【2020/05/18 更新】
初級古典読書ブロガーのタケダノリヒロ(@NoReHero)です。
福沢諭吉の『学問のすすめ』を読んでみたんですが、原文は文語体で読みづらい……。しかし明治時代の日本人に向けて書かれたものとは言え、現代のぼくらが読んでもためになることばが満載。これは読まなきゃ勿体無い。
ということで、小学生が読んでも分かるぐらいさくっと要約してみました。難しくて挫折しちゃった方や、忙しくて読む時間が惜しい方はぜひこれを読んでみてください。
https://twitter.com/NoReHero/status/831494114730446848
タケダ少年と福沢先生
この記事では、子どもと福沢先生が対話する形式で進めていきます。
この子は子ども時代のぼくです。可愛いでしょ。
『学問のすすめ』とは
以下、齋藤孝さんの現代語訳(読みやすい)と、原文が掲載されている青空文庫版(タダで読める)を参考に書きました。
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タイトルは「勉強しよう」っていう意味だけど、それだけじゃないんだ。なぜ勉強が必要なのか、そのためには何をすればいいのか、そして明治時代という新しい世界を生きていくためには何が大切なのかを伝えている本だよ
日本の夜明けぜよ
確かに昔の言葉遣いだからいまの人たちには少し難しいかもしれないけど、現代風に訳された本もあるから大丈夫。それに全部で17編に分かれてるから、面白そうなところから読んでくれて良いんだよ
それなら読みやすそう!この本はいつ書いたんですか?
最初の編を書いたのは1872年だよ。江戸幕府が倒れ、新政府が近代化と独立を目指して進み始めた時代だね
1867年の大政奉還の後、1872年の廃藩置県など明治維新のあたりですね
『学問のすすめ』各編の要約・内容
オウケイ。前半は国家と個人の関係、後半は人生設計の技術や判断力の鍛え方など、ビジネス書的に書いてるよ
グローバルでソフィスティケイテッドなビジネスパーソンを目指すぼくにはどちらもマストですね!
初編 学問には目的がある
まず始めに言いたいのは、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」ってこと
天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず
その言葉は有名ですね!「生まれつきの身分による上下の差はない」ってことですよね。でも世界には賢い人も愚かな人もいますよ?
その違いは、学ぶか学ばないかなんだ。学問をしなければ人は愚かになる
でもね、ただ勉強すればいいというわけじゃないんだ。実用性のないものは後回しにして、生活に役立つ実学を一生懸命勉強すべきなんだよ
そう、文字の書き方や帳簿の付け方に始まり、地理学、物理学、歴史学、経済学、修身学(※)などを通して、ものごとの本質を掴むんだ。それを通して、それぞれの社会的役割にふさわしい知識や人間性を備えて、この国の平和と安定を守ることが学問の目的だよ
(※)修身学・・・行動の仕方を学び、人との交わり方や世間での振るまうべき自然の「道理(倫理)」を述べたもの
それぞれの役割にふさわしい知識や人間性を備えること、それにより国を守ることが学問の目的
賢人と愚人との別は学ぶと学ばざるとによりてできるものなり
今の世に生まれ報国の心あらん者は、必ずしも身を苦しめ思いを焦がすほどの心配あるにあらず。ただその大切なる目当ては、この人情に基づきてまず一身の行ないを正し、厚く学に志し、博く事を知り、銘々の身分に相応すべきほどの智徳を備えて、政府はその政を施すに易く、諸民はその支配を受けて苦しみなきよう、互いにその所を得てともに全国の太平を護らんとするの一事のみ。今余輩の勧むる学問ももっぱらこの一事をもって趣旨とせり。
第2編 人間の権理とは何か
人としての心得
初編では勉強が大事だと言ったけど、なにも本を読むだけが学問じゃないんだ
そう、実生活も、実際の経済も、現実の世の中の流れを知るのも学問なんだ。そのうえで、『学問のすすめ』では学問が必要な理由や、一般の人が心得ておくべきことを挙げて、学問とは何かを示しているんだよ
だから多くの人に読まれる本になったんですね!(※)
(※)近代の啓発書で最も著名で、最も売れた書籍とされる。最終的には300万部以上売れたとされ[1]、当時の日本の人口が3000万人程であったから実に全国民の10人に1人が買った計算になる。- Wikipediaより
「天は人の上に人を造らず…」について
最初に話した「天は人の上に人を造らず…」って言葉に戻るけど、ここでは「基本的な人権はどんなことがあっても侵害できない」ということを説明しよう。旧幕府の時代には、武士とそれ以外の人間の差別が大きかったんだ。でも、政府と人民は、基本的人権に関してはほんとは同等なんだよ
じゃあ政府がぼくらの人権を無視するのもダメなことなんですね
そう。ただし、法律を守ることは人民の責任。バカがいると力で抑えつけるしかなくなるからね。だから暴力的な政治を避けるには、勉強して、才能や人間性を高めて、政府と同等の地位にのぼる必要があるんだ
暴力的な政治を避けることも勉強する目的のひとつなのか!
人民もし暴政を避けんと欲せば、すみやかに学問に志しみずから才徳を高くして、政府と相対し同位同等の地位に登らざるべからず。これすなわち余輩の勧むる学問の趣意なり。
第3編 愛国心のあり方
2編では人と人の関係について説明したけど、3編では国と国との関係についてお話しよう。国は人の集まったものだから、貧富・強弱の差はあるけど権理には差はないんだ。そしてその貧富・強弱の状態は、人間の努力によって変わる。だから「一身独立して一国独立する」んだよ
ひとりひとりが独立を目指せば、国も独立するってことですね!
まずはひとりひとりが独立すること
そう、人民が「独立するぞ!」という「気概」を持たないと、国が独立するのも難しいんだ
それには3つの理由があるんだ。①独立の気概がない人は、国を思う気持ちも浅い ②国内で独立していなければ、国外に独立の権利を主張できない ③独立の気概がないと、人の権威をかさに悪事をこなすことがある
わが日本国人も今より学問に志し気力を慥かにして、まず一身の独立を謀り、したがって一国の富強を致すことあらば、なんぞ西洋人の力を恐るるに足らん。道理あるものはこれに交わり、道理なきものはこれを打ち払わんのみ。一身独立して一国独立するとはこのことなり。
第4編 国民の気風が国を作る
国の整備・充実には、国民と政府の両立が不可欠なんだ。でも、そのためには国民の心に染み付いたある「気風」を一掃しなきゃいけない
この国では、立派な人でも政府に集まって政治をするとダメになる。その「気風」に縛られて、人々がそれぞれの働きをしっかりしてこなかったんだ。だから、国の文明を発展させるには、その手本を政府ではなく民間が示す必要があるんだよ
政府に頼らずに自分たちの手で国を作っていこうってことですね!
今の世の学者、この国の独立を助けなさんとするに当たりて、政府の範囲に入り官にありて事をなすと、その範囲を脱して私立するとの利害得失を述べ、本論は私立に左袒したるものなり。
第5編 国をリードする人材とは
そこで国をリードしていくのが、「ミッヅル・カラッス」の人たちだ
…もしかして“middle class”(中産階級)のことですか?
西洋で文明を発展させてきたのは、みんな中産階級なんだ。蒸気機関のワット、鉄道のスチーブンソン、経済の法則で商売を一変させたアダム・スムスも、みんな国民の中くらいに位置して知力で世の中を指揮したんだよ
文明を発展させるのは庶民の役目
文明の事を行なう者は私立の人民にして、その文明を護する者は政府なり。
第6編 文明社会と法の精神
次は法律について。犯罪者を裁くのは政府の役目だから、人民が勝手に裁くのはダメ。これを「私裁」という。人民はあくまで国法を尊重すべきなんだ
じゃあ浅野家の家来が主人の敵討ちに吉良上野介を殺しちゃった『忠臣蔵』はどうなんですか?
じゃあもし誰かに恨みをもって、その人を法律が裁いてくれなかったらどうすればいいんですか?
その法律が間違っているなら、勝手に「天誅」と言って罰を下したり、法を欺くのではなく、きちんと訴えるべきだね
もし心得違いして私に罪人を殺し、あるいは盗賊を捕えてこれを笞うつ等のことあれば、すなわち国の法を犯し、みずから私に他人の罪を裁決する者にて、これを私裁と名づけ、その罪免すべからず
第7編 国民の二つの役目
国民には2つの役目がある。国がひとつの会社だとすると、国民はその客であり、またその主人(経営者)でもあるんだ。政府は人民の代理として事務をするから、本家本元・主人は人民。政府はあくまで代理人・支配人なんだよ
人民は国の本家本元だから、国を守るための費用、つまり税金を払うのは当然の義務。税金はあれこれ考えずに気持ちよく払うべし!
でも、もし政府がダメになってしまったら、どうすればいいんですか?そんな政府に税金を払いたくないです
そんなときは3つの選択肢があるね。①信念を曲げて政府に従うか、②力をもって政府に敵対するか、③身を犠牲にして正義を守るか
そりゃ③だね。苦難に耐え、くじけずに志を持ち、正しい道理を唱えて政府に訴えるのが一番だよ
およそ国民たる者は一人の身にして二ヵ条の勤めあり。その一の勤めは政府の下に立つ一人の民たるところにてこれを論ず、すなわち客のつもりなり。その二の勤めは国中の人民申し合わせて、一国と名づくる会社を結び、社の法を立ててこれを施し行なうことなり、すなわち主人のつもりなり。
第8編 男女間の不合理、親子間の不条理
8編は男女間と、親子間の不合理について。男と女に力の差はあるけど、権理は同じ。妻が夫に従わなければならないというのはおかしいよね。
男と女に力の差はあるけど、権理は同じ
日本ではいまだに女性の地位が低いままだけど、140年も前から言われてたんですね
それから妾(めかけ)もよくない。世の中の男女の数は同じになる理屈になっているから、ひとりで複数の女性を娶るのは、天の道理に背くことになるんだ。そんなやつはケダモノと一緒だよ
親子の関係も男女関係と同じで、子どもだからと言って理不尽な孝行を強いるのはおかしい。大人に不合理なことを言われたら言い返していいんだよ
『女大学』という書に、「婦人に三従の道あり、稚き時は父母に従い、嫁いる時は夫に従い、老いては子に従うべし」と言えり。稚き時に父母に従うは尤もなれども、嫁いりて後に夫に従うとはいかにしてこれに従うことなるや、その従うさまを問わざるべからず
第9編 よりレベルの高い学問
人間の心身の二つの働き
人間の心身の働きは二種類に分けられるんだ。①一個人としての働きと、②社会的交わりの中での社会人としての働きだ
個人として衣食住の満足を得るのは大事だけど、それだけでは虫けら同然で生きてる意味がない。自分の心身の働きを使って、達すべき目的を達しなければならないんだよ
せっかく人として生まれたなら、自分の生きた証を残せってことですね
2つ目の社会人としては、広く他人と交際すること。そうするほど自分の幸福も大きくなるんだ
人の心身の働きを細かに見れば、これを分かちて二様に区別すべし。第一は一人たる身につきての働きなり。第二は人間交際の仲間に居り、その交際の身につきての働きなり。
文明とは受け継がれる遺産
文明とは、世界中の過去の人々が一体となって、我々に譲り渡してくれた遺産なんだ。いまの学生はその遺産を受けて進歩の最前線にいるのだから感謝しなければならないんだよ。そして先人たちのように、生きた証を残していくことが我々の仕事なんだ
巨人の肩の上に立って世界を見よう
じゃあ現代を生きてるぼくらは明治の学生たちよりもっとラッキーってことですね
そうだね。いま明治の日本では古い政府が倒れ、社会の仕組みが変わってきている。でもそれは、戦争による変化じゃなくて、文明に促された人の心の変化なんだ。その変化はいまも続いているから、学問の道を先頭に立ち、さらに高いレベルに持っていくにはいまがチャンスなんだ!
親の身代を譲り受くればこれを遺物と名づくといえども、この遺物はわずかに地面、家財等のみにて、これを失えば失うて跡なかるべし。世の文明はすなわち然らず。世界中の古人を一体にみなし、この一体の古人より今の世界中の人なるわが輩へ譲り渡したる遺物なれば、その洪大なること地面、家財の類にあらず。
今の学者はこの人物より文明の遺物を受けて、まさしく進歩の先鋒に立ちたるものなれば、その進むところに極度あるべからず。今より数十の星霜を経て後の文明の世に至れば、また後人をしてわが輩の徳沢を仰ぐこと、今わが輩が古人を崇むがごとくならしめざるべからず。概してこれを言えば、わが輩の職務は今日この世に居り、わが輩の生々したる痕跡を遺して遠くこれを後世子孫に伝うるの一事にあり。その任また重しと言うべし。
第10編 学問にかかる期待
新時代の学問の目的は、日本人として外国人と競うことなんだ。この知の戦いに勝って、国の地位を高めることを目指しているんだよ
開国したばかりの日本では「富国強兵」と言われてたんですよね
だから、通常の学校教育程度で満足していてはいけない。生計を立てるのが困難でも、早く金を稼いで小さなところで満足するよりも、苦労して倹約し、大成するときを待ったほうが良いんだ
目先の小金に執着せず、大成するのを待つんだブー
生計もとより軽んずべからず。あるいはその人の才に長短もあることなれば、後来の方向を定むるはまことに可なりといえども、もしこの風を互いに相倣い、ただ生計をこれ争うの勢いに至らば、俊英の少年はその実を未熟に残うの恐れなきにあらず。本人のためにも悲しむべし、天下のためにも惜しむべし。かつ生計難しといえども、よく一家の世帯を計れば、早く一時に銭を取りこれを費やして小安を買わんより、力を労して倹約を守り大成の時を待つに若かず。
第11編 美しいタテマエに潜む害悪
ここでは8編の続きを説明するよ。実のない上下貴賎の区別である「名分」(タテマエ)は必要ないけど、実のある「職分」(自分の立場による責任)を守ることは大事なんだ
うん、だけどまったくの別物だから自分の役割を疎かにしてはいけないんだよ
名分と職分とは文字こそ相似たれ、その趣意はまったく別物なり。学者これを誤り認むることなかれ。
第12編 品格を高める
考えを伝えるためには、観察し、推理し、読書をして知見を持ち、議論をすることで知見を交換し、本を書き演説することが手段となるんだ。でも、その見識が低いことが、いま我が国でもっとも心配なことだね
人間の見識品格は、難しい理論を議論して高まるものでも、広い知識を持つだけで高まるものでもないんだ。物事のようすを比較して、上を目指し、決して自己満足しないようにすることが大事なんだよ
方今わが国民においてもっとも憂うべきはその見識の賤しきことなり。
人の見識を高尚にして、その品行を提起するの法いかがすべきや。その要訣は事物の有様を比較して上流に向かい、みずから満足することなきの一事にあり。
第13編 怨望は最大の悪徳
王子様的存在の男子がクラスのおとなしめ女子とデートしてるのを目撃し、人前では愛想を振り撒いてるのに思わず「あの泥棒ネコめ…」って感情が顔に出てしまったイケてる女子のみなさんの図
怨望は諸悪の根源。どんな人間の悪事もここから生まれるんだ
それは「窮」、つまり言論の自由をふさぎ、行動の自由を妨げることだよ。だから、言論の自由は邪魔してはいけないし、行動の自由は妨げてはならないんだ
およそ人間に不徳の筒条多しといえども、その交際に害あるものは怨望より大なるはなし。
自由に言わしめ、自由に働かしめ、富貴も貧賤もただ本人のみずから取るにまかして、他よりこれを妨ぐべからざるなり。
第14編 人生設計の技術
心の棚卸し
人間は自分で思っているより愚かなことをするものだよね。時間の計算は甘すぎるし、物事を簡単に見すぎてしまう
うん、この前同じクラスの花子ちゃんに、福沢先生の顔と数字が印刷された長方形の紙を何枚かチラつかせたのにデートしてくれなかったとき、人生って難しいなと思ったよ
そのような不都合を防ぐために、時々「心の棚卸し」をする必要があるんだ。過去十年間は、何を損して何を得たのか。いまは何をやって、そのようすはどうか。遊び癖や怠け癖はないか。来年も続けていて大丈夫か。さらに知性や人格を磨く工夫はないか、とかね
見通しは甘くなってしまうもの。心の棚卸しをしよう
人の世を渡る有様を見るに、心に思うよりも案外に悪をなし、心に思うよりも案外に愚を働き、心に企つるよりも案外に功を成さざるものなり。
この不都合を防ぐの方便はさまざまなれども、今ここに人のあまり心づかざる一ヵ条あり。その箇条とはなんぞや。事業の成否得失につき、ときどき自分の胸中に差引きの勘定を立つることなり。商売にて言えば棚卸しの総勘定のごときものこれなり。
「世話」のふたつの意味
「世話」という言葉には「保護」と「命令」の二つの意味があるんだ。この両方の意味を込めて世話をするとき、世の中はまるく治まるんだよ
「世話」には「保護」と「命令」の意味がある。ふたつのバランスが大事
だから、保護と命令は同じくらいじゃないといけないんですね
たとえば言うことを聞かない息子にむやみに金を与えるのは、保護は行き届いているけど、命令の世話は行われていない。子どもは言うことを聞いて勉強しているのに、親が充分な衣食を与えないときは、命令だけで、保護の世話を怠っていると言えるね
世話の字に二つの意味あり、一は「保護」の義なり、一は「命令」の義なり。
第15編 判断力の鍛え方
信じることには偽りが多く、疑うことには真理が多いもの。社会が進歩して真理に到達するには、異論を出して議論するほかないんだ
ものごとを疑え
そう。しかし、信じる、疑うということには、取捨選択の判断力が必要なんだ。学問はこの判断力をつけるためにあるんだよ。だから西洋文明だからといって軽々しく信じたり、日本の古い習慣だからといって軽々しく疑ってはならないんだ
信の世界に偽詐多く、疑いの世界に真理多し。
文明の進歩は、天地の間にある有形の物にても、無形の人事にても、その働きの趣を詮索して真実を発明するにあり。西洋諸国の人民が今日の文明に達したるその源を尋ぬれば、疑いの一点より出でざるものなし。
この信疑の際につき必ず取捨の明なかるべからず。けだし学問の要はこの明智を明らかにするにあるものならん。
第16編 正しい実行力をつける
ニ種類の独立
これまで独立が大事だと話してきたけど、独立には形のあるもの(品物についての独立)と形のないもの(精神についての独立)の2種類があるんだ
品物についての独立は、人に物を貰わないってことですよね。精神についての独立ってどういうことですか?
妄想的世渡りに心身を労しないってことだね。他人に流されたり羨んだりすることなく、「自分」を大事にするってことだよ
独立に二様の別あり、一は有形なり、一は無形なり。なお手近く言えば品物につきての独立と、精神につきての独立と、二様に区別あるなり。
心と働きのバランス
それから心(議論)と働き(実業)のバランスを取ることも大事だよ。心が行き届いていないと、高い志をもてない、物事の有用・不用を見分けられない、TPOをわきまえられないなどの弊害があるし、心だけが高尚で働きが乏しいと、常に不満を持ったり、人に嫌われて孤立したりするんだ
志と行動のバランスが大事
さればこの議論と実業とは寸分も相齟齬せざるよう正しく平均せざるべからざるものなり。
第17編 人望と人付き合い
最後は人付き合いについて。人望とは実際の力量で得られるものではないし、財産で得られるものでもない。その人の活発な知性の働きと、正直な心という徳をもって、次第に獲得していくものなんだよ
栄誉や人望は努力して求めるべきものだよ。ただし、自己アピールする方法には気をつけなきゃいけないよ
それには3つあって、①日本語を上手に使って、スピーチが上達するよう勉強すること、②表情・見た目を良くして、人に嫌な感じを与えないようにすること、③さまざまなことに関心をもち、交際の範囲を広くすること、だね。
現代の自己啓発書にも書いてありそうなことを、福沢先生は140年も前から言ってたんですね!
正しいアピールによって、自分のことを知られ相手のことも知り、自分の力を充分に発揮し、自分のためにやったことがさらに世の中のためになるようにするんだ
ようし、ぼくも花子ちゃんにアピールできるように、いっぱい勉強するぞ!
しからばすなわち栄誉人望はこれを求むべきものか。いわく、然り、勉めてこれを求めざるべからず。ただこれを求むるに当たりて分に適すること緊要なるのみ。
第一 言語を学ばざるべからず。
第二 顔色容貌を快くして、一見、直ちに人に厭わるることなきを要す。
第三(中略)恐れはばかるところなく、心事を丸出しにしてさっさと応接すべし。ゆえに交わりを広くするの要は、この心事をなるたけ沢山にして、多芸多能一色に偏せず、さまざまの方向によりて人に接するにあり。
『学問のすすめ』が近代日本を発展させた
最後まで読んでいただきありがとうございます
当時、10人に1人の日本人が読み大ベストセラーになったとされる『学問のすすめ』。
開国、明治維新、文明開化という激動の時代のなかで「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」「一身独立して一国独立する」などの言葉が、「わたしが日本をつくっていくんだ!」と庶民の心を鼓舞したのは想像に難くありません。
そしてそのひとりひとりの気概が近代日本の発展につながっていったのだと考えると、福沢先生マジリスペクトです。これから一万円札を見る目が変わっちゃいますね。福沢先生のような偉大な人間を目指して実学に励みます。
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タケダノリヒロ(@NoReHero)