくらませるといった効果が出ています。
未来へ
最後のパート。
街灯が2秒後の未来を照らし オートバイが走る
等間隔で置かれた 闇を越える快楽に
また少しスピードを上げて
もう1つ次の未来へ
「街灯が2秒後の未来を照らし」って、この表現お洒落すぎませんか。
バイクで走ってるから、道路沿いに等間隔で立っている街灯が2秒毎に通り過ぎていくんですね。
そうやって少しずつ先に進んでいくシーンをイメージさせながら、最後のフレーズ。
「もう1つ次の未来へ」
くぅ~~~(感嘆)
からの、グロッケンのやさしすぎるリフ、アゲイン!
うぉ~~~(感嘆)
こんなにも柔らかくてやさしい曲なのに、最後には「待ってろよ未来!」というアツく前向きな気持ちにさせられます。
未来のことを考えると漠然としすぎて不安になったりもしますが、「2秒後」に街灯を通り過ぎていくように「1つずつ」進んでいけばいいんですよね。
この辺りのテーマは『Tomorrow never knows』や『イノセントワールド』にも通じそう。
ギター田原さんの職人芸
サウンド面についても言及しておくと、この曲でポイントとなっているのは田原さんのエレキギターです。
こんなエピソードがあります。
桜井は元々この曲にエレキギターは入るスペースがないと思っていたが、田原がまるでエレキギターを元に曲を構成したかのようなギターを入れたため、非常に驚いたという。
参考:Wikipedia
たしかに全体的にやさしいトーンなので、エレキギターは必要ないように思えますよね。
おもに音を出しているのは、グロッケンとピアノとアコギ。
それらの音を邪魔しないように、壊さないように、田原さんの人間性を表すように(偏見w)、そっとやわらかいエレキの音でキラキラした色がつけられてます。
しかしそれだけでなく、「今も僕らに付きまとう幾つかの問題」と曲が展開していくところではディストーション(音の歪み)をかけて不安感を煽っていることで、サウンドにメリハリが。
このエレキの音が入っていることで、ただ単にやさしいだけの歌に終わらず、悩みや葛藤を越えていく強さや前向きさを感じることができるのではないでしょうか。
以上、『ロードムービー』についての考察でした。
幸福な歌を高らかに歌いながら、何処かにあるはずのゴールラインを探しに、もう1つ次の未来へ進みましょう。
タケダノリヒロ(@NoReHero)
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