タケダノリヒロ( @NoReHero)
ルワンダから日本に帰国中です。飛行機のなかで日本未公開の映画『Goodbye Christper Robin』を観ました。
かの有名な『くまのプーさん』の原作者A・A・ミルン(A・A・Milne、作中での呼び名は「ブルー」)とその家族、特に息子のクリストファー・ロビン(Christperh Robin、家族からの愛称は「ビリー」)との絆や、『くまのプーさん』が誕生して世界的に愛されるようになるまでを描いた作品。
パッと内容を聞いただけではただのほっこり系の物語かと思ってしまいますが、一家の住む美しい森の風景と戦争の悲惨さを対比させたコントラストが見事でした。
また、社会的な成功と引き換えに家族の人生を翻弄することになってしまったブルーの苦悩も身につまされます。
それでいて、当初はぎこちなかった父子関係が森での生活を通して近づいていく様子も、そろそろ親になる年齢の私にとっても共感できる作品でした。
あらすじは前半をネタバレなしで、後半をネタバレありで書いています。核心部分を知りたくない方は、当記事を途中までお読みになることをおすすめします。
その他、予告編動画や個人的な感想をご紹介。私も大好きな『ビッグフィッシュ』のように、ファンタジックな世界観が好きな方にはおすすめの映画でした。
もくじ
予告編動画
映画のトレイラー(予告編)です。【動画 2:32】
あらすじ
ネタバレなし!あらすじ
- 劇作家のブルー(A・A・ミルン)は戦争でトラウマを患う
- 自らの作品によって戦争をなくすことを願うが作品が書けなくなり、精神的負荷を避けてロンドンから森の奥に家族で引っ越す
- 引っ越してもしばらくは筆が進まず、妻のダフネは書くまで戻らないと言って家を出てしまう
- 息子のビリー(クリストファー・ロビン)はナニー(乳母)のオリーブに懐いているが、彼女も母の看病で家をあけることになり、しばらく父と息子二人だけの生活に
- 最初はぎこちなかったが、徐々に打ち解ける父と子
- 森で動物を探したりクリケットをしたりしているうちに、ビリーお気に入りのクマのぬいぐるみから着想を得て「くまのプーさん(Winnie-the-Pooh)」の話を思いつく
- 夫が作品を仕上げたことでダフネは家に戻り、オリーブも母を看取って帰ってくる
- 作品は大ヒットとなり、モデルとなったクリストファー・ロビンは一躍有名人になる
ネタバレあり!あらすじ
- 『くまのプーさん』のキャラクターとストーリーは世界のものになったが、ビリーのものではなくなってしまった
- インタビューや面会など、有名人としての生活に疲れてしまったビリームーン
- ブルーは疲弊するビリーに気づきつつも背を向けていたが、オリーブからの指摘でようやく「くまの話はもう書かない、息子への仕事も一切受けない」と決心
- ビリーは寄宿学校に入るが、「クリストファー・ロビン」として有名であることや、女性っぽい容姿のためにいじめられる
- 青年になり、徴兵が始まるが検査に落ちる
- しかし「クリストファーロビン」ではなく「ビリームーン」として生きるため、国に貢献するため、父に戦争に行きたいと願い出る
- ブルーの口利きによってビリーは戦争に行く
- 戦地に赴く直前、ビリーは父にクマの物語が自分の人生を狂わせたと責める
- ブルーは「森で二人で過ごした時間が人生でもっとも幸せだった」と告げるが、ビリーはそれもビジネスのためだったと信じない
- 結局分かり合えぬまま戦争に行くビリー
- ブルーと妻のもとに、息子が戦死したと手紙が届く
- しかししばらくした後、ビリーが戻ってくる(行方不明になっていた)
- ビリーは「戦地で兵隊たちがクマの物語に出てくる歌を歌い、平和の素晴らしさや幸せとは何かを思い出した、それがあなたの功績だ」と父に告げ、親子はともに家に帰る
感想
ここからは個人的な感想を。印象的だったのは以下の3点。
- 森の美しさと戦争の悲惨さの対比
- お金持ちになるために私生活を売る代償
- 父になるということ
森の美しさと戦争の悲惨さの対比
まずはなんと言っても、家族が暮らす森の綺麗さ。
前半はほとんどがこの森のなかで撮影されており、木漏れ日が射す小路をクマのぬいぐるみとともに歩く父と息子の姿がまあ美しい。
しかしそんななかでも、ハチの飛ぶ音や風船の割れる音でブルーは戦争のことを思い出してしまいます。
「自分の作品で戦争をなくすんだ」という強い意志をもつものの、「そんなの水曜日が来ないのを願うようなものよ(=現実から目を背けているだけ。戦争はなくならない)」とその考えを否定する妻。
妻の言葉どおり、戦争は繰り返されてしまいます。そしてそれに参戦するのは……。
お金持ちになるために私生活を売る代償
「お金持ちになりたい」「成功したい」という願いは多くの人がもつものですよね。
作品が書けなくなり、作家生命が危ぶまれたブルーでしたが、クリストファー・ロビンの物語により一躍世界的な作家となります。
しかしそれと引き換えにしてしまったのが、息子の「ビリー」としての人生。
ビリーは作中の「クリストファー・ロビン」として扱われることで、自分自身のアイデンティティにすら迷いを覚えるように。
終盤の「ぼくのために物語を書いてくれと頼んだけど、ぼくを書いてくれとは言ってない」というセリフに胸が苦しくなりました。
父になるということ
マジメで繊細な性格のブルーは、当初息子と二人きりで過ごす時間に戸惑いを覚えているように見えました。
しかし森のなかでビリーと一緒にクリケットをやったり、小屋をつくったり、弓矢を射ったりすることで、徐々に父親らしくなっていきます。
『くまのプーさん』に出てくることでおなじみのクマやトラ、ウサギ、ブタなどのぬいぐるみを食卓に置いて、それぞれの声真似をするシーンが微笑ましかったです(「ママのほうが上手」とか言われちゃってましたが)。
私ももうアラサー。数年後にはこんなふうに結婚して、子どもができて、ぬいぐるみにアテレコなんかしてるかもしれません。
息子とのふれあいを通じて人間的に円熟味を増していくブルーの姿に、思わず共感してしまいました。
以上、あらすじと感想でした。
史実にもとづいたお話なので、これからは『くまのプーさん』を見る目が変わりそうです。こんな背景があったんですねえ……。
もっと知りたくなって、思わず機内でアニメ版の『Winnie-the-Pooh』を観てしまいました。両方観るとより味わい深い。
日本で公開されたら、ぜひ劇場に足を運んでみてください!
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