タケダノリヒロ( @NoReHero)
日本でもようやく耳に馴染んできた「ブロックチェーン」ということば。
このブロックチェーンに関するワークショップを、アフリカのルワンダで開催された方々がいます。
「Blockchain EXE」というコミュニティに属する鈴木さんと平手さん。ルワンダから帰国されたばかりのおふたりに、東京でお話をうかがってきました(取材日:2018年8月31日)。
Blockchain EXEとは?
鈴木さんと平手さんが所属する「Blockchaine EXE」とは、オープンイノベーションを加速させるために民間、個人、大学が連携していくことを目的とする日本発のブロックチェーンTechコミュニティ。おふたりが勤務するクーガー株式会社のCEOが、同コミュニティの代表を務めています。
月に1回程度150〜200人が集まるイベントを開催しており、2018年からはニューヨーク、サンフランシスコ、トロント、ベルリンなど、海外でも実施されるようになりました。
なぜルワンダに?
世界の大都市をまわった後、なぜここに来てルワンダに?と聞くと、「平手が突然『ルワンダに行きましょう!』と言い出したんですよ」という鈴木さん。
平手さんは、インターネットの記事でたまたまルワンダがアフリカのなかでもITに積極的であること、新しい技術の受け入れにも寛容であることを知ったのだそうです。
日本は規制が多く、良くも悪くも「ちゃんとした国」。インフラが整うまでは新しい技術を導入することにも消極的ですし、既存のインフラからのスイッチングコストがかかるため難しいのだとか。
一方ルワンダはITの普及・インフラ整備に力を注いでおり、受入れに積極的で規制もきびしくないので、他国の企業が参入しやすい状況です。
たしかに日本のビジネスマンからは「ルワンダは実証実験がしやすい」という声もよく聞かれます。まず新しい技術を試し、育成するという点においては良い環境が整っていると言えますね。
ワークショップの内容は?
今回のワークショップは「Blockchain Fundamentals and Applications」という名称で、8月13〜17日の5日間、ルワンダ大学との共同開催でおこなわれました。
【Blockchain EXEルワンダ】初のアフリカ開催。ルワンダ大学にて始まりました!今日から5日間に及ぶワークショップ。ブロックチェーンを学ぶべく開発者が集っています。まずは、ルワンダ大学のIgnace Gatare教授によるウエルカム挨拶から。#bcexe #rwanda #blockchain pic.twitter.com/bZhhA6FMPp
— Blockchain EXE (@BlockchainEXE) August 13, 2018
カーネギーメロン大学の教授をはじめとする専門家の講義や、チーム別のアイデアソンなどを実施。
目的は、このイベントをきっかけに、ルワンダでのブロックチェーンコミュニティを形成し、ブロックチェーン事業の推進に貢献すること。
ルワンダはさきほど述べたように新しい技術を活用・応用する土壌が整ってはいるものの、企業・団体が連携しきれておらず、交通問題、公害、エネルギー問題、物流の非効率性など、インフラにも多くの問題を抱えています。
そこに活かせるのが「簡単に記録でき改ざんできない」というブロックチェーンの特徴。これまで信頼関係になかった企業・団体が協力できるしくみ、つまり「信頼の貯金」を構築し、それをルワンダからアフリカ全体へ広めようという意図がこめられています。
不安しかなかった
しかしながらはじめての試みとなった今回のワークショップ。鈴木さんは「ぶじに終わって安心した。不安要素しかなかった」と語ってくれました。
参加者は集まってくれるのか、集まったとしても理解してもらえるのか、協力してくれる各団体との連携は図れるのか、そもそもルワンダは本当に安全なのか、ぶじに日本まで帰ってこれるのかーー
そんな心配があっても無理はないですよね。しかしおふたりの不安をよそに、ワークショップは成功に終わったそうです。
【Blockchain EXEルワンダ5日目】5日間に及ぶ開発者向けブロックチェーン集中ワークショップ。全プログラム無事終了!1人1人お名前を呼んでの修了証書授与式。皆さん本当に素敵な笑顔です。長丁場でしたが熱気高く賑やかに終えられてとても嬉しいです。参加頂いた皆さま本当にありがとうございました! pic.twitter.com/wlxZzHvqUQ
— Blockchain EXE (@BlockchainEXE) August 17, 2018
参加者はとても熱心で質問が多数あがり、ランチが1時間遅れてしまったこともあったのだとか。
「日本では『新たな技術を使わない理由はないか』という保守的な質問が多いように感じますが、ルワンダでは『使う前提でなにがどう解決できるか』という前向きな質問が多かったように思います」(鈴木さん)
さらに当初の目的であった「ルワンダでのブロックチェーンコミュニティの形成」も見えており、Blockchain EXEのルワンダ版の組織化の話が出ているほか、「いまでもこんなに活発に情報交換されているんですよ」と鈴木さんがうれしそうにWhats app(ルワンダでもよく利用されている世界的なメッセンジャーアプリ)のチャット画面を見せてくれました。
アイデアソンでは、7チーム中5チームが農業の問題解決にかかわる提案で、あとはヘルスケアとサプライチェーンに関する発表だったそうです。これらの新しい技術・アイデアがどんなふうに社会に実装されていくのか、楽しみですね。
これからのルワンダ×ブロックチェーン
この取組みはワークショップの開催だけが目的ではありません。
コミュニティやラボを現地につくって、開発者を育てること。さらにはプロジェクトとして、サービスや仕組みに落とし込むこと。
「これからもルワンダにかかわっていきながら、問題解決にブロックチェーンをからめて進めていきたい」と語ってくれた鈴木さん。
「これをやったところで、おふたりや会社に直接的な利益があがるわけではないのに、なぜここまでやるんですか?」とすこし意地悪な質問をしてみたところ、メリットは「新しいことを試せること」だと教えてもらいました。
短期的な利益は出ないものの、ルワンダでの実験が新たな価値の創出につながるし、それが結果的に現地の人たちのためになれば、という想いがあるそうです。
「参加者たちの会話では、ジャック・マー(アリババ創業者)の名前がよく出てきていた」らしく、今回のイベントにはルワンダのアーリー・アダプターたちが参加していました。そのように世界の情報を仕入れている一方で、「AI」や「IoT」と聞いてもいまいちピンと来ていない方も多かったそうです。
その原因として、「SF映画などを見れていないこともあるかもしれませんね」と教えてくれた鈴木さん。
たしかにわたしたちは子どものころから『バック・トゥ・ザ・フューチャー』や『ドラえもん』で未来の世の中を想像してきました。そういえばわたしがAIの存在を知ったのも、スティーブン・スピルバーグ監督の『AI』がきっかけでしたし。
新たな技術の開発に適した土壌をもつルワンダですが、技術力だけでなく情報の収集や発想力の養成に関しても他国がサポートできる余地はありそうですね。
いつの日かルワンダで開発された新技術が、世界中で活用される日が来るかもしれませんよ。期待しましょう!
鈴木さん、平手さん、ありがとうございました!こんどはルワンダでお待ちしております!