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海外法人の日本人向けスタディツアーは旅行業法違反!?~起業準備日記~

タケダノリヒロ()【追記 2018/05/07】

今回の記事は「起業準備日記」です。みんなが得するような情報ではありませんが、これからアフリカで起業するまでの過程やその時々の気持ちを記録していきます。

未来の自分を含めて、この記事に背中を押される人が出てきますように(と言いつつ、今回はほとんど考えを整理するための自分用のメモ)。

スタディツアーは違法!?

さて、私は今年の1月まで、青年海外協力隊としてルワンダで活動していました。夏には同国に戻り、スタディツアーを中心とした事業で起業するつもりです(いま日本では個人事業主という扱い。まだ法人化はしていません)。

日本から大学生や若手社会人などの参加者を募って、村にホームステイをしたり、ボランティア体験をしたり、企業視察をしたり、ルワンダの歴史と文化とビジネスを学べるツアー「START」を考えています(リンク先はデモサイト)。

しかし、いろいろ調べていると懸念点が浮上。それは「旅行業登録をしなければ、ルワンダでのスタディツアーは違法になってしまうのではないか」疑惑。

その疑問を払しょくするため、そしてルワンダツアーにおいてゲストを安心・安全にコーディネートするノウハウを学ぶため、「セーフ・トラベル・セミナー」に参加してきました。

セーフ・トラベル・セミナー

このセミナーはマイチケットという、1982年に設立されたスタディツアーを開催している会社によるもの。

今回で23回目。さまざまなNPO、大学が実施してきたツアーでのトラブルや実体験をもとにした集合知的なセミナーで、回を追うごとに広く深い内容にブラッシュアップされているそうです。

これに参加して、「基礎から学ぶ危機管理(旅行業法、保険、感染症)」「アレルギーをもつ参加者への対応」などを学ぶことができました。

 

結局、どんな立ち位置ならスタツアを開催できる?

このセミナー、ツアー運営に関してド素人である私にとって大変勉強になりました。本当に参加してよかった。

ただ、「旅行業に登録が必要かどうか」という点については、逆に懸念が深まりました。日本の旅行業法では、旅行者に運送や宿泊サービスを提供する業者は各行政組織に登録をする必要があると定められています。

つまり「登録をせずに宿泊の手配をしたりツアープランを販売したら違法」だということです。

「それなら旅行業登録をすればいいじゃん!」と思ったのですが、登録には数百万~数千万円かかることが発覚。これは資本力のある企業じゃないととても無理だ……(だからこそ登録業者にはある程度の信頼が置けるのですが)。

「でも、ルワンダ法人でやるなら日本の旅行業法は関係なくなるのかも(ルワンダの法律が適用される)?」

そんな疑問も湧いて講師に質問をしたり、講義の内容やネットで調べた情報を踏まえたりして、仮に現地法人でツアーを開催した場合の懸念点を考えてみました。

【現地法人でツアーを開催した場合の懸念点】
・旅行者が日本の旅行業法上の保護を受けられない
・ルワンダ法人と言えど、日本人向けに募集されているので日本の旅行業法が適用されてもおかしくない
・旅行業登録していなかったことで、トラブルが悪化する可能性がある

以下、ひとつずつ検証。

旅行者が保護を受けられない

日本旅行業協会のサイトにこんな注意喚起情報がありました。

外国の旅行会社など旅行業登録のない会社のホームページへの申込に注意しましょう。

最近、外国の旅行会社など、旅行業登録のない会社が日本語のホームページで旅行を募集しているケースが見られます。このようなホームページから旅行を申込んだ場合は、旅行業登録のある旅行会社と取引した場合に受けられる法律上の保護を受けることができません

契約に当たっては、旅行業登録のある会社かどうかよく確認してください。

引用:日本旅行業協会

まさにこれをやろうとしている……!

旅行業登録をしていない会社との取引では、(日本の)法律上の保護を受けられませんよ(だから旅行業登録のない会社には気をつけてくださいね)」ということ。

何かあったときに旅行者を守ることができないのは、主催者としては不本意極まりないことです。とは言え、あくまで「日本の法律上の保護を受けられない」というだけなので、ルワンダの旅行業法がしっかりしていればその保護を受けられるかもしれません(しっかりしてるかな……)。

あとは「日本の旅行業法の保護を受けられなくても、海外旅行保険でカバーできるのでは?」とも思っています。

いずれにせよ、「法律上の保護」が何を指すのか、その範囲がどこまでなのか、ルワンダの法律はどうなのか、海外旅行保険と旅行業法の関係性はどうなのか、などまだまだ勉強しないといけなそうです。

現地法人でも日本の旅行業法が適用?

「ルワンダ法人と言えど、日本人が日本人向けに募集しているので日本の旅行業法が適用されるのではないか

これが2つ目の懸念点。確かにそうですよね。日本人が日本語で募集サイトをつくって、日本人向けに提案するのに、「現地法人だから日本の法律は関係ありません」というのはなかなかに苦しい気がします。

セミナー講師にこの点を尋ねたところ、「はっきりしたことは言えませんが、お金のやり取りがどこで発生するかがポイントだと思います」と教えていただきました(あくまで先生個人の見解です)。

なので、たとえばツアー料金の支払いを現地でおこなうならば、日本の旅行業の適用を免れるかもしれません。そうすると参加者が大金を持ち歩く必要がある、クレジットカード払いや銀行振込ができない、事前確約が取れずドタキャンを防げない、などの弊害が出てきますが。。

私が昔参加した海外NGOのツアーも現地で現金支払いで、なおかつサイトには「私たち○○は営利を目的とする旅行会社とは異なり、日本の旅行業法に基づく旅行業約款は一切適応されません」との但し書きがありました。

これでまるまるOKなのか、実はグレーゾーンなのか、もっと調べないと。

旅行業登録なしでトラブルが悪化?

最後の懸念点が、「旅行業登録をしないことで、トラブルが悪化するのではないか」というところ。

セミナーでは「責任の範囲がどこまで及ぶか」が何度か論点として取り上げられていました。

たとえば卵アレルギーを持っていた高校生が卵を食べてしまって現地で発症した場合、責任があるのは食べた本人なのか、それとも引率していた高校教諭なのか、それともツアーを企画した旅行会社なのか。

旅行会社が事前にアレルギーを把握していたかどうか、参加者がそれを申告していたかどうかなどの条件でも変わるそうですが、いずれにせよ旅行業法に照らし合わせることで責任の所在を明確にできるのだとか。

旅行業登録していなかった場合、どこに責任があるのかを旅行業法のルールに則って判断できず、問題が複雑化する恐れがある、と理解しています(不勉強につき間違っているかも)。

ということで、旅行業登録するにはまとまった額の資金が必要で現実的には厳しそうですが、かと言って登録をしないことによるリスク・デメリットも多い、というところまで把握できたという現状です。

いまの気持ちとこれから

「参加者の命を預かることになるし、そんなリスクを抱えてまで自分は本当にこれをやりたいんだろうか……」と一瞬迷ってしまいましたが、これまでスタディツアーの話をブログや講演会でしてきて「ぜひ参加したいです!」と言ってくれた人たちのことを思い出して、やっぱりやりたい、自分がやらなきゃ、という気持ちになっています。

旅行業法に登録するかどうか、しないとしたらそのまま運営して大丈夫なのか、という点については、私が計画しているのと同じように、海外現地法人で日本人向けに企画・手配している旅行会社を見つけたので、そこを参考に進めていくつもりです。

いずれにせよ法に背いたり、参加してくれる方々の安心・安全を損なうような体勢にしたりは絶対にしたくないので、あらゆる可能性を検討して、最高のサービスをつくります。

旅行業法に詳しい方、海外でスタディツアーを実施中の方、そういったことをタケダにやさしく教えてくれそうな方をご存知の方はぜひコメントをお願いします!

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追記・旅行業法違反を指摘された例

【追記 2018/05/07】

日経新聞の記事『自治体の子供向けツアー中止相次ぐ 「旅行業法違反」指摘で 過剰反応との声も』と旅行業法の解説。

  • 川崎市教育委員会が市の小中学生を対象に実施予定だったサマーキャンプを急きょ取りやめに
    • 神奈川県海老名市が主催するバスツアーが市議会で「無登録で不特定多数の参加者を募り、費用を集める行為は旅行業法に触れる恐れがある」と指摘されたため、川崎市も中止に
  • 平塚市も市内の小学5,6年生を対象にした自然体験キャンプを取りやめに
  • 石川県輪島市教委は県内外の小中学生が輪島塗の体験や海水浴をするイベントを催してきたが、匿名の指摘があり、旅行業者への委託を決めた。
  • 旅行業法に詳しい弁護士「イベントに必要な費用のみを集めるなら報酬に当たらない。『事業』は反復継続行為を指すもので年1回であれば違反と言いがたい。過剰反応ではないか」

▼旅行業法 旅行の安全確保や旅行業務の公平性を維持するために1952年に定められた。旅行業を「報酬」を得て一定の行為を行う「事業」と規定。不特定多数の参加者を募って継続的に旅行を企画し、参加費を募れば国や都道府県への登録が必要になる。旅行業者は営業保証金の積み立てなどの消費者保護策の実施が義務づけられている。修学旅行、町内会や職場での旅行など顔見知りの範囲内で旅行をとりまとめる場合は旅行業とみなされず、登録の対象外となる

引用:日経新聞

旅行業法違反とみなされる条件は、

  • 報酬を得て行う一定の行為が反復継続(事業)になっている
  • 顔見知りの範囲を超えている(不特定多数)

と考えられます。

タケダゴロク
 
前途多難だけど、切り拓いていく感じが楽しい!

このワークショップでも「スタディツアーに参加したい」と言ってくれた子たちがいました

中高生15人と国際協力ワークショップ開催!「Twitterってすごい!」@熊本・八代高校

norihiro415:
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