タケダノリヒロ( @NoReHero)
テック系オピニオンメディアThe Startupを運営している梅木雄平さんが「TheStartupの読者でこの本が刺さらない人は、もう一切TheStartupは読まないでくれというくらいに、ビジネスディベロップメントについてわかりやすい解説されています」と猛プッシュしていた本、『リクルートのすごい構”創”力』。
読んでみました。
じゃらん、SUUMO、ゼクシィ、ホットペッパー…数え上げれば枚挙にいとまがないリクルートの事業ですが、これらを生み育てる「リクルート式」の手法が、ほかの企業や業界でも応用できる形で紹介されています。
著者はリクルートのコンサルティングを長年勤めていたBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)日本代表の杉田浩章さん。
本書で紹介されている「9つのメソッド」が自分の仕事にも役立ちそうだったので、ネタバレで営業妨害にならない程度にまとめておきます。
9つのメソッドとはなにかと、特にメソッド①の「不の発見」について。
3つのステージと9つのメソッド
リクルートのビジネスは「3つのステージと9つのメソッド」から生まれています。
画像出典:リクルートのすごい構”創”力
1つ目は「世の中の不をアイデアへ」というステージ。
ステージ1
メソッド① 不の発見
・あるべき社会の実現につながる、潜在的な「不」を探す
・「不」を生んでいる産業構造の暗黙のルールを突きとめる
・「不」を解決するための、新たなお金の流れを見つけ出すメソッド② テストマーケティング
・本当に人の心を動かす事業アイデアなのかを検証する
・顧客がお金を払ってでも解決したい課題なのかを検証する
・検証を段階的に設計し、規模を拡大しながら次へ進めるメソッド③ New RING(インキュベーション)
・ボトムアップによる新規事業の起案を称賛する
・アイデアを事業へとブラッシュアップし、軌道に乗せる
・起案者の「志」を尊重し、実現への覚悟を問い続ける
ゼロから1を生み出し、ビジネスの種を発見するこのステージ。つまり、「世の中にまだ存在していないモデルを生み出すステージ」です。
ステージ2は、「勝ち筋を見つける」「1→10前半」のステップ。
ステージ2
メソッド④ マネタイズ設計
・誰が、なぜ、いくらで、どの予算で、買ってくれるかを突きとめる
・ユーザーの行動、顧客の売上、自社の活動を方程式でつなぎ込む
・市場を継続的に成長させることができる、お金の流れを作り出すメソッド⑤ 価値KPI
・事業の価値を上げるカギとなる指標を、顧客の評価から探し出す
・価値KPIへの因果関係の高い、実際の行動を探り出す
・全員での高速なPDSによって、指標と行動の仮説を変更し続けるメソッド⑥ ぐるぐる図
・現場からの市場変化の兆しを経営へとつなぎ、縦の知恵を回す
・異なる役割の人材が並行して洞察を加え合い、横の知恵を回す
・現場に勝ち筋への兆しがなければ、潔く撤退の決断を下す
このステージで、単なるアイデアが「事業」へと成長していきます。
そしてステージ2で発見された勝ち筋やKPIを実行して、「爆発的な拡大再生産」につなげるのが、「1→10後半」にあたるステージ3。
ステージ3
メソッド⑦ 価値マネ
・KPIによって目標の優先順位を絞り込み、意識と行動を集中させる
・PDSを日常の活動に組み込み、「なぜ」をマネジメントする
・価値マネの結果を、現場の「型化」と、サービスの「改善」に活かすメソッド⑧ 型化とナレッジ共有
・成功事例を生み出した行動を分析し、「型化」して組織へ横展開する
・「型」は活用例を共有することで理解を深め、一気に全体展開する
・「型」は均一化が目的ではなく、「型」を超えた次への挑戦につなぐメソッド⑨ 小さなS字を積み重ねる
・現場の情報からいち早く、成長の減速を捉え、次の一手へ進める
・改善をスピーディーに試し続け、大きな変革の「てこ」を見つける
・できない理由を突き詰めることから、できるための資源を考える
事業が「10」のレベルに到達しても改善を重ね、変革を続ける。これがリクルート事業の寿命の長さの秘訣だと。
不の発見
自分にとってもっとも印象的だったのが、メソッド①の「不の発見」。
あ、ちなみにここからはメソッド①についてまとめてますが、半分は個人的な感想になるので、新規ビジネスを成功させる秘訣を知りたい方は私の文章などは放っておいて本書を読んでください。
私と同じように「起業したいけど、その種をどうやって見つけたらいいかわからない」という方には共感していただけるかもしれません。
私はいまアフリカのルワンダで青年海外協力隊として活動しています。
もともと「社会貢献」や「ソーシャルビジネス」になんとなく「カッコいい!」という漠然とした憧れを持っていて、さまざまな社会問題の現場である途上国で生活してみたい、そこの住民と一緒に働いてみたいというのがアフリカに来た動機でした。
この経験を通じて、自分が熱狂しながら取り組める社会的な課題が見つかるのではないか、その解決を自分の仕事にできればこれほど幸せなことはないんじゃないかと。
そう思って1年半ほど過ごしてきたんですが、「これ!」っていうものはそう簡単には見つからないんですよね。
いかんせん自分は飽き性なので、「これ!」って思って始めてみても、寝て起きたら「あれ、なんか違うかも…」って気が変わることが往々にしてあります。
たぶん「起業する」だけなら簡単にできます(やったこともないのにこんなこと言うのもアレですが)。
でもそれを利益の出るものにできるのか、そしてなにより自分自身が納得してハマれるものにできるかが問題なんだと思います。
そこで「そうか!」と非常にスッキリ感を与えてくれたのが、本書のメソッド①である「不の発見」という考え方。
リクルートにおける「不」とは、「不便」「不満」「不安」など、あらゆるネガティブな概念の象徴。消費者、企業・事業者、産業や社会などに、大きな「不」が存在するのであれば、それを解消するためのイノベーションが求められ、その実現にはビジネスチャンスがあるという発想だ。
これこれこれ!まさに自分がもやもやと考えてきたこと、「ルワンダに足りないものってなんだろう」「ルワンダの人たちが求めてるものってなんだろう」「ルワンダにあったら便利になるものってなんだろう」は「不便」「不満」「不安」という言葉で表現できるんだ!とめちゃくちゃスッキリしました。
これを突き詰めていけば自分自身「なんとかしたい」と思えること、使命感をもって取り組めることが見つかるかもしれません。
不をブラッシュアップする3つの条件
では、どうやってその「不」をブラッシュアップしていけばいいのかというと、リクルートでは3つの条件があるそうです。
まず1つ目。
見過ごしがちだが誰も目をつけていなかった「不」かどうか
潜在している「不」こそが、ビジネスの源となるんですね。
2つ目が
その「不」は、本当に世の中が解決を求めているものなのか。既存の産業構造を変えるほどの、大きな可能性を秘めているのか
これを見極めるためには、ひとつの領域を広く上流から下流まで見渡すことが必要です。
3つ目が
その「不」を解消することが、収益につながるかどうか
この「不」の解消によって、どれくらいの売上規模が見込めるか、その売上は誰のどの財布から生まれるか、という仮説を立て検証を繰り返す必要があります。
こういった「不」の解消から生まれた事業例のひとつとして挙げられているのが「スタディサプリ」です。
「予備校に通いたいけれど通えない」「年間何十万円もの授業料は払えない」といった家計難に悩む高校生やその親たちの「教育環境格差」を解消するために、月額980円で質の高い講座をオンラインで受講できるこのサービスが生まれました。
こんなふうにビジネスを通じて社会的な課題を解決する人やサービスってものすごくクールですよね。
青臭い変革への意志
本書には
「社会問題を解決する」というある種青臭いともいえる変革への意志が、事業立ち上げの根幹をなすと言えるだろう
という言葉がありました。
アフリカに来て、農村に住みながら1年半ボランティアをやってきて、「社会問題を解決する」という青臭い気持ちだけでは何の役にも立たないということを身にしみて実感しています。
でもその意志なくしては中途半端な事業で終わってしまうんですね。
とことん「不」を探しながら、できることからちょちょこ試して、残り半年のルワンダ生活楽しみます。とにかくやってみよう。
タケダノリヒロ(@NoReHero)
つぎのページへ!
『モバイルボヘミアン』本田直之&四角大輔 要約・感想~旅するように働き、生きるには~[:]