音声配信アプリstand.fmからの書き起こし記事です。
どうも!アフリカのルワンダからお送りしています、タケダノリヒロです。2021年3月18日木曜日、『アフリカから世界を学ぶゴリラジオ』、やっていきましょう!
前回アフリカのテクノロジーについて、モバイルマネーというお話をしました。今回も引き続き、ルワンダの最新のテクノロジーについてお話をしていこうと思います。やはり日本人からするとアフリカってあんまり技術が発達してないとか、遅れてるっていうイメージを持たれがちだと思います。でもこちらに住んでいると、意外と進んでいるところとか、むしろ日本よりも便利なんじゃないかと思えるところもたくさんあったりします。そういったところをぜひ知ってもらいたいと思います。
ルワンダ版UBER「MOVE」
今日お伝えするのはルワンダ版UBERとも呼ばれている「MOVE(ムーヴ)」というアプリです。皆さんUBERって使ったことありますか?タクシーではないですけども、一般の人が車を運転して迎えに来てくれるという配車アプリですよね。そのルワンダ版が「MOVE(ムーヴ)」と呼ばれています。
これは Uber とは違ってフォルクスワーゲンが運営しているんですね。フォルクスワーゲン、あの車のメーカーですね。2018年にルワンダにフォルクスワーゲンの組み立て工場ができたんです。そこで作られた車を使っているので、このMOVEで呼ぶ車は全部ほぼ新車、ピカピカのフォルクスワーゲンのかっこいい車が迎えに来てくれるというのがポイントの一つですね。
アプリの使い方としてはほぼほぼUBERと同じです。まずアプリを開くと現在地とそれから自分の周辺にいる車の現在位置が表示されます。そこからピックアップ場所と到着地点を登録するんですね。「今ここにいて、ここまで行きたい」という希望を登録すると、自分の近くにいる車と自動的にマッチングされて、それから車が迎えに来てくれるっていうシステムです。支払いは現金でもできるんですけど、前回お伝えしたモバイルマネーを使ったりすることもできます。あとクレジットカードも確か使えたはずです。
十中八九ドライバーがナビを使えない
このムーブ、結構ぼくも使っていて便利なんですけど、ちょっと問題だなと思うのがドライバーが地図を読めないことなんですね。「どういう事!?」って思いますよね。「地図を読めない」っていうのがぼくらからしたらちょっとよくわからないと思うんですけど、ムーブを運転してる人たちはドライバーなのに地図が読めなくて、そのせいでナビを使えないんですね。
配車アプリの手軽さって何かって言うと、いちいちドライバーさんとコミュニケーションを取らなくても良いこと、いちいち指示しなくても良いことだと思うんです。アプリですでに自分が行きたい場所を指定してあるので、車に乗ったら別に「どこどこに行ってください」とか「こういう行き方をしてください」とか言わなくてもいい。仮にドライバーさんが道を知らなくても、アプリを見ればそれがナビになってるので、もう道案内をする必要がないですよね。
ただルワンダの場合は、ほとんどのドライバーが地図を読めないんです。なのでまず電話がかかってきます。アプリで自分がどこにいるかという情報は表示されてるにも関わらず、「今どこにいるの?」って電話がかかってくるんですね。これがもう、最初は本当に僕イライラしてしまって、「いや、見れば分かるだろ……!」ってずっと思ってたんですけど、どうやら地図の見方が分からないらしい、と。
なので電話がかかってきてどこにいるって聞かれて、結局口頭でそれを答えて、その場所までの行き方も道案内して、着いたらこんどは行き先を告げて、またその道案内をする、っていう。結構手間がかかるというか、もはや普通のタクシーとあんまり変わんないじゃんと思うんですけど、そういう面倒くささがあったりしますね。
最初はね、ちょっとカリカリしちゃったというか、「なんでこんなこともできないんだ」「なんでこんなこともわからないんだ」って思ったんです。でも、それも仕方ないのかなと思うようになりました。というのも、ルワンダではおそらく「地図を読む」「地図を使う」っていう習慣とか教育がなかったんだと思うんですよね。だからその人たちの頭が悪いとかそういうわけではなくて、たまたまそういう機会がなかっただけ。だから大人になっても地図を使うことができないんだって考えたら、決してその人だけの問題ではないですよね。なのでそのドライバーに対してイライラカリカリするのはちょっと違うのかな、という風に思うようになりました。
自分の当たり前はみんなの当たり前じゃない
ここからある意味気づきを得たんですけど、「自分の当たり前はみんなの当たり前じゃない」ということを思いました。逆に僕が知らなくてルワンダの人たちが当たり前に知ってることもたくさんあります。
例えば僕は前にルワンダの農村部に住んでたんですけど、畑がそこらじゅうに広がってて、よくわかんない野菜とかがたくさん植わってるんですね。で僕はその地中に埋まってる野菜の葉っぱだけを見てもそれが何かは分からなかったんですけど、その辺にいるルワンダ人に聞くと大抵「これは豆だよ」とか「これはジャガイモだよ」とか「これは人参だよ」とか何でも分かるんですね。そのルワンダ人からしたら「このアジア人は野菜の名前もわかんねえのか」と思われていたかもしれません。
なので彼らにとっての当たり前は僕の当たり前ではないし、逆に地図を読むというのは僕にとって当たり前のことだったんですけど、ルワンダの多くの人たちにとっては実は当たり前じゃないんだなと、そういう気づきをこのムーブというアプリから得ることができました。なのでこういう便利なアプリもあるんですけど、とはいえやっぱりドライバーが地図を読めなくていちいち道案内をしなきゃいけないのはユーザーとしてはかなり不便な所なので、フォルクスワーゲンからドライバーのみなさんにナビの使い方を教えてもらいたいなと、この1〜2年ぐらいずっと思っているというところでした。
ITの恩恵を受けているのはごく一部
ということで、今日はルワンダでよく使われているMOVEというアプリをご紹介しました。ただ、よく使われてると言ってもこれを使ってるのはまだ僕らみたいな外国人とか、現地の人でお金を持ってる富裕層の人達だけだと思います。あまりお金を持っていない人たちはバイクタクシーですね、モトと呼ばれるバイクの後ろに乗っけてもらう交通手段を使っていて、その方が断然安いんですね。ぼくもタクシーよりはモトの方をよく使っています。もしくはバスや徒歩で移動しています。なので、ルワンダでは経済的な格差を感じるところはたくさんあるんですけど、この交通手段においてもMOVEはまだ一般的に広まってるというよりは、一部の人達だけが使っているっていうところですね。
ルワンダは「IT立国」って呼ばれたりもするんですけど、そのITの恩恵を受けてるのもスマホを持てるぐらいの層の人たちだけっていうことになりますね。なので国全体にテクノロジーが浸透した状態になるまでは、まだ数年かかるかなと現地に住んでいて思います。
この番組『アフリカから世界を学ぶゴリラジオ』では、ルワンダの事例をもとにちょっとためになるお話をお届けしています。今日の放送を聞いて面白いと思ってもらえたら、ぜひフォロー、いいね、コメントなどお願いします!お便りも募集しているので、レター機能を使ってどしどし送ってください。
ここまでのお相手は、タケダノリヒロでした。じゃあまたねー。