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心をえぐられる!朝井リョウの小説『何者』。あらすじ・名言・感想

time 2016/06/08

【2017/02/15 更新】

朝井リョウの小説『何者』について。実体験を交えた感想です

卒業式で見た朝井リョウ

直木賞作家、朝井リョウさんを一度だけ見かけたことがあります

大学の卒業式。真新しい11号館2階のラウンジ前で、ダンスサークルの仲間たちと楽しそうに話していました

その中にはぼくの友だちもいて、「そっか、朝井リョウって同じ大学の同じ学年で、友だちの友だちなんだ」と思ったことを今でも覚えてます

当時既に『桐島、部活やめるってよ』でデビューしていて、生協でも店員さんの手書きPOPで「○○学部朝井リョウの話題作!」と売り出されていたし、メディアでも見かけるようになっていたので、「ほんの3m先にいる友だちの友だち」なのに「ものすごく遠い世界の有名人」でもあるという不思議な感覚でした

何者かになりたかった

その頃からずっと「何者」かになりたかった

就活を終えて、卒業して、大企業で働いて、辞めて、アフリカに来て、ぼくは27歳になりました

朝井リョウさんはあの頃からずっと「朝井リョウ」であり、ぼくはまだ何者にもなりきれずにずっとあがいています

小説『何者』あらすじ

そんな、遠い世界の同級生「朝井リョウ」が、ぼくらと同じく就活を経て社会人一年目の2012年に書いた小説『何者』

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたから――。瑞月の留学仲間・理香が拓人たちと同じアパートに住んでいるとわかり、理香と同棲中の隆良を交えた5人は就活対策として集まるようになる。だが、SNSや面接で発する言葉の奥に見え隠れする、本音や自意識が、彼らの関係を次第に変えて……。直木賞受賞作。

引用元:Amazon.co.jp

はじめて、読み終わってから泣いた本です。読んでる途中で泣かされる本はありますけどね

小説『何者』の魅力・感想

楽しかった大学生活に対する懐かしさと、

理想の自分とのギャップを埋めきれない悔しさと、

それでもこうやってあがき続けるしかないんだ、この道で合ってるんだという安堵感

登場人物も設定も、何もかも自分に当てはまりすぎてーー

海外ボランティアや学生団体での活動を誇示する名刺を作って、OB訪問で配りまくる理香

「就活なんて意味が無い。俺は自分の道を生きていく」と、単なる「バイト」を「仕事」と呼び個性派ぶる隆良

大学を辞め、劇団を立ち上げてブログで必死に頑張ってますアピールをするギンジ

ツイッターやインスタグラムで「理想の自分」を作り上げて、必死で「何者」かになろうとあがく彼らを俯瞰的に見て「痛い」と嘲笑う拓人

みんな全部自分でした

絵に描いたような「意識高い系(笑)」の理香も隆良もギンジも、それをバカにしているけど一番中途半端で何者にもなれていない拓人も、全部自分の中にいました

だからこそ心をえぐられました。もう痛いほどに

名前の表記で変身

 ツイッターの自己紹介画面に映っている自分の名前。にのみやたくと@劇団プラネット。劇団の脚本を書いたり役者として舞台に上がるときは、名前をひらがなで表記する。そんなダサいルールを決めたのは、初舞台を踏んだ大学一年生の六月のころだった。
漢字をひらがなにする、たったそれだけのことで何者かになれた日々は、もう遥か昔のことのようだ。

これ、ドキッとしましたー

ぼくもブログを書く時は「タケダノリヒロ」とカタカナ表記にするという、そんなダサいルールを決めてます

分かってます。ダサいって

でも「カタカナにしたらなんとなく『っぽくね?』」と中学二年生のように思ったんです。

ブログに書く自分は、素の自分が背伸びしてギリギリ届くレベルに盛ってるんです

「竹田憲弘」は頑張るのが嫌いだし、飽きっぽいし、臆病です。でも頑張るし、諦めないし、勇気を持った「タケダノリヒロ」をイメージすることで、少しでも理想に近づこうとしてるんです

だからひらがなにして何者かになろうとした「にのみやたくと」の気持ちは痛いほど分かります

登場人物のセリフ・名言

「がんばってます」アピールをするギンジに対して、拓人のセリフ。

 ずっと思ってたんだけど、ギンジ、まだやりきってない段階で「これがんばってます」ってアピールするのやめろよ。脚本書いてたら朝になってたとか、そういうの。そういうことって、公演が全部終わった後に言うことじゃねえの? 誰誰さんと打ち合わせ、とかそういうのだって、公演終わった後に「誰誰さんにアドバイスしていただいて作った公演です」でいいじゃん。ホント、自分のために誰かを利用するのやめろよ。それに、ここ何日間で何冊本読んだとか何作演劇観たとか、そういうことだってどうでもいいんだよ。大事なのは数じゃねえし。あと、演劇界の人脈を広げるっていつも言っているけど、わかるか、ちゃんと生きてるものに通ってるものを「脈」って言うんだよ。お前、なんかいろんな劇団のアフターパーティとか行ってるみたいだけど、そこで知り合った人たちと今でも連絡取ってんのか? いきなり電話とかして会いに行けるのか? それ、ほんとに人「脈」って言えるのかよ。
見てて痛々しいんだよ、お前。

拓人の言葉が刺さります

 打ち合わせとかワークショップとか演出家の人脈とか、それらしい言葉を使ってるだけじゃ何にもなれないんだって。そんなところを誰かに見てもらいたいと思ってるうちは、絶対、何にもなれないんだって。
頭の中にあるうちは、いつだって、何だって、傑作なんだよな。お前はずっと、その中から出られないんだよ。

そしてずっと格好つけていた隆良にも、温厚な瑞月がぶっちゃけます。

十点でも二十点でもいいから、自分の中から出しなよ。自分の中から出さないと、点数さえつかないんだから。これから目指すことをきれいな言葉でアピールするんじゃなくて、これまでやってきたことをみんなに見てもらいなよ。自分とは違う場所を見てる誰かの目線の先に、自分の中のものを置かなきゃ。何度も言うよ。そうでもしないともう、見てもらえないんだよ、私たちは。百点になるまで何かを煮詰めてそれを表現したって、あなたのことをあなたと同じように見ている人はもういないんだって」

この瑞月ちゃんがほんとにいい子。もう好き

そしてそんなギンジや隆良を軽蔑していた拓人に、ついに意識高い系女子の理香が物申します。

「いい加減気づこうよ。私たちは、何者かになんてなれない」
ごくんと、理香さんの喉が鳴った。
俺はそれを見て、自分の喉がカラカラに渇いていることに気がついた。声を生み出そうとしても、焼けたアスファルトのような喉がそれをからめとってしまう。
自分は自分にしかなれない。痛くてカッコ悪い今の自分を、理想の自分に近づけることしかできない。みんなそれをわかってるから、痛くてカッコ悪くたってがんばるんだよ。カッコ悪い姿のままあがくんだよ。だから私だって、カッコ悪い自分のままインターンしたり、海外ボランティアしたり、名刺作ったりするんだよ」
履歴書の写真がなくなったように、理香さんは名刺も切らしたようだ。前見たものとは違う名刺が、テーブルの上に置いてある。 「今の自分がいかにダサくてカッコ悪いかなんて知ってる。海外ボランティアをバカにする大学生や大人が多いことも、学生のくせに名刺なんか持って、って今まで会った大人たちが心の中できっと笑ってることも、わかってる。あんたが鬼の首とったように心の中で指摘してることなんて、指摘される側はとっくの昔にわかってるんだよ」
わかってるんだよ。
理香さんはもう一度、確認するように言った。
「自分が笑われてることだってわかってるのに、名刺作ったりしてるのは何でだと思う?」
理香さんは、歯を食いしばりながら、言葉の続きを絞り出しているように見える。
「それ以外に、私に残された道なんてないからだよ」
唇からではなく、全身から、声が聞こえてきたような気がした。 「ダサくてカッコ悪い自分を理想の自分に近づけることしか、もう私にできることはないんだよ」
鳴っているみたいだ、と俺は思った。
ダサくてカッコ悪い今の自分の姿で、これでもかってくらいに悪あがきするしかないんだよ、もう

「誰に何を言われても、一か月に一度公演をし続けてるなんて、最高にカッコ悪くて最高に正しい姿じゃない。あんたが観察者のまま臨んで失敗した就活に費やしたこの一年間、ギンジくんは十二回も公演をしてたってことだもんね。いくらつまらないって叩かれても、他人に点数をつけてもらうことを絶対にやめなかった。あんたができなかったことを、ギンジくんはずっと実行し続けてる。その真摯さに立ち向かえないあんたを唯一許してくれる場所なんだよね、あの掲示板」

ギンジが叩かれている掲示板を見て安心していた拓人ですが、すべて理香には見通されていました。

悪あがきしよう

一見ただの意識高い系に思えたギンジ。でも格好良いことばっかり言って行動していなかった隆良や、観察者の域を出られなかった拓人と違うのは、どんなに叩かれても実行し続けてきたことです

ダサくてカッコ悪い今の自分の姿で、これでもかってくらいに悪あがきするしかないんだよ、もう

理香の言葉が響きました

ぼくは意思の強い人間ではありません。このブログも何の迷いもなく書いているわけではありません

ギンジのようにがむしゃらになりたいと思っても、常に心の中には「痛いから止めろよ」と諭す拓人もいます

でも、やっぱり理想の自分に近づくためには、安全地帯から出て自分を晒して、悪あがきするしかないんですよね

それを直木賞作家であり、遠い同級生でもある朝井リョウさんに教えてもらいました

思い出す大学・就活時代

主人公の拓人は、クラスメイトの光太郎とルームシェアをしています

ぼくも就活中は高田馬場でルームシェアをしていました。大学からも近かったので、近所の西友で買い出しして友だち呼んで宅飲みもたくさんやったし、拓人たちのように同居人と就活対策をしたりもしました

楽しかったなぁ、まじで…。いまも充分楽しい人生を生きられてますが、少しだけ大学時代に戻りたくなってしまいました

語学クラスのみんな、サークルのみんな、ゼミのみんな、学部のみんな、バイト先のみんな、元気でやってるかな

日本に帰って、お互い何者かになった姿でみんなと会えるのを楽しみにしています。がんばろ

タケダノリヒロ(@NoReHero
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要約『ワーク・シフト』を野原〇ろしが読んだら~専門性を身につける~

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タケダノリヒロ

タケダノリヒロ

1989年生まれ。16年1月より青年海外協力隊としてルワンダで活動中。コミュニティ開発隊員として水問題に取り組みながらブログ更新してます。Africa Quest. comライターとしても執筆中。 ※当ブログ記載内容はJICAおよび青年海外協力隊の見解ではなく、個人の見解です。 [詳細]