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【更新 2020/05/20】
児童文学や童話を大人になったいま読み返し、そこから教訓や新たな発見を得ようというシリーズ「おとなの児童文学入門」。
今回はグリム童話の『ブレーメンの音楽隊』。
そのタイトルやなんとなくのお話は知っていたんですが、原作をちゃんと読んでみてびっくり。なんと、登場する動物たち、「音楽隊」のくせに楽器を演奏しないんです!まじか!それはひどい。
どんなあらすじだったのか、登場人物、担当するはずだった楽器、ブレーメンの街について紹介します。
参考にしたのは、こちらの本。
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もくじ
『ブレーメンの音楽隊』簡単あらすじと解説
ロバの登場
・年老いたロバが主人に捨てられそうになる
・ブレーメンの町を目指して、町の楽隊に雇ってもらおうと逃げ出す
主人公となるのは、年老いて捨てられそうになるロバさん。
彼がブレーメンの町を目指すところから物語ははじまります。
犬の登場
・ロバが歩いていくと、年老いた猟犬と出会う
・役に立たなくなったので、主人は「叩き殺してしまえということになった」
・ロバはブレーメンで一緒に楽隊に雇ってもらおうと誘う
・ロバ「おいらリュウトをひくから、おめえ、カンカラ太鼓をたたくがいい」
こんどは犬が出てきました。また年老いています。
役に立たなくなったので「叩き殺してしまえ」という状況なんだとか。いくらなんでも可哀想すぎます。
そしてロバは謎のべらんめえ口調だということが発覚。
しかもリュウトとカンカラ太鼓(後述)って、チョイスが渋すぎやしませんか。さすがシルバー世代。
ねこの登場
・ふたりが歩いていくと、年老いた猫と出会う
・役に立たなくなったので、主人のかみさんは「いっそ水にはめておしまいよといいだした」
・ロバは猫をブレーメンに誘う
・ロバ「おまえさんは、夜の音楽ならお手のものだろう。町の楽隊につかってもらえるぜ」
こんどは猫が出てきました。また年寄りです。
もしかしたらこれは将来訪れる超高齢化社会を予見したグリム兄弟が、行き場をなくした高齢者たちの悲哀を描くために紡いだ物語であり、「水にはめておしまい」というかみさんは老老介護に疲れ切って犯罪に手を染めてしまう家族のメタファーなのかもしれません(ちがう)
それにしてもロバさん、「夜の音楽」ってなに。なんかエロい。
おんどりとの出会い
・三人が歩いていくと、ありったけの声をふりしぼって叫んでいるおんどりと出会う
・明日にはスープにして食べられてしまうので、「せめて声のだせるうちとおもって、おいら、のどのやぶれるほどわめき立てているんだよ」
・ロバはおんどりもブレーメンに誘う
・ロバ「おめえはいい声しているから、なかまになって音楽をながしてあるけ、いっぱしかせげるぞ」
こんどはおんどりが出てきます。「年老いた」という表記はないので、彼は若いのかもしれません。
しかし、「せめて声のだせるうちとおもって、おいら、のどのやぶれるほどわめき立てているんだよ」って切なすぎやしませんか。
そしておんどりも音楽隊に誘ったロバさん、さっきの猫のあたりから誘い方がアバウトすぎます。
まだ楽器はリュウトとカンカラ太鼓しか出てきてないのに、あとふたりコーラスですか。…それで大丈夫?
どろぼうの家を発見
・ブレーメンまでは1日で着かず、四人は森のなかで野宿することに
・おんどりが遠くに灯を見つけ、歩いて行くと家を発見する
・その家はどろぼうの家で、どろぼうたちがご馳走を飲み食いしていた
・四人は相談して作戦を立て、どろぼうを追っ払うことに
ブレーメンはけっこう遠いんですね。まだたどり着きません。
そこで4人はたまたま見つけたどろぼうの家を乗っ取る計画に出ます。
「年老いた」とか言いながら意外と元気な高齢者パワー、恐ろしい。
どろぼうを追い出す
・家の窓の前で、ろば、犬、猫、おんどりの順に重なる
・いっせいに「音楽をやりだす」
・「ろばはひひんとわめきました。犬はわんわんほえたてました。ねこはにゃおんとなきました。おんどりはこけこっこうと、ときをつくりました」
・それから窓を突き破って部屋に侵入
・どろぼうは怪物が飛び込んできたと思って、驚いて逃げ出す
・四人はゆうゆうとテーブルにつき、食べ物をたらふく詰め込む
いよいよ作戦決行。いっせいに「音楽をやりだす」高齢動物たち。
って言っても、全員鳴いてるだけやん!!!(ひひん、わんわん、にゃおん、こけこっこう)
猫にいたっては「にゃおん」てもはや可愛いのにゃ。
でも「おんどりはこけこっこうと、ときをつくりました」って、なにそのお洒落な表現。「ザ・ワールド!!」を彷彿とさせますね。
どろぼうの反撃・返り討ちに
・たらふく食べた四人はそれぞれいい具合の場所で寝る。
・ろばは外の積み肥の上で、犬は戸のかげで、猫はへっついの上で、おんどりは屋根裏のはりの上で
・どろぼうのおかしらに命じられた手下が、ひとりで家の中に入ってくる
・闇に光っている猫の目玉を炭火と間違えて、いきなりマッチを突っ込む
・猫はどろぼうの顔に飛びついてめったらやたらに引っかく
・どろぼうは裏の戸口から逃げ出そうとするが、そこに寝ていた犬にむこうずねを噛みつかれる
・庭へ出て積み肥のそばを駆け抜けようとすると、ろばに蹴飛ばされる
・この騒ぎで目を覚まされたおんどりが、はりの上からはしゃぎきってキケリッキーと怒鳴る
・どろぼうは命からがら逃げ出し、おかしらに「あの家にはすごい魔物やばけものが入り込んでいる」と伝える
・どろぼうたちは二度とこの家には入ろうとはしなかった
・四人もこの場所が気に入ったので、それなりもうよそへ出て行こうとはしなかった
どろぼうはいったん出ていったものの、下っぱが命じられて様子を見に来ます。
そこからは惨劇です。猫に引っかかれ、犬に噛みつかれ、ロバに蹴飛ばされ、おんどりにキケリッキーと怒鳴られます――
キケリッキー
いる?これ?w
なにはともあれ、どろぼうたちは完全に逃げ出してしまいました。
さあ、いよいよブレーメンに向かうのかなと思いきや、
ところで、ブレーメンの楽隊なかま四人組も、ひどく、ここが気に入ったので、それなりもうよそへ出て行こうとはしませんでした。
おしまい。
…いや、ブレーメン行かないんかい!!!
楽器も演奏してないし、ブレーメンにはたどり着いてすらいないのに「ブレーメンの音楽隊」(※)と名乗るなんて、図々しいにもほどがありゃしませんか。
※この本では「ブレーメンの町楽隊」というタイトルになっている。
こんな感じでツッコミどころ満載の『ブレーメンの音楽隊』原作あらすじでした。
『ブレーメンの音楽隊』教訓
このお話から得られる教訓って、なんでしょうね。
グリム童話なので、子ども向けには「どろぼうみたいに悪いことをすると、後で痛い目を見るよ」という因果応報的な教訓がありそうです。
ただ、大人になったいま読んでみると、登場人物たちがみな年老いて、それぞれ自分の家ではひどい目に遭っていたという点が印象的でした。
そんな状況から、彼らは家を飛び出して音楽隊に入ることを目指し、最終的にはブレーメンにたどり着かないものの、安住の地を見つけます。
これを考えると、たとえいまいる場所が自分にとって居心地が良くなくても、たとえ年老いてしまっても大丈夫。いつからでもどこからでも再スタートはできるし、自分から動いていけば幸せは見つけられるんだよ。というメッセージのように思えてきます。
そして結局はブレーメンにたどり着かず、どろぼうの家で落ち着いちゃうっていうところもいいですよね。
ここでちょっとマンガの引用。
スポーツがまったくダメだった貧弱な高校生が、唯一の長所である俊足を活かしてアメフトに青春を捧げるマンガ『アイシールド21』。
主人公のセナは、子供の頃からの夢である野球を諦めきれないモン太をアメフト部に誘い、こう語ります。
いいシーン……
理想とは違っちゃったけど 今のがもっと楽しい そういうことだってあるよ!
引用元:アイシールド21 第3巻
『ブレーメンの音楽隊』もそう。
動物たちも最初はブレーメンに行くことが理想でしたが、最初の理想よりももっと楽しいものが見つかったんならそれでいいじゃん!という過去に固執しない前向きな生き方が安心感を与えてくれますね。
『ブレーメンの音楽隊』登場人物(動物)と担当楽器
ここで登場人物(動物)を整理しておきましょう。
- ロバ…年寄り。主人に捨てられそうになる。担当予定楽器リュウト。
- 犬…年寄り。主人に叩き殺されそうになる。担当予定楽器カンカラ太鼓。
- 猫…年寄り。主人に水にはめられそうになる。担当予定楽器「夜の音楽」。
- おんどり…唯一のヤング。主人にスープにされそうになる。担当予定楽器たぶん歌。
- どろぼうたち…「ブレーメンの音楽隊」を名乗る謎のシルバー強盗集団に襲われ行方不明に。
ちなみに、リュウト(リュート)はこんな楽器。
カンカラ太鼓はこれ。
渋い。渋すぎる。
思いっきり「和」じゃないですか。
まあこのへんのニュアンスは翻訳によるものなんでしょうね。
ドイツ・ブレーメンの音楽隊記念像
ブレーメンにはたどり着きすらしなかった御一行様ですが、ブレーメンの町は寛大で、彼らの記念像が建立されております。
さんざんディスってますが、憎めない4人への愛情の裏返しなので、ちょっとブレーメンに行ってこの像を見てみたくなってしまいました。
くるり『ブレーメン』
おまけで、大好きなくるりの『ブレーメン』という曲。
公式動画がなかったので、シンガーソングライター集団Goosehouseのカバーで。
歌詞の内容を見ると全体的な意味は判然としませんが、「ブレーメン」は町ではなく人の名前を指しているようです。
まるでおとぎ話のなかのようなやわらかい世界観。
楽隊のメロディー 照らす街の灯
夕暮れの影をかき消して
渡り鳥 少年の故郷目指して飛んでゆけ引用元:ブレーメン/くるり
やさしくて、あったかくて、とってもいい歌です。
以上、”グリム童話『ブレーメンの音楽隊』原作あらすじ・教訓・担当楽器の謎”でした!
『ブレーメンの音楽隊』をAudible(アマゾン運営の朗読サービス)で聴く(1冊目無料!)
タケダノリヒロ(@NoReHero)
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