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今月末に、日本のとある大学からの依頼でオンラインスタディツアーを行なうことになりました。
これはぼくが日頃から行っている取り組みの一環なんですが、ルワンダの歴史や文化を紹介する学びのあるツアーです。本来であれば現地に来ていただいて、リアルに体感していただくのが一番いいんですけど、今はコロナ禍なのでそれをオンラインで、zoomを通じてお伝えしています。
今回は、ルワンダにある虐殺祈念館のうちの一箇所を訪問します。ルワンダでは1994年に大虐殺(ジェノサイド)と呼ばれる事件が起きました。当時の国民の約1割が亡くなったんですけれども、その悲惨な出来事を伝える施設がこの祈念館です。
この虐殺祈念館、撮影をする際には特別な許可が必要でして、その許可取りにこの1ヶ月ぐらい動いていました。この手続がかなり大変なんですけど、ようやくその許可証が完成したということで、ついさっき受け取りに行ってきました。
ケガをしたのは27年前
そこで手続きを担当してくださったルワンダ人の方が、以前もお世話になった方でした。「前回はどこどこの大学だったよね」って覚えてくださってて、久しぶりだねという話をしたんですね。
彼と挨拶をする時に、普段ルワンダでは握手をしたりとかハグをしたりするんですけど、コロナで接触しないようにグータッチをしました(巨人の原監督がやるやつ)。その時にその方の右手首にサポーターがまかれていることに気づいたんですね。前回はそんなのをしてた記憶がなかったので、最近ケガしたのかなと思って、「その右手、大丈夫ですか?」と聞いてみました。
そしたら「いや、あんまり大丈夫じゃないんだよね。これは最近のケガじゃなくて、1994年の虐殺の時に銃で撃たれたときのものなんだ」と言われました。
これを聞いて、あからさまに戸惑ってしまいました。こういう話はルワンダではよくあることなのに。ぼくはルワンダに4年ほど住んでいますし、虐殺からまだ27年しか経っていないので、30歳以上の人たちはほとんどがこの虐殺というものを経験してきています。ぼくの知り合いでも命からがら逃げ延びた人がいたりするんですけど、彼もそのひとりだったんですね。
やっぱり日常的にそんな悲惨な出来事があったなんて意識する機会は少なくて、いまのルワンダは信じられないぐらい平和なんです。ただぼくの場合は、スタディツアーなどで頻繁に虐殺について自ら説明をしているわけです。
「ルワンダの虐殺の主な原因はツチ族とフツ族の対立でした」「実はその背景には民族う対立だけではなく、先進国の影響もありました」とか。なので日本人の中ではよく調べて、自分なりにいろいろと考えている人間だと思います。ただ、そんな自分でも目の前にいる人から「銃で撃たれたんだ」って急に言われたら、すごく複雑な気持ちになってしまいました。
まず嫌な記憶を思い出させてしまって申し訳ないなという気持ち。軽々と聞いてしまって軽率だったなという反省。それから色々と自分なりに調べたり考えたりしてもやっぱり自分は当事者ではない、よそ者なんだなという気持ち。あらためてそのことの重さを実感しました。
「もう27年」とも言えますが、「まだたった27年」という捉え方の人もきっとたくさんいると思います。当時受けた傷を今でも抱えて、後遺症と闘いながら生きている人たちもたくさんいるんだということを、改めて思い知らされた出来事でした。
許可証をもらって帰ってくる時、そんなことを考えていたら歩きながらなぜか涙が出てきてしまいました。こういう出来事は初めてではないんですけど、やっぱりまだ自分の中でももっと色々考えなきゃいけないなと思いましたし、良いきっかけをもらったかなという気がします。
その男性は「まあ今でも傷はまだ大丈夫ではないけど、ハッピーに暮らしているよ」と言ってくださったんですけど、笑顔と寂しさが入り混じったようななんとも言えない表情をされていました。
ルワンダ虐殺の解説をしていく上では、歴史の流れや政治の闇など俯瞰的な視点が重要になります。でもこうしてひとりの人と向き合って喋るとそんな視点がどうでも良くなる、というと大げさですけど、結局はひとりひとりの人生があって、その人がどういう思いを持って生きているか、っていうことがすごく大事なんですよね。
知らない世界を知るということ
すこし宣伝になりますが、今週の土曜日、8月14日にHIS旅カレッジさんと、ルワンダ虐殺についてのオンラインピーススタディツアーを行います。
ルワンダ虐殺がどういう流れで起きたのか、それを生き延びたルワンダ人が今どういう思いを持って生きているか、ということをお伝えさせていただきます。
この事件は日本人にとっては全然縁がないというか、知らなくても別に問題ないことですが、それでもやっぱりぼくは知ってほしいなと思います。ルワンダの人たちは学校で広島と長崎に原爆が落とされたということを習うので、かなり多くの人がそれについて知ってるんですよね。
でもぼくら日本人はルワンダの悲劇について、ほとんどの人が知りません。知ってどうなるというわけでもありませんが、それでもまず知ることが大切なんです。それによって、こういう世界もあるんだと気付き、さらに自分の可能性もすこし広がる。
「昔、銃で撃たれたんだ」と語る人には日本ではなかなか出会わないですよね。そんな世界があると知ってはいても現実味がないし、そんな人生を生きている人がいるということに思いを馳せることもありません。
同じ世界、同じ時代に、そういう人たちがいるということを、まず知ること。知ることで想像できる範囲が広がり、自分自身も成長できる。そう思っています。今後もルワンダで得た気づきをいろんな媒体で発信していくので、いっしょに考えてもらえたらうれしいです。
ピーススタディツアー
【ルワンダ ピーススタディツアー × HIS旅カレッジ】
ルワンダではヒロシマとナガサキのことがよく知られていますが、ぼくらは世界のことをどれだけ知っているでしょうか?HIS旅カレッジさんで、1994年のルワンダ虐殺について解説します。
・ルワンダ虐殺について学校で習った気がする
・「ツチ族」と「フツ族」、だったっけ?
・そういえば昔、映画『ホテル・ルワンダ』を観たなあ
という方、夏休みの大人の学び直しにぜひ🌍
貴重な当事者インタビューを交えて、ルワンダの光と影をお伝えします。
【日程】8/14(土)18:00-20:00
【料金】2,000円
【内容】
①ルワンダってどんな国?
②ルワンダ虐殺とはなにか?
③いまを生きるルワンダ人の想い〜生存者の声〜
④ルワンダの事例から考える平和
詳細・お申し込み: https://t.co/mc7lgYpByU