【更新 2020/05/27】タケダノリヒロ( @NoReHero)
山口周さんの『知的戦闘力を高める 独学の技法』を読みました。
『知的戦闘力を高める 独学の技法』をAudible(アマゾン運営の朗読サービス)で聴く(1冊目無料!)
なぜ独学が必要なのか?どうやったら効率的に独学できるのか?教養を身につけるためにはどんなジャンルのどの本を読めばいいのか?といったことが非常に分かりやすく解説されています。「知的戦闘力」というワードがいいですよね。
内容の一部は下記のダイアモンド・オンラインの記事でも公開されているので、購入前に見てみるといいと思います。
この記事では本書全体の要約と、特に学びを得られた箇所をご紹介します。これまでなんとなく独学していましたが、この本で非常に感銘を受けたので、「より貪欲かつ戦略的に学びを深めていこう」とやる気マックスになっております。
勉強好き、読書好きは必読の一冊です。
独学の4ステップ
本書では独学システムを「戦略」「インプット」「抽象化・構造化」「ストック」の4つのモジュールに分けて考えています。
①戦略
どのようなテーマで知的戦闘力を高めるかを決める
②インプット
本やその他の情報ソースから情報を効果的にインプットする
③抽象化・構造化
知識を抽象化したり、他のものと組み合わせたりして独自の視点を持つ
④ストック
獲得した知識や洞察をセットで保存し、自由に引き出せるように整理する
これまで巷にあふれていた「独学法」は②の「インプット」にばかり焦点が当てられており、むしろ「読書法」のようになっていました。その前後のモジュール(ステップ)の重要性と効率的な取り組み方について解説されたのが本書です。
以下、それぞれのステップで特に私が「なるほど!」と思った箇所をご紹介していきます。
戦略
ひとつめのステップが「戦略」。
なるほどポイント
独学の戦略はジャンルではなくテーマで決める
独学しようと思ったら、「経済学を勉強しよう!」「哲学を学ぼう!」とジャンルで絞ってしまいがちですよね。しかし、それでは教科書の基礎知識しか身に着かず、自分なりのユニークな視点が得られないんです。
なので大事なのは、テーマとジャンルをクロスオーバーさせること。
そのためには自分が独学する「テーマ」を決める必要があります。そのテーマに応じてさまざまなジャンルの知識を組み合わせて、独自の示唆や洞察を得ることが大事なんですね。
著者の場合は
- イノベーションが起こる組織とはどのようなものか
- 美意識はリーダーシップをどう向上させるのか
- 共産主義革命は未だ可能なのか
- キリスト教は悩めるビジネスパーソンを救えるか
をテーマに、つまり追求すべき「問い」として定めています。
こうすることで独学が単なる知識の詰め込みにならず、「豊かな生」をまっとうするための「知恵」として活用していくことができるんですね。
インプット
二つ目のステップが「インプット」。
なるほどポイント
・本だけでなく、テレビやラジオ、ネットの情報、映画や音楽もその人ならではの知的戦闘力につながる貴重なインプット
・インプットは「後で役立つかも」くらい、ふわっとした目的でもOK
・「問い」をもってメモすること
まず、一点目。本以外の娯楽要素が強い情報源でも、その人なりの貴重なインプットになるということ。
たしかにぼくもこの雑記ブログに「音楽」や「読書」などさまざまな情報源から得たインプットをまとめていて、それが思わぬ形で組み合わさって独自のアウトプットになるという経験を何度もしているので、非常に納得できます。
それから、前段で「戦略」が大事という話がありましたが、インプットの目的はガチガチに決めなくても良いとのこと。
その理由が「セレンディピティ」やクランボルツの「計画的偶発性理論(Planned Happenstance Theory)」、「ブリコラージュ(寄せ集めのものから新しいものを生むこと)」などの言葉で説明されています。
そしてそれを裏付ける内田樹さんの、このことば。
学んだあとに、事後的・回顧的にしか自分がしたことの意味は分からない。
それが成長するということなんです。内田樹(ブログ『内田樹の研究室』より)
「この目的を達成するために、この本を読むんだ!」と計画立てて成長することは難しいということですね。
頭のいい人は大量の本を濫読しているというイメージもありますが、著者は彼らを「深く鋭く読むべき本を見つけるために、大量の本を浅く流し読みしている」と捉えています。
濫読の時期のなかった人は大成しないと極言してもいい。
山口瞳『続 礼儀作法入門』
日常生活ですぐに取り入れられるインプット方法は、「メモすること」。先日noteで「毎日100メモ」という面白い習慣を紹介している記事を見つけました。ちょっとした気づきや学びを100個毎日メモするというもの。
さすがに毎日100個は見つけられていませんが、細々と続けているので日々ノートに新たなことばが増えていて、見返すとワクワクしてしまいます。
知将として有名な元野球監督の野村克也さんも、メモの重要性をこう語っています。
なぜメモが大事かというと、
メモが癖になると、
”感じること” も癖になるからだ。
人より秀でた存在になる不可欠な条件は、
人より余計に感じることである。野村克也『ノムダス 勝者の資格』
「感じる」ことが大事なんですね。
本書の著者・山口さんも「常に『問い』をもってインプット(メモ)すること」とおっしゃっています。「見聞きしたできごとが自分にとってどういう意味をもつのか?」を考えろという、『君たちはどう生きるか』で語られていたことにも通じる教えですね。
抽象化・構造化
3つ目のステップが「抽象化・構造化」。
なるほどポイント
・独学の目的は新しい「知」ではなく、新しい「問い」を得ること
独学が「インプット」で終わってしまっていたら、ただの「教養主義」に陥り、より良い人生を送るための「知的戦闘力」にはつながっていかないんですね。
なのでインプットをしたら、
- 得られた知識はなにか?
- その知識のなにが面白いのか?
- その知識をほかの分野に当てはめるとしたら、どのような示唆や洞察かあるか?
と抽象化して考える必要があるというわけです。
ストック
最後に「ストック」。
なるほどポイント
「見送っていい常識」と「疑うべき常識」を見極めるための選球眼を養うのが、知識の厚いストック
著者は、イノベーションを駆動するには「常識への疑問」をもつことが重要だと語っています。
そして、「見送っていい常識」と「疑うべき常識」を見極めるには選球眼が必要で、それを養うのが知識の厚いストックなんです。
そのストックをつくるために紹介されている本の読み方が、【アンダーラインを引く→選り抜き→転記】という3ステップ。
独学は「忘れる」ことを前提におこなうものなので、3ステップ目の「転記」でいつでも情報を検索して取り出せる状態にしておくことが肝心なんですね。
ぼくは基本的にkindleで読書をしているので、本書でも紹介されていた「kindleハイライト」の機能を活用しています。
kindleでハイライトをつけた文章が、自動的にこの画面に同期されます。そのなかから特に気になった部分や感銘を受けた文章をブログにまとめているので、【アンダーラインを引く→選り抜き→転記】の3ステップを非常に効率的に実行可能です。
リベラルアーツを学ぶ意味
本書では、知的戦闘力を高めるために有用と考えられる11のジャンル(歴史、経済学、哲学、経営学、心理学、音楽、脳科学、文学、詩、宗教、自然科学)が挙げられています。
これらは一般に「リベラルアーツ」と言われますが、なぜリベラルアーツを学ぶ必要があるのでしょうか。
これには5つの理由がありました。
リベラルアーツは……
①イノベーションを起こす武器になる
②キャリアを守る武器となる
③コミュニケーションの武器になる
④領域横断の武器となる
⑤世界を変える武器となる
特に納得できたのは④の「領域横断の武器となる」という理由。
いま世の中では領域の専門家ではなく、そこを越境していけるクロスオーバー人材が求められています。領域の専門家でい続ける限り、各専門家をまとめるリーダーになることはできないんですね。
かと言って各領域への見識が浅すぎてもそれらを統合することはできません。だからこそリベラルアーツを修めて、越境人材になる必要があるんですね。
教養書リスト
本書の最後に11ジャンル99冊の教養書が紹介されていました。それを全部ここで公開するのは避けますが、私も読んでいた数少ない推薦書のレビュー記事だけ掲載しておきます(『1984年』と『サピエンス全史』)。
これから読もうと思っている方や、内容を忘れてしまった方は参考までにご覧ください。
ジョージオーウェル『1984年』(小説)あらすじ・要約・考察・解説~人間賛歌の物語~
『サピエンス全史』まとめ・要約・あらすじ・感想~空白の地図を描こう~
『独学の技法』を読んだことで、「もっともっと知らない世界を知りたい!」とまれに見るレベルで勉強意欲が高まっております。
独学の目的は新たな「知」ではなく、新たな「問い」を得ること。まずは「自分のテーマ」を考えなければ。
『知的戦闘力を高める 独学の技法』をAudible(アマゾン運営の朗読サービス)で聴く(1冊目無料!)
おすすめ記事→本書でも「聖書とシェークスピアを筆頭に、ドストエフスキーなどの世界文学は、それらを読んでいるという前提で 欧米のエリートはコミュニケーションをしてきます」と言われている通り、シェイクスピアも重要な教養書です。