ルワンダノオト編集長、タケダノリヒロ(@NoReHero)です(←「編集長」って言ってみたかっただけ)。
ルワンダには「One Laptop Per Child(通称OLPC=子どもひとりに1台のラップトップを)」というプロジェクトがあります。先日、近所の小学校を訪れた際、その端末や使用状況を見せてもらったんですが、この素晴らしい取組みも「イマイチ活かされていない」というのが正直な感想です。
OLPCの現状や課題についてのまとめ。
Contents
動画でわかるOLPCの現状@ルワンダの小学校
近所の小学校を訪問して実際に端末を触らせてもらい、先生に話を聞いてきました。ダイジェストを動画にまとめてあります。
【動画の長さ 1:46】
この学校でのラップトップの使用状況
- 端末は200台ほど所有。棚に鍵をかけてしまわれていて、生徒が自由に使うことはできない
- OLPCが科目として独立しているわけではなく、理科の時間に含まれている
- 現状は端末を活用して勉強するというよりは、「コンピューター」というものに触れて慣れる段階
- 教師はおろか、「教師を教えるトレーナーでさえ使い方をよく分かっていない」という声も
OLPCとは?ラップトップ「XO」とソフトウェア「Sugar」
「OLPC(One Laptop Per Child)」とは、ルワンダ独自の政策ではなくマサチューセッツ工科大学のニコラス・ネグロポンテを中心とするNPOの名称。
開発途上国の子どもたちへの、革新的な教育理論にもとづく学習手段の提供が目的。ハードウェアとして「XO」と呼ばれるラップトップを、ソフトウェアとして「Sugar」と呼ばれるユーザインターフェースを開発しました。
XOはその価格の安さから俗に「100ドルパソコン」と言われていますが、どこでも学習できるように高い耐環境性・低消費電力といった特徴を備えています。
OLPC XOでできること
発表されたのは2005年。もう12年も前です。日本でも話題になっていたようで、当時の記事を見つけることができました。
100ドルノートPC「OLPC XO」を試す (1) 「OLPC XO」とは?
学校の先生のレクチャーではこのラップトップで何ができるのかいまいち理解できませんでしたが、この記事によると、
- Squek eToys(描いた絵を自由に動かせる、スクリプト言語をもったお絵かきツール)
- Browse(フラッシュも使える本格的なブラウザ)※ただし訪問した学校にインターネットは通っていない
- Write(ワープロソフト)
- Record(動画、静止画、音を記録できるカメラ)
- Paint(ペイントソフト)
などが使えるそうです。かなり多機能!
ほかにも動画で紹介したように、「Scratch」(プログラミング学習ソフト)や「Wikipedia」、タイピングソフトなども入っていました。エクセルのような表をつくるソフトもありましたが、残念ながら表計算はできず、ただ罫線を引いて数字を入力するだけのようでした。
ルワンダにおけるOLPC
ルワンダでは500ルワンダ・フラン札(およそ60円)にもXOと思しき端末が描かれています。いかにこの取り組みが重視されているかが伺えますね。
OLPCのサイトには、「2011 OLPC Rwanda Report」が掲載されています。
これによると、ルワンダでこのプログラムが始まったのは2007年。2011年までに11万台のラップトップが配備されており、OLPCのフルタイムスタッフは5人、教育省のOLPCコアチームは27人と書いてあります。
いかに少ないメンバーでプロジェクトを進めているか、ということがわかりますね。そこで重要と考えられるのが現地組織の育成。OLPCは持続性をもたせるために、現地組織とパートナーシップを組んでサポートをおこなっています。
このレポートにパートナーとして記載されているのは、下記のNGOや教育機関。
- Rwandan Education NGO Coordination Platform (RENCP)
- 情報、知識、経験をシェアする教育系NGOのグループ。教育政策やカリキュラム開発にかかわる。
- Volunteer Service Overseas(VSO)
- 世界最大のボランティア派遣団体。OLPCとパートナーシップを結び、学校カリキュラム用のレッスンプランを策定。
- Kigali Rotary Club
- OLPCとルワンダ初の公共図書館を建設&デジタル化。
- 教育機関
- OLPCルワンダは、Kigali Institute of Education(KIE)や Kigali Institute Science and Technology(KIST)、 the National University of Rwanda’s Centre of Instructional Technology and the Technical and Vocational Schools’ Association (TEVSA)と、草の根ネットワークを深めるため大学生と協働している。OLPCの哲学や、テクノロジー統合型教室のサポート方法、ローカライズされた活動の修復と開発方法についてのワークショップを開催。
- その他の組織
- International Education Exchange – 英語ワークショップの開発
- Carnegie Mellon University – 2つの学校にワークショップを実施
- Search for Common Ground and Environmental Systems Research Institute (ESRI) – プロジェクトへのローカライズされたアクティビティを開発
この資料は2011年のものなので、現在は状況が変わっている可能性が高いですが、この資料から「現場で教師や生徒に指導している」とはっきりわかるのはカーネギーメロン大学くらいですね。
小学校を訪れて感じた、「せっかくのラップトップが十分活かされていない」という「宝の持ち腐れ感」。資源はあるのに使いこなせる人がいないし、教えてもらう機会も全然足りてない。
ルワンダでプロジェクトが始まって10年。このレポートが作成されてから6年が経ちますが、いまなお現場がこの状態では、この先何年経とうが何も変わらないのではないか、という印象さえ抱いてしまいます。
パソコン教室開催?
動画で紹介した学校の先生からは、前々から「パソコンの使い方を先生や生徒に教えてくれないか?」と言われていました。
ぼくはてっきり「学校で習うパソコンの使い方=エクセルやパワーポイント」だと思っていたので「学校にPCはないし、自分のPC1台だけじゃどうにもならないし…」と諦めていたんですが、どうやらこのXOのことだったようです。
現場を見る限り決して上手くいっているとは言えないOLPCですが、子どもたちの未来を切り開く可能性は大いにあると思っています。
日常生活で農村部の子どもたちが触れられる電子機器は、ラジオやガラケーくらい(スマホですらない)。
そんな子どもたちがXOを通じてITへの興味を深め、「デジタルツールは眺めるものじゃなくて、使いこなすものなんだ」「情報は受け取るだけじゃなくて、生み出すことができるんだ」ということを無意識にでも感じ取ってくれれば、この国はもっともっと変わっていく。
そんな現場の課題と可能性を実感したので、改めて学校の先生に声をかけてIT教育を手伝わせてもらおうと思っています。
端末を借りて研究すれば、少なくとも現場の先生たちよりはうまく使いこなせるようになるはず。このOLPCという取り組み、このまま終わらせるにはあまりにももったいない。まずは近所の学校で、できることから初めてみます。
ルワンダの小学校でIT教育!現状と課題【OLPC】~Write 編~
ルワンダでIT教育!100ドルPCでなにが学べる?Scratch, Turtle Art…【OLPC】
タケダノリヒロ(@NoReHero)