【更新 2018/01/31】 タケダノリヒロ( @NoReHero)
ジャズをテーマにした音楽マンガ『BLUE GIANT(ブルージャイアント)』。
はじめて読んだ時は途中から涙と鼻水が止まらなくて、第一章の全10巻を読み終わるまでティッシュが手放せませんでした(花粉症ではない)。
すでに読んだ方におかれましては、映画を観終わった後に「あのシーンが良かったよね」と友だちと感想を語り合うような感覚で読んでいただければ幸いです。
まだ読んでない方は、途中からネタバレ注意。
見どころと、本作に登場するジャズの名曲を紹介しています。
漫画『ブルージャイアント』あらすじ
主人公は宮本大。
友人に連れて行ってもらったジャズの演奏に打ちのめされ、世界一のジャズプレーヤーを目指してサックスをはじめます。
このマンガの面白いところは、すでに結末が分かっていること。つまり、大は間違いなく世界一のプレーヤーになるんです。
なぜそれが分かるかというと、毎巻末に「BONUS TRACK」として数年後の家族や知人たちのインタビューが描かれているんです。
子どものころはどうだったとか、サックスをはじめたときはどうだったとか、海外を飛び回っているとか――
結末が分かっていてもワクワクできるのは、彼が挫折を繰り返しながら成長していくから。
はじめてのライブで、大はお客さんから「うるさいんだよ!」と言われ、ステージから降ろされてしまいます。
こんなこと言われたら心折れますよ、ふつう。。。
もちろん大も最初はショックを受けますが、練習を重ね、このおじさんの前でふたたびステージに立ちます。
「練習を重ねる」と言っても、大の練習量は半端じゃありません。
Tシャツが汗で重くなるほど暑い日も、雪で身体が埋まりそうなほど寒い日も、広瀬川(初期の舞台は仙台)のほとりに立ってたったひとりで練習を重ねます。
「世界一」という無謀とも思える目標を信じて疑わず、ひたむきに努力する姿に胸を打たれるんですね。
「ブルージャイアント」とは
タイトルになっている「ブルージャイアント」とは、「あまりに高温なため赤を通りこし、青く光る巨星、青色巨星」のことです。
大の師匠となる由井が、若い頃仲間うちで世界一輝くジャズプレーヤーのことを「ブルージャイアント」と呼んでいたことに由来します。
この漫画は、大が「ブルージャイアント」になるまでの物語です。
ブルージャイアント おもな登場人物
※ところどころネタバレあり。この記事を読んだ後でも本作は十分楽しめますが、ご留意ください。
宮本大(みやもと だい)
主人公・大の魅力は、夢を口にすることを恐れず、まっすぐに突き進んでいくところ。
「音楽の世界でやっていける根拠はなんだ」と友人に問われ、大は「そういうのは毎日自分で作るんだ」と答えます。
夢を語るのはとても怖いことです。
ふつうなら「否定されたらどうしよう」「笑われたらどうしよう」と不安になってしまいますが、大にはそれがありません。
その意志の強さに憧れ、惹きつけられるんですね。
また、口先だけでなく、努力を惜しまないからこそ、まわりの人間もどんどん感化されていきます。
沢辺雪祈(さわべ ゆきのり)
大の周囲の人たちも、スピンオフで主役にしてほしいぐらい魅力的なキャラクターばかりです。
大と同い年の天才ピアニスト、沢辺雪祈。
一見すると、イケメンで背が高くて女性にモテて自信家で人を見下したような態度を取る、とにかくいけ好かないヤツです。
しかし実は安アパートに住みながら肉体労働のバイトをして、そのお金はすべて音楽につぎ込むという相当な努力家で、「大事なことは一番お世話になっている人に伝えるのがスジ」という義理堅さや繊細さを併せ持っています。
一番好きなシーンが、日本一のジャズバー「ソーブルー」の平さんに人間性について厳しくダメ出しされた後。
急いでいたとは言え、サインを求めてきたお客さんを軽くあしらってしまったことを後悔し、なんとか彼を見つけ出しました。
深夜のバイトが終わって、早朝に彼の店が開くのを待ち、数日遅れでサインを渡します。
「もっと良い音楽を多くの人に届けたい」という彼の素直な人間性が垣間見えますね。
玉田俊二(たまだ しゅんじ)
最初はただのチャラいサッカー部員だった玉田。
卒業後は東京の大学に進学し、上京してきた大は彼の家に居候することに。
脇役で終わるかなと思っていたら、なんと大にリズム感を買われ、ドラマーとして大と雪祈とともにバンド「JASS」を結成することに。
ふたりの天才に感化され、劣等感を感じながらも努力を重ねメキメキと上達します。
読者としては、凡人である彼の苦悩と向上心にもっとも感情移入しやすいかもしれませんね。
なので、大と雪祈が観客から褒めそやされるなかで、彼が「ボクは君のドラムを、成長する君のドラムを聴きに来ているんだ」とはじめてお客さんに認められるシーンとか号泣ものです。
がんばれ、玉田。
ブルージャイアント 突き動かされる周囲の人々
真摯にジャズと向き合う若者たちを見て、ある人は彼らの背中を押し、ある人は自らが突き動かされていきます。
宮本雅之
高校卒業後、初任給でファミレスで大と彩花に豪華な食事をおごり、残りの金と合わせた36回ローンで楽器屋で「一番いい」サックス(51万6千円)をプレゼントした大の兄・雅之。
パンパン「チョロいもんですな!!」…かっけー!!
黒木先生
ふだんは地味だけど、全校生徒の名前と部活を覚えているほど生徒思いな音楽の黒木先生。
文化祭で大と校歌のジャズバージョンをセッションして覚醒w
後に、大のサインを受け取った世界で最初の人物となります。
由井
大のおかげでまた少しだけジャズが好きになったという、師匠の由井。
由井さん、渋いんですよねー…。
川喜田元
プロジャズギタリストの川喜田さん。
雪祈にオファーを断られ改めて偵察に来たものの、彼らの圧倒的な才能を前に居ても立ってもいられなくなります。飛び入りを決め、このひとこと。
この潔さ。年齢を重ねても素直に若い才能を受け入れ、勝負を挑む姿がかっこいい。
ザ・ファイブ
ずっとくすぶり続けているおじさんバンド「ザ・ファイブ」も、大の言葉に奮い立たされます。
「ゴールがない世界でずっとやり続けられるなんて、最高に幸せじゃないすか。」
この後のおじさんたちの演奏は、全然違って聴こえました(聴こえないけど聴こえる気がする)。
JASS最後の演奏
10巻でのJASSの演奏に、観客はこの表情。なぜこうなったかは最大のネタバレになっちゃうので、ぜひ10巻を読んでください。
10巻はもうずっと泣きっぱなしです。。
クリス・ヴェーバー
10巻で日本編が終了し、続編『BLUE GIANT SUPREME』から大はドイツ・ミュンヘンに旅立ちます。
演奏すらさせてもらえず人種の壁を感じる大を、必死で手伝ってくれる初対面のクリス。
「なぜそんなに優しくしてくれるのか」という大の問いに対して、クリスのひとこと。
クリス……!!初対面とは言え、大の言動に彼もなにか感じるものがあったんでしょう。
こんな人間関係を見て、我々読者も一歩前に踏み出そうという気持ちにさせられますね。
演奏シーン
このマンガの最大の魅力は何と言っても演奏シーン。
大、雪祈、玉田らが演奏の中で自分の殻を破り成長していく姿がたまりません。
それを見てお客さんやほかのジャズマンたちも心を震わせ、感化されていきます。
ステキなシーンはたくさんありますが、特に好きなところだけ紹介すると、人気バンド「ACT」の前座として出たイベントでの演奏シーン(9巻)。
初心者だった玉田が必死に練習して実力を伸ばし、はじめて大→雪祈→玉田と3人連続のソロを披露。
所詮10代のバンドだろうと小馬鹿にしていたACT天沼と観客たちの度肝を抜くシーンです。
「音が聴こえてきそう」って感想は、『BECK』や『四月は君の嘘』などの音楽漫画でもはや使い古された感がありますが、ほんとに聴こえてきそうなんです!!
特に『ブルージャイアント』ではセリフをほとんど使わず、一瞬一瞬の感情の高まりや勢い、観客の感動が絵で丹念に描写されています。
ミュンヘンで大がどんな活躍を見せてくれるのか、これからも楽しみですね。
『ブルージャイアント』に登場するジャズ名曲
最後に、『ブルージャイアント』に登場するジャズの名曲をまとめてみました(曲名が明示されているもののみ)。
こちらがYouTubeプレイリストです。
以下、詳細。
ジョン・コルトレーン – モーメンツノーティス
1巻。ガソリンスタンドでのバイト中に、ジャズの有名な曲を歌ってみてと言われて。
チュニジアの夜
2巻。師匠・由井とはじめてのセッションで。
モーニン
2巻。所長と釣りに行く途中に吹いている口笛。
ジョン・コルトレーン – カウントダウン
3巻。文化祭一曲目。
チェロキー
4巻。バードでのリベンジ。
タイムワズ
5巻。上京前、父が店長を務める閉店後のスーパーで。
ハービー – 処女航海
5巻。夜に海に向かって練習していたら、屋形船のお兄さんからリクエストされた曲。はじめてのギャラをもらう。
フライ・ウィズ・ザ・ウインド
6巻。玉田がドラム教室に行った後、はじめて3人でセッションした曲。
アバロン
6巻。肺活量向上のトレーニング後に、飛び入りセッションのソロでただのロングブレスを試し怒られたときの曲。しかし自分の武器を確信する。
ソニー・ロリンズ – ニュークスフェイダウェイ
6巻。ジャズ・ハウス「Seven Spot」での「JASS」初ライブ・初演奏曲。
インプレッションズ
7巻。川喜多さんの飛び入りでセッションした曲。
トム・ウェイツ – グレープフルーツムーン
7巻。練習前に雪祈がひとりで弾いていた曲。
「ジャズじゃねぇけど、残るだろ?耳に。」と言われ、大もすぐ気に入る。
ブルー・ミッチェル – アイルクローズマイアイズ
7巻。電車で知り合った根性のあるおじさんが、500円玉貯金で買ったトランペットで吹いてくれた曲。
いままで会った中でそのおじさんは「一番下手」だったが、大は「楽器と合ってる」というインスピレーションを得て『My Buddy』(相棒)を作曲する。
グリーン・ドルフィン・ストリート
Supreme 1。
ミュンヘンに来てどこに行っても演奏させてもらえなかったが、川岸で練習しているときにはじめておばあちゃんからリクエストしてもらった曲。手袋ももらい、どこに行っても助けてくれる人はいると実感。
Blue Giant 公式CD
随時更新予定。
以上、最高にアツくて泣ける音楽マンガ『ブルージャイアント』まとめでした!
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