タケダノリヒロ( @NoReHero)
主催しているスタディツアーでルワンダ人女性と話していたとき、参加者から「学校でいじめはありますか?」という質問が出ました。
それに対するルワンダ人の返答はこう。
「ないですよ。むしろ、なんでいじめが起きるんですか?」
たしかにルワンダではいじめの話を聞いたことがない。
いじめって、なんで起きるんだろう。
もくじ
いじめは日本特有のものではない
最近では学校の先生による同僚へのいじめがニュースになっているように、日本のいじめは深刻だというイメージがありますよね。
では、海外ではいじめは存在せず、日本特有のものなのでしょうか?
結論から言うと、世界中にいじめはあるようです。
2018年のユニセフの報告では、
世界の13歳から15歳の生徒の3人に1人以上が、いじめられたことがあり、ほぼ同じ割合が腕力を伴うけんかをしたことがある(122カ国のデータ。日本は含まれていない)
とされています。
また、いじめにあった割合を国別にランキング化したデータでは、以下のような結果に。
順位 | 国名 | 割合 |
1位 | リトアニア | 53.6 |
2位 | ラトビア | 46.1 |
3位 | ルーマニア | 41.0 |
4位 | エストニア | 40.3 |
4位 | オーストリア | 40.3 |
6位 | ポルトガル | 38.3 |
7位 | ベルギー | 37.7 |
8位 | スイス | 36.1 |
9位 | カナダ | 34.9 |
10位 | フランス | 34.0 |
19位 | 日本 | 27.4 |
引用元:日本は何位?世界のいじめが多い国ランキング │ ソクトピ
日本は30カ国中19番目にいじめが多いという結果なので、他国と比べたら意外とすくないのかもしれません。
それでも4人に1人以上はいじめにあっていると考えると、決して看過できるものではありませんが。
アフリカには「逃げ場」がある
世界中にいじめはある。ではなぜルワンダではあまりいじめの話を聞かないのでしょうか?実はアフリカにはいじめはないのでしょうか?
事例を調べていたら、「朝日新聞GLOBE+」に興味深い記事が掲載されていました。
立命館大学国際関係学部教授で、元毎日新聞社ジャーナリストの白戸圭一さんが書いたものです。
アフリカのコンゴ民主共和国出身男性の話で、彼は子どものころ地方から首都の小学校に転向したときに「田舎者」とからかわれ、いじめの対象になったのだとか。
やっぱりアフリカにもいじめはあるんですね。
ただ、彼はいじめにあったときの心境を「そんなに苦にはなりませんでした」と語っています。
学校は授業を受ける場だと割り切っていたので、そんなに苦にはなりませんでした。学校がどうしても嫌なら、行かなければいいだけの話でした。それに、家に帰ると、親戚の子供や、違う学校に行っている近所の子供がたくさんいるので、彼らと遊んでいました。それからコンゴでは、家庭の事情で子供の進級が遅れることは普通です。だから6年生のクラスには12歳、13歳、14歳と、いろいろな年齢の子供がいます。年下の子が悪いことをすると、年上の子が叱ったりすることもあります。あれは、いじめがひどくなるのを防いでいたと思います。日本の子供は一度いじめられると、逃げ場がないのではないですか
これを読むと、たしかにコンゴ民にもいじめは存在するものの、すくなくともこの例ではそこまで深刻な問題にならなかったことがうかがえます。
日本とアフリカのいじめの違い
おそらくアフリカにもいじめはあるものの、ほかの地域よりも深刻化しづらい、だからルワンダでもいじめがほとんどないように思える、ということではないでしょうか。
先程のコンゴ民出身の男性の話は、ぼくの住むルワンダとも共通するものでした。ここから、アフリカと日本の学校や社会との違いを比べてみましょう。
・【アフリカ】学校が嫌なら行かなければいい⇔【日本】嫌でも学校に行かされることも多い
・【アフリカ】家では親戚の子どもや近所の子どもと遊ぶ⇔【日本】同じ学校の友だち以外と遊ぶ機会がすくない
・【アフリカ】同学年にいろんな年齢の子どもがおり、年下の子を年上の子が叱ることも⇔【日本】基本的に同学年には同い年しかいない
日本の子どもたちの特徴としては、学校が暮らしや人生の中心になりがちであること、交友関係の多様性が低いことが挙げられますね。
この記事の著者・白戸さんはアフリカ各地では「子供が教会や地域社会を核とする交友関係を持ち、異なる年齢の友達と遊んでいる光景が目立つ」と書いています。
これはルワンダに3年間住んでいるぼくも、とても同意できるものです。
特にルワンダでは熱心なキリスト教徒が多く、教会に足繁く通っている方が驚くほど多いです。
そして教会は単にお祈りをするだけの場所ではなく、大人も子どもも近所の人たちとおしゃべりをしたり、歌やダンスの練習をしたりする交流の場となっています。
コンゴ民出身の男性は「日本の子供は一度いじめられると、逃げ場がないのではないですか」と言っていましたが、アフリカでは学校だけでなく、教会や近所づきあいのなかでコミュニティを複数もつことができるため、仮にいじめにあったとしても「逃げ場」をつくることができるのかもしれません。
フィリピンでは「仲間」と「おしゃべり」が奏功
今度はフィリピンの事例です。
世界保健機関(WHO)の2012年のデータによると、フィリピンは10万人中2.9人しか自殺しない(日本は18.5人)そうです。
開発メディア「ganas」の『いじめを減らす、フィリピンの助けあい精神』という記事では、フィリピンでいじめが自殺に発展しづらい理由が①バルカーダ(仲間)を大事にするから、②フィリピン人は話し好きでいろいろなことを友だちや家族に相談するから、と書かれていました。
身長が低くてクラスメートにバカにされ引きこもりになったこともあった子どもは、仲間に愚痴を聞いてもらったり、ストレス発散のために一緒に遊んでもらったり、いじめっ子を説得してもらったりしたそうです。
また、子どもから相談を受けて転校させたことで問題が改善したという母親のエピソードも載っています。
日本の場合は、ともすればクラスメート全員がいじめの加害者や傍観者になってしまって仲間がいなくなってしまったり、なんとなく家族にも相談できなくて事態が深刻化してしまうというケースが多そうですよね。
日本でもフィリピンの事例のように、率先して仲間を守ったり、家族に気軽に相談したりできる風潮が広まればいいのですが。
まとめ:いじめを減らす3ポイント
まとめると、いじめは世界中にあること、ただし途上国(アフリカやフィリピン)では問題が深刻化することが少ないということがわかりました。
ではどうすればいじめを減らすことができるのでしょうか。以上の事例からは、3つの教訓を得られます。
[aside type=”boader”]
- 学校外のコミュニティをつくる
- 助け合える仲間をつくる
- 家族・友人と相談できる関係性をもつ
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アフリカやフィリピンのケースから、日本でもこういった点を見習っていきたいですね。
おまけ
ぼくがよく聞いているメンタリストDaigoさんのYouTube。
「子どもを侮辱する親のもとで育つといじめにかかわる(いじめる・いじめられる)可能性が高まる」という研究についてのお話です。
家での育て方が学校でのいじめに関係してくるなんてびっくりですよね。しかもいじめっ子にもいじめられっ子にもなる可能性が高まるというからさらに驚き。興味があればぜひチェックしてみてください!