「学校に行かない」という選択肢

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「積極的不登校」についての記事が話題になっています。

「学校には行かない」小2長男の”積極的不登校”という選択

本記事の著者の長男(小2)が突然「学校に行かない」と言い出しました。

その理由を聞くと、

「学校に行く理由がわからない。学校で学べることは学校の外で全て学べる。」

「学校は勉強についていけない子に合わせて授業をする。だからつまらない。」

と答えたそうです。

学校に行く意味って、何なんでしょうか。

学校って、ほんとに行かなきゃいけないものなんでしょうか。

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才能を埋もれさせる危険性

この子はきっと、すごく頭のいい子だと思います。

家庭では「自分で考えなさい」「自分で決めなさい」と促してきたそうなので、その姿勢が早くも身についているんですね。

学校は行かなきゃいけないものだと思い込んでいたぼくは、はっとさせられました。

なぜ学校に行かなきゃいけないのかも、ちゃんと考えたことなんかありませんでした。

この子は2年生にして、その意味を考え、自ら答えを出したんです。

そんな彼なら、きっと学校に行かなくても自分で勉強して、必要な知識を得ることが出来るでしょう。

その結果、他人にはない能力をもった突き抜けた人材になるかもしれません。

しかしそのまま学校に通わせれば、強制的に周りに合わせられ、その才能を埋もれさせてしまうことも考えられます。

でも、自分で勉強出来るんだとしても、本当に通学させる必要はないんでしょうか。

通学するのは非認知能力を高めるため

「学校に行くのは、勉強のためだけじゃない。友だちを作ったり、集団行動を行ったりするのも大事なんだ」と言うとユートピア的な発想に聞こえますが、実はその重要性は科学的に証明されています。

シカゴ大のヘックマン教授らの実施した「ペリー幼稚園プログラム」という実験。60年代から現在まで追跡調査が続いています。

このプログラムでは、低所得のアフリカ系米国人の3〜4歳の子どもたちに質の高い就学前教育を受けさせました。

これによって改善されたのが、「非認知能力」。IQや学力テストで計測できる認知能力とは違い、「忍耐力がある」「社会性がある」「意欲的である」など、一般的に「生きる力」と呼ばれるものです。

この非認知能力は、認知能力の形成にも一役買っているだけではなく、大学進学率や年収、健康、犯罪率に大きく関係することが明らかになりました。

リクルートワークス研究所が明らかにした日本のデータでも、中高生の時に培われた勤勉性、協調性、リーダーシップなどの非認知能力が学歴、雇用、年収に影響することが分かっています。

参考:「学力」の経済学/中室牧子保育園義務教育化/古市憲寿

簡単に言えば、「幸せな人生を送るためには生きる力(非認知能力)を高めることが重要で、そのためには学校に通わせると良いよ」ってことです。

もちろん家庭においても非認知能力を高めることは可能だと思いますが、学校に通わせずに子どもに社会的な関わりを持たせて協調性やリーダーシップを育てるのは容易ではないはずです。

だから、いくら「学校で学べることは全て学校の外で学べる」と言っても、「学校で身につくのは学力だけじゃないんだよ」と反論することは出来ますね。

義務教育ってなに?

そもそも、日本には「義務教育」という制度がありますよね。ってことは、どっちにしろ学校に行かなきゃダメってこと? と思い、調べてみました。

すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負う。義務教育は、これを無償とする。……憲法第26条第2項

引用元:第4条(義務教育):文部科学省

教育を「受ける」義務ではなく、「受けさせる」義務。つまり、子どもではなく保護者にその義務があるってことなんですね。

保護者は、子女を満6才から満12才まで小学校に、その修了後満15才まで中学校に就学させる義務を負う。……学校教育法第22条、第39条

引用元:第4条(義務教育):文部科学省

これを読むと、家庭での学習ではダメで、「就学」させなければならないということになってます。

学校教育法第144条では、「この義務の履行の督促を受けても応じなければ、10万円以下の罰金に処する」と定められています。

じゃあ、「学校に行かない」宣言をした男の子の親は罰金を払わなきゃいけないのかというと、そうでもなさそうです。

第二十条  小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校及び特別支援学校の校長は、当該学校に在学する学齢児童又は学齢生徒が、休業日を除き引き続き七日間出席せず、その他その出席状況が良好でない場合において、その出席させないことについて保護者に正当な事由がないと認められるときは、速やかに、その旨を当該学齢児童又は学齢生徒の住所の存する市町村の教育委員会に通知しなければならない。

引用元:学校教育法施行令 第二十条

学校に通わせない「正当な事由」があれば、教育委員会に通知されることも、それによって「学校に通わせろ」と督促されることもないってことですね。

男の子本人が「学校に行く理由がわからない。学校で学べることは学校の外で全て学べる。」と主張していますし、保護者もそれを踏まえて適切な学習環境を用意できるのであれば「正当な事由」になるんじゃないでしょうか(素人なので分かりませんが)。

いずれにせよ、日本の場合「義務教育」とは「教育を受けさせる義務」ではなく「学校に通わせる義務」と考えた方が良さそうですね。

ちなみにドイツでは、

児童・生徒及び保護者に既成の学校教育を拒否する権利は認められておらず、不登校が発覚した場合は、本人は登校を強制され、保護者も処罰される。

引用元:義務教育 – Wikipedia

とな。恐ろしい。

「消極的不登校」になっていたかもしれない

小学校1年生と2年生のときに、1日ずつズル休みをしたことがあります。

朝起きて、なんとなく胸のあたりが重くて学校に行きたくないなと思いました。別に体調が悪かったわけではありません。

「乱暴したり悪口を言ったりする友だちがいる」と言って、休ませてもらいました。

そしたら、驚いたことに父も仕事を休んだんです。

父も母も小学校の教師だったこともあってか、そのままぼくが不登校になってしまうのではないかと心配してくれたんだと思います。

結局、学校は休んだものの、家で父親と一緒に勉強をしました。

今でも鮮明に覚えているのは、父の前で教科書を音読していたときのこと。

寝転がって読んでいたら「ちゃんと読め」と言って、バシッと叩かれたんです。

父に叩かれた記憶があるのは、この時が最初で最後。

普段あまり怒らない父を怒らせてしまったこともそうですが、仕事を休んでまで自分に付き合わせてしまったことで「なんていけないことをしているんだ」と感じずにはいられませんでした。

そうやって向き合ってもらえなければ、ズルズルと不登校になってしまい、今とはまったく違う人生を歩んでいたかもしれません。

あの時しっかり自分に向き合ってくれた家族には本当に感謝しています。

「学校に行かない」と子どもに言われたら?

そんなプチ登校拒否を起こしたぼくも、27歳になりました。同世代には親となっている友人も沢山います。

もし子どもに「学校に行かない」と言われたら、ちゃんと向き合えるだろうか。

学びの機会が多様化されたこの時代に、学校に通うことだけが本当に正解なんだろうか。

子どもの進路は親がしっかり導いてあげなければいけないんじゃないのか。

とは言え、子どもであっても「ひとりの人間」としてその考えを尊重して、決定権を委ねるべきなんじゃないのか。

そんなことを考えてしまいました。

タケダノリヒロ(@NoReHero

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