タケダノリヒロ( @NoReHero)
ケニアAmoebaX社CEOの河野邦彦さんが、ルワンダについてこのようなツイートをしていました。
ルワンダがIT大国って日本に広まるのは機会損失だと思っているのですが、そこんとこどうなの。
たしかに会社の登記の簡易さや、治安の良さはあるんだけど、内需は小さいし、ネット環境も悪いし、スタートアップコミュニティも発達してない。挑戦する人がフィールドを間違えるのはもったいない。
— 河野邦彦@けにあ (@KKawano5) 2018年5月31日
ルワンダの件で思った以上の反響を頂いたのだけど、アンチルワンダとかでは全くなく、適切な情報が日本にいる人に正しく伝わらないのはなんだかなと思った次第です。
ただ、みなさん、凄い熱量だなと笑。ルワンダのことでこんなに盛り上がる場所はないでしょと思い、Twitterに感謝しました。
— 河野邦彦@けにあ (@KKawano5) 2018年5月31日
ケニアは汚職も凄いし、治安もよくないところはあるけれど、世界でも有数のインターネット普及率とネットスピード。
何より外資含めて支援ではなく投資が集まっている。シリアルアントレプレナーも出てきていて、スタートアップエコシステムも微小ながらできてきている。ITでアフリカならケニアよ。
— 河野邦彦@けにあ (@KKawano5) 2018年5月31日
「ルワンダがIT大国って日本に広まるのは機会損失」
河野さんは「アンチルワンダではない」としつつ、適切な情報が伝わっていない現状を嘆き、さらに「ITでアフリカならケニア」と主張しています。
これに対して、アフリカ・ルワンダのIT事情に精通した方々からたくさんの意見が集まったので、本記事でまとめてみました(錚々たるメンバーです……)。
またそれらのご意見に対して、2年間ルワンダにて生活し、さらに現在日本からルワンダ情報を発信する者として、参考情報を交えて「IT立国(を目指す)」ルワンダの実情を解説しています。
Contents
ルワンダを知るみなさんの反応
ルワンダは決してIT大国ではないですが、ZiplineやBabylon HealthのようにDisruptiveなテックビジネスのパイロットサイトとしてはあり。政府がコンパクトでスタートアップが技術に合う法律を作りやすいし、ビルゲイツからのリファーラルで来ているケースもあり省庁の支援も受けやすい。 https://t.co/jhqHg2vovU
— Kei Kikuchi (@milelee) 2018年5月31日
ルワンダはマーケティングが上手!実際のところは、IT分野でもケニアの方が勝っている点は多い。汚職のなさや住み心地が良いからといって、ビジネス的に適しているとは限らない。自分がやりたいビジネスに適している場所がどこかなのかは、実際にいくつか現地に赴いて比べてみることが重要かと。 https://t.co/NMYxCzA7T1
— ひろし×凡@Africa Quest (@bon0404) 2018年5月31日
っと言っても正直、ルワンダに憧れる点は多い。やはり治安の良さや汚職の無さはナイロビとは比べものにならなので、とても羨ましい…
— ひろし×凡@Africa Quest (@bon0404) 2018年5月31日
ルワンダに対する貴重な意見!
実際には「ICT立国を目指す」というのが正しいんだけど、メディアの発信の仕方や過剰なプロモーションで「既にICT立国である」かのような印象を受ける人が多いです。
ルワンダに挑戦したい人は1週間でもいいからまず自分の目で見て、感じに来て欲しいです。 https://t.co/Zsbwuejgff
— Hikaru Nemoto(根本晃)@Blockchain Gamer/Africa/Rwanda (@dujtcr77) 2018年5月31日
私は
-子どもいるのでルワンダの治安に感謝してる
-ナイロビのような渋滞が無く、サイズ感が気に入ってる
-ビジネスが楽なのは会社設立までと、汚職がないのはいいかな、でもマーケット超小さくて未熟
-ルワンダ政府は見せ方上手。悪く言うとハリボテ。本気の悪口は特に英語では絶対書けない https://t.co/Y1Bey2O3QD— ちさ@ルワンダ起業シングルマザー (@chisakarato) 2018年5月31日
実際ルワンダスタートアップコミュニティに浸かってみて、感想は「未成熟」。でも、誰かがデカイ熱量で旗を上げてハッタリをきかせてそうしてコトは起こるのだろうなと。 https://t.co/CYVV4Uvg18
— バキ子 (@happyluckytbk) 2018年5月31日
ルワンダがアフリカのシンガポールなんて聞くと、イメージが完全に先行してしまう。実際はまだまだ整えるべき環境はあるみたいだし、独裁政権だって言う話も聞くし。
とはいえ、他のアフリカ諸国との違いを打ち出してはいるわけで、一度は見に行ってみたいなーと。(´・ω・`) https://t.co/IJcECgdn23
— Shin-chan@南アフリカ🇿🇦・チーム三重📷 (@shin_chan_0620) 2018年5月31日
本当にそうだと思います。
河野さんの意見に乗って、もっと過激に書きたい衝動に駆られます笑 https://t.co/9ZTxjk9qGW— 金城拓真-アフリカでビジネスしてる人 (@kinjo_st) 2018年5月31日
河野さん(@KKawano5)のルワンダに対するツイートが色んな人の意見を巻き込んでて面白い。
こうやってどんどん意見交換が活発になるといいな。— 金城拓真-アフリカでビジネスしてる人 (@kinjo_st) 2018年5月31日
ルワンダしか知らない者として。ルワンダは僕からすると、国民性や政治的理由からビジネスの始めやすさはありますが、難しさも半端じゃない。
だからこそ、ルワンダでやり続ける判断をした人は全力で応援したいと思ってます。 https://t.co/BEZtZ75P74
— ShiyuNaito(内藤獅友)@6/13-20でバー店長やります (@Naikel0311) 2018年5月31日
ビジネスモデルとかによるとも思うけど、例えば人口勝負なビジネスだと難しいかもだし、それでも検証のためなら・・・とか色々あると思うけど、ルワンダから入って周辺国まで見てみるとかは良さそう
— のり@あふりかエンジニア (@sugi511) 2018年5月31日
みなさん、「IT立国」ルワンダの現状に対して相当思うところがあったのですね。
- メリット
- 会社の登記が簡易
- 治安が良い、住み心地が良い
- 政府がコンパクトでスタートアップが技術に合う法律を作りやすい
- 省庁の支援を受けやすい
- 汚職が少ない
- 街がコンパクトで渋滞が少ない
- 国民性や政治的にはビジネスを始めやすい
- デメリット
- マーケットが小さい
- ネット環境が悪い
- スタートアップコミュニティが未成熟
以下、これらの要素やポイントとなる背景を解説しています。
「IT立国」を目指すルワンダの現状と背景
日本企業の参入
おそらく冒頭の河野さんのツイートのきっかけとなったできごとは、この元サムライインキュベート寺久保さんによるルワンダでの「Leapfrog Ventures」設立でしょう。
アフリカに魅せられた寺久保拓摩氏、ルワンダで5億円規模のファンドを設立–ネクスト・ビリオン市場で、最大80社程度にシード投資を展開へ – THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)
ファンド規模は5億円、スタートアップ80社程度に1社あたり最大5万ドルまでの出資を予定しているということで、日本のメディアでも話題になっていましたね。
実はこれまでルワンダに参入する日本企業は決して多くはなく、世間的に認知されている企業はDMM.Africaくらいでしょう。
参考:DMM.HeHe、ルワンダでこれまでにないWebサービスをローンチ!CEOと開発者が語る新たな挑戦!(Africa Quest.com)
アフリカ・ルワンダ通のみなさんが述べていたとおり、日本のIT企業が進出していない理由としては、①マーケットが小さい、②ネット環境が悪い、③スタートアップコミュニティが未成熟であることが考えられます。
マーケットが小さい?=人口1200万人
ルワンダの人口は1200万人で、アフリカでは28位。
1位のナイジェリアは1億9000万人。サブサハラ・アフリカで比較すると、南アフリカが5,600万人(5位)、タンザニアが5,000万人(6位)、ケニアが4,600万人(7位)と4~5倍ほどの差があります(参考:アフリカの人口ランキング)。
マーケットサイズで見るならば、圧倒的に他国のほうが有利ですね。ただし人口密度で言えばルワンダはアフリカで2位(1位はモーリシャス)。面積は九州の7割ほどしかないので、コンパクトなビジネスを展開したい場合には向いているかもしれません。
ネット環境が悪い?=先進国とは雲泥の差
つづいてインターネット環境について。
当サイトでは以前、『意外に快適!ルワンダのネット環境!モバイルWi-Fiの速度は?料金は?』という記事を書きました(2016年5月)。現地で契約したポケットWi-Fiの実測値は、くだり2~3Mbps程度。
当時ははじめてのアフリカ生活で、特に不満もありませんでした。しかし、いま日本でWi-Fiスピードをはかってみたら20Mbps。ルワンダの10倍……!!
ルワンダが「IT立国(を目指している)」と謳われているからと言って、ネットがサクサク使えるというわけではありません。
ふつうに生活するだけであれば多少ストレスを感じる程度ですが、ITビジネスをするとなると重大な欠陥になりえます。
ネット環境の改善については以前から政府や企業が注力しているという情報が見られましたが、先進国と比べると「IT立国」と標榜するにはまだまだ満足できるレベルではない状況です。
スタートアップコミュニティが未成熟?
3つ目は「スタートアップコミュニティが未成熟」という点。
ルワンダには「kラボ」「ファブラボ」と呼ばれる起業家やベンチャー企業支援の施設があり、JICAも支援をおこなってきました。
参考:ルワンダのIT起業家を輩出!コワーキングスペースkLabに行ってきた
参考:ルワンダは、世界の未来を先取りする国になる?
ルワンダ以外の国についてはよく知らない私からすれば「こんな取り組みもあるんだ!」と感心したものですが、アフリカのスタートアップに詳しい方々から見ればまだまだ成熟しきっていないということなのでしょう。
ビジネスのしやすさランキング
その他、ルワンダのITビジネスに関する情報をいくつか。
ルワンダは世界銀行グループの発表する「Doing Business」というビジネスのしやすさに関するランキングで高い評価を受けています。
サブサハラ・アフリカでは2位(1位はモーリシャス。またしても…)。全190カ国中では41位で、日本の34位と大差ありません。
ルワンダのビジネス改革で評価されているのは、以下の5点。
- 建設許可取得(Dealing with construction permits)
- 不動産登記(Registering property)
- 少数投資家保護(Protecting minority investors)
- 納税(Paying taxes)
- 契約執行(Enforcing contracts)
どれもITとは直接関係ありませんが、「irembo」という行政サービスをオンラインで受けられるポータルシステムが運用されており、上記のような許可取得や登記に使われています。
実際どこまで活用されているのかは定かではありませんが、こういった施策も「IT立国」のイメージを押し上げていると考えられます。
ドローン
ルワンダでよく取り上げられる分野のひとつがドローン。
【ルワンダ 命を救うドローン】
・ルワンダの企業「ジップライン」はドローンで血液や医薬品を輸送
・医師が携帯電話で注文。時速120キロで飛び、GPSが目的地を感知して小包を落とす
・これまでに輸血用血液7000袋以上を運び、うち1100件が緊急輸送だったhttps://t.co/mxztzhByHX— ルワンダノオト (@Rwandanote) 2018年5月2日
「ジップライン(Zipline)」という会社がドローンを利用して、血液や医薬品を輸送する取り組みを展開しています。
これで「ルワンダはドローンを医療に活用しているんだ!すごい!」とニュースになっていますが、まだまだ全国的に普及しているわけではなく、ジップラインの存在が独り歩きしているような印象です。
先日、「アフリカで法律をつくった」とCLUEのなつめぐさんが非常におもしろい投稿をしていましたが、同社はベナンやガーナでドローンを活用したビジネスを推進しています。
参考: アフリカで法律をつくった話(note)
参考: アフリカ史上初!CLUE、ガーナ政府機関とドローンを利用した道路点検を実施へ!(Africa Quest.com)
この分野に関しては、ルワンダだけが進んでいるとは言い難いですね。
モバイルマネー
さいごに「モバイルマネー」。スマホやガラケーを利用して、送金・出金・支払いなどをできるサービスです。
【MTNルワンダ モバイルマネーの転送コスト80%削減】
・これまで100RWF以下は送金不可だったが、1~100RWFの送金には3RWF、300~1000RWFには35RWFのみの手数料で送金可能に
・毎月約980RWF(125億円)がさまざまなサービスに登録されている
・加入者は160万人https://t.co/fhA6vCMlFL
— ルワンダノオト (@Rwandanote) 2018年5月24日
↑ 「980RWF」は「980億RWF」の間違いです。
いまのところ加入者は160万人。人口の約13%といったところ。
首都だけではなく農村部でもモバイルマネーによる電気代の支払いなどが普及していたため驚いたのですが、これはルワンダに限ったことではなく、近隣国でもおなじようです(MTNはもともと南アフリカの企業)。
参考: IT立国ルワンダ!1年住んだ私のモバイルマネー活用法3つ
悪い面も含めてリアルなルワンダ情報をお届けします
以上、ルワンダのICTシーンにまつわる実情をお伝えしてきました。
当サイト『ルワンダノオト』のTwitterアカウントでは、先月から「ルワンダニュース翻訳まとめ」をほぼ毎日配信しています。それに関して、エイズ孤児支援NGO・PLASの代表である門田瑠衣子さん(@Rui_Plas)からこのようなコメントをいただきました。
ルワンダはICTベンチャーの勢いも出てきてて、国の後押しもある。
これから世界を先どる可能性がある国。
ルワンダに関係するビジネスマン以外も注目すべし!ルワンダで起こる変化はいつか世界各国で起こる可能性がある。
そういう視点で見たほうがいいと思ってる。
貴重な情報源に感謝🙏🏻 https://t.co/IMFGaidSFx
— 門田瑠衣子@エイズ孤児支援NGO・PLAS代表 (@Rui_Plas) 2018年5月31日
「ルワンダで起こる変化はいつか世界各国で起こる可能性がある」
ルワンダが「IT立国」というイメージを押し出しつつ、まだそこまでのレベルに至っていないことは事実です。しかしこれだけの方々が話題にするほど注目し、アフリカのなかでも勢いにあふれている国であることは間違いありません。
ルワンダ情報専門サイトとして、この国の正しい姿を日本のみなさまに伝えられるよう、良い面も悪い面も含めてお伝えしていくつもりです。
私は現在日本に帰国しておりますが、18年9月以降はまたルワンダに戻ります。現地在住者ならではの情報を発信して参りますので、ルワンダの様子が気になるという方はぜひフォロー&チェックしていただければ幸いです。
ルワンダノオト(@Rwandanote)
タケダノリヒロ(@NoReHero)
全員から許可をいただいて掲載しています。ルワンダやアフリカ界隈のすごい方ばかりなので、ぜひフォローをおすすめします。
- 河野邦彦@けにあ(@KKawano5)
- Kei Kikuchi(@milelee)
- ひろし×凡@Africa Quest(@bon0404)
- Hikaru Nemoto(根本晃)@Blockchain Gamer/Africa/Rwanda(@dujtcr77)
- ちさ@ルワンダ起業シングルマザー(@chisakarato)
- バキ子(@happyluckytbk)
- Shin-chan@南アフリカ 🇿🇦・チーム三重 📷(@shin_chan_0620)
- 金城拓真-アフリカでビジネスしてる人(@kinjo_st)
- ShiyuNaito(内藤獅友)@6/13-20でバー店長やります(@Naikel0311)
- のり@あふりかエンジニア(@sugi511)
- 門田瑠衣子@エイズ孤児支援NGO・PLAS代表(@Rui_Plas)
アフリカビジネス界のアベンジャーズのようなラインナップです(アベンジャーズ見たことないけど)。