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タケダノリヒロ( @NoReHero)
アフリカ・ルワンダで青年海外協力隊として活動しています。
2年間の隊員生活を終え、これから任地ムシャセクターの家を引き払い、首都のキガリに向かうところです。
そんな任期終了間際に、新たな取り組みを始めました。それが「手作り石けんビジネス」の支援。
目標としていた段階まで無事に到達したので、まとめておきます。
この取り組みを通じて、自分にとっての「支援」とは「スタートラインに立たせること」だと再認識することができました。
ダイジェスト動画(1:10)
【手作り石けんプロジェクト】
「石けんを作りたいけど資金がない」と言うパスカルさん。初期費用だけ渡して材料を買ってもらい、ついに完成!
今日市場で売って、利益を得られたそうです。あとは継続&自立を期待。
「ノリが家族に会えるのは良いことだけどさびしいね」と。帰国前に出会えてよかった。 pic.twitter.com/1K52qte9R3— タケダノリヒロ@アフリカ・ルワンダ (@NoReHero) 2018年1月4日
もくじ
前回までのあらすじ
前回までのあらすじです。
帰国2週間前に新プロジェクト開始!ルワンダの単身赴任パパによる「手作り石けんビジネス」を支援
- 知らないルワンダ人のおじさんが突然家に来る
- 「石けんづくりをしているが資金が足りない。援助してもらえないか?」という頼みだった
- 彼の名前はパスカルさん。西部にいる家族と離れてひとりで暮らしている元教師
- 家を訪問したところ機材や前につくった石けんがあり、話はウソではないことを確認
- 会話を通じて信頼できると感じたため、材料費・機材費として必要だという約4000円(ムシャの平均月収)を援助
- さっそく必要なものを買うから、それを確認するため「また3日後に会おう」と約束
「外国人はお金を持っている」と現地の人から思われがちなので、「援助する妥当性はあるか」「きちんとお金を使うことができるか」がポイントとなります。
一定の信頼と一抹の不安を抱えつつ、3日後にパスカルさんを訪問しました。
こまめに連絡をくれたパスカルさん
会っていない間もパスカルさんは「材料や機材を買ったよ」と連絡をくれていました。
この2年間、こちらから聞かないと大事なことでも報告してくれないルワンダ人が多いという印象を受けていましたが、自らこまめに連絡をくれたパスカルさん。
それだけで「やっぱり信用できそう」と思えました。
石けんづくりを見学
3日ぶりに訪問し、実際に製造の様子を見せてもらいました。
型は木でできた枠が使えなくなったらしく、日干しレンガを床に4つ置いて四角をつくり、そこにビニールを敷いて代用。
苛性ソーダや油を混ぜたドロッとした液体を流し込んで、固まるまで半日ほど待ちます。
続きは翌日。
収支報告までしてくれたパスカルさん
この日の作業が終わって、おもむろに数字の書かれたノートを取り出したパスカルさん。
「もしかして『もっと金くれ』とか言われないかな」とヒヤヒヤ。
しかし違いました。
私が渡した4000円を何に使ったかを、私が見て分かるように記入して報告してくれたんです。
もちろん詳細な報告をしろとか、ノートをつけろとかの指示は一切していません。
そこまで自分で考えてやってもらえるなんて、感動です。
材料はほぼほぼ買えたものの、湿度計が高くて買えなかったこと。
それで余ったお金を使って、私との連絡に必要な携帯電話(SIMカードは持ってたけど端末は持ってなかった)や、記帳のためのノートを買ったことなどを教えてもらいました。
携帯を買うという話は聞いていませんでしたが、連絡が取れなくて困るねという話をしていて、それまでは近所の人に電話を借りていたので、妥当な使い道です。
お金をあげた時点で、石けんづくりに必要なものなら自由に使ってもらって構わないと思っていましたし、使い道が変わったことまで報告してくれたので、何の文句もありません。
追加の援助と、隣人との仲違い?
翌日に訪問すると、昨日型に流したものが固まって石けんらしくなっていました。
あとはこれを切るだけなんですが、そのカッターはこれまで知り合いに借りていたものが使えなくなってしまったようです。
それで「自分のカッターがあれば人に頼らずとも石けんづくりができる」ということだったので、追加で10,000ルワンダ・フラン(約1200円)を援助。
このお金でカッターを買って、石けんを切り出すことで商品は完成となります。そこまで見届けるために、また改めて訪問することにしました。
もう会えないかな……と思いきや
ところがそれ以降、年末年始のバタバタや雨季の悪天候で、パスカルさんの家に行く時間がなかなか取れませんでした。
ムシャを離れるまで予定も詰まっています。「もう会えないかな……またルワンダに帰って来たときかな……」と諦めかけていました。
すると、家を引き揚げる前日である昨日の朝、「いま、ノリの家の前に来てるよ」とパスカルさんから電話が。
なんと完成品の石けんをわざわざ見せに来てくれたんです。
ちゃんと石けんになってる!
泡立ちも良さそう。
先日渡したお金でカッターを買って、無事に石けんづくりの環境が整ったようです。
「これから市場に売りに行く」とのことでした。全部売れたら7000ルワンダ・フラン(約1000円。ムシャの一般的な農家収入の1週間分)の売上になるんだとか。
その日の夜に電話で確認してみると、雨のため全部は売り切れなかったものの、ほとんど売ることができたそうです。
あとはこれを継続してもらって、完全な自立サイクルに乗るのを待つだけ。
次に会うときまで、事業が続いていることを期待しています。
パスカルさんから最後のお願い
石けんを見せてくれた後、パスカルさんからさらなるお願いがありました。
「50,000〜100,000ルワンダ・フラン(6,000〜12,000円)追加でもらえませんか?」
ついに来た……これは今までのお願いとはちょっと違うぞ……。
「でも、もう石けんづくりはできるようになったんだから、商品を売ってお金を稼いで、そのお金でまた作れますよね?」
「たしかに作れるけど、このままだとゆっくりとしか状況を改善できないんです。10万フランはさすがに高いかもしれないけど、5万フランでもあれば、もっと早く改善することができるから」
むーん……。言わんとすることは分かる。
少ない資金でコツコツ作って売ってを繰り返すより、最初にまとまったお金があったほうが効率的なのは間違いない。
でも、それを言ってたらキリがないし、いまの状態から少しづつ改善することが可能なら、追加で支援すると自立を奪うことになりかねないよね……
とは言え断ったことで急に冷たくされたらショックだなあ……もうこれで最後だし、べらぼうに高い金額でもないし、出してあげたほうが丸くおさまるかなあ……
スタートラインに立たせることが、自分なりの支援
などと逡巡した結果ーー
お金は出さないことにしました。
もう製造と販売はできるようになったんだから、あとは自分でなんとかしてくれ、と。
これを言うのは、簡単ではありませんでした。
せっかく仲良くなったし、大した金額じゃないから、相手の要望に沿ってお金を出してあげるほうがラクです。
でも、パスカルさんの説得を聞きながら、自分がやりたい「支援」は「スタートラインに立たせること」かもしれないと思いました。
日本で「社会貢献」というものに興味を持ち始めた頃から「なんとかしなきゃ」と関心をもった問題は、すべて「誰かが『日常』を送れない状態」にあるものばかりでした。
震災の影響で家をなくして仮設住宅で暮らす人々。
子どもの保育園探しに奔走するものの、どこも満員で入れず復職の目処も立たないため、生計が成り立たなくなるという育休中の母親。
学費が足りず高校進学を諦めるルワンダの学生。
自分の家で安心して暮らす、育児と仕事を両立させる、学校に通って自分の才能を伸ばすーー
そんな「日常」すら送れない人を助けること、マイナスの状態にある人を「スタートライン」に立たせることが、私にとっての「社会貢献」だと思っています。
パスカルさんの場合、「自力で石けんを製造・販売できる状態」というスタートラインに立ってもらうことができました。
だから、もう金銭的な援助はしない。あと私がすべきことは、事業を継続させるための経営のアドバイスや心理的なサポートです。
「0から1」にすることが自分の役割であって、「1から100」は本人に任せる。それが自分のやりたいことであり、やるべきこと。
いったん日本に帰りますが、パスカルさんを継続的に応援していくのはもちろん、こんなふうに誰かにとってのスタートラインをつくれるような取組みを生涯を通じて続けていけたらと思っています。
最後に大事なことに気づかせてくれてありがとう、パスカルさん。
出発日にまさかの再訪
そして、ムシャを離れてキガリに引き上げる日。
出発の数時間前、朝に荷物の整理をしているとまたパスカルさんから「いま家の前にいる」と電話が。いつも突然来るね(メリーさんかよ)。
「このタイミングでわざわざ来るってことは、また最後にお金の話かな……」と、めちゃくちゃ警戒して出ました。
そして言われた3つのこと。
「ブログで石けんづくりのことを広めてほしい」(「ブログで石けんづくりのこと書くね」と事前に言ってたので)
「日本に帰ったら、日本での生活の様子など教えてもらいながら連絡を取り続けたい」
「短い間だったけど、出会えてほんとうに感謝している」
パスカルさん……ただの良い人でした。疑ってごめん。
ムシャ生活最後の最後に、ほんとにいい出会いがありました。
次に会うときに石けんづくりが継続していることを期待しています。また会う日まで!
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