IT立国を目指すルワンダ、最先端モビリティサービス普及を阻む壁

アフリカのルワンダでスタディツアーや情報発信をしながら、国際協力機関でも働いています、タケダノリヒロ(@NoReHero)です。

東アフリカの内陸国ルワンダは「IT立国」を目指しています。ドローンの活用やキャッシュレス化の普及、IT教育などがよく取り沙汰されますが、なかなかうまくいかない事例も。そのひとつが、モトへのスマートメーターの導入

モトってなに?

まず前提として、「モト」とは「バイクタクシー」のこと。バイクタクシーとは、バイクに二人乗りをして運転手にお金を払い、目的地まで連れて行ってもらえるサービスです。ルワンダではバスとならんで、もっとも一般的な交通手段のひとつ。

ときにはニワトリを抱えてモトに乗る人の姿も

このモトは、もともと料金交渉制。ドライバーとの話し合いで値段が決まるため、交渉するのが面倒、不当に高く請求されることがあるというデメリットがありました(とは言えルワンダで大金をぼったくられることは稀です)。

スマートメーターの再導入

そんな支払いにおけるデメリット解消のため、導入されたのがスマートメーターです。これは距離に応じて料金が自動計算されるので、交渉の必要も、ぼったくられる可能性もありません。バイクのハンドルあたりに設置された専用のスマホによって機能しています。

モトに取り付けられたスマートメーター

2022年1月7日から、首都キガリを拠点とする全運転手はこのスマートメーターなしでは運行不可になり、街のモトに一斉にスマホが取り付けられました。でもこの風景はそんなに目新しいものではありません。なぜなら、この取組は数年前にすでにいちど失敗していたから(たしか2018年ごろ)。スマホを取り付けるためのスタンドだけが、ハンドルにむなしく鎮座しているバイクもよく見かけたものです。

前回の失敗理由は、運賃が高すぎたから。乗客から苦情が来たらしく、結局あっという間に廃れてしまいました。そんな反省を受けての、今回の再挑戦。今度こそきちんと普及するかな、と期待をもって見ていました。実際、街なかを走るモトのほとんどにスマホが復活している様子が見受けられたほど。

ところが、施行開始から1〜2週間で早くもメーターが使われなくなったのです。その最大の理由は、運賃が安すぎたから。前回の反省を踏まえて料金改定がおこなわれ、最初の2kmは300ルワンダ・フラン(約33円)で、それ以降1kmあたり133ルワンダ・フラン(約15円)だったのが107ルワンダ・フラン(約12円)に下がりました。

ところがこの値段はドライバーにとっては安すぎたのです。たとえばそれまでの交渉で500フラン(約55円)払っていたルートが、メーターを使うと初乗り運賃の300フラン(約33円)でたどり着けてしまうことも。

しかも売上が下がってしまうだけでなく、スマートメーターを運営しているYego Innovision社からも手数料を引かれてしまうらしいので、ドライバーの手元に残る額はもっと少なくなってしまうんですね。

そんな状況を察したのか、それからすぐにどのドライバーも「いまはネットワークの調子が悪くてメーターが使えない」と言ってメーターを使わなくなってしまいました。

スマートメーターの再々導入

しかししかし、さらに2ヶ月ほど経った2022年3月8日現在、ふたたびモトのハンドルにスマートメーターが復活してきています。

前回300フラン(約33円)だった初乗り運賃が、400フラン(約44円)に値上げされたようです。実際に、いままで交渉して500フラン(約55円)払っていたルートを、ほぼ同じ値段でたどり着けたという例も聞くので、これまでの相場とほぼ同額になっています。これならドライバーからの反発もすくなくなりそうですね。

このように、国民の所得が低いルワンダのような国では、「三方良し」の成立が非常に難しいということを実感できる事例でした。誰でも気軽に利用できるよう値段を下げてしまうと、運営会社やドライバーが利益を確保するのが難しくなってしまうのです。

さらに料金の問題がクリアできても、インターネットの接続が途切れてしまったり、端末が動かなくなってしまうケースもあるようなので、まだまだ円滑に運営されるには課題が残っています。

IT立国を目指すルワンダで、ハイテクなモビリティ・サービスが定着していくかどうか、要注目です。

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