三連休初日、お洒落な映画でも観ようかなと思ったら、Amazonプライムに映画ドラえもんが36作も…!!
つまり今年公開の『南極カチコチ大冒険』を除いて、すべての過去作品が実質無料で観れるわけです(もちろんプライム会員費はかかりますが)。
お洒落な映画なんか観てる場合じゃねぇ…!!というわけで、まずは『のび太の日本誕生』を観てみました。
1989年公開の映画ですが、2016年にリメイク版として『新・のび太の日本誕生』が公開されています。
気になったので両方観てみたんですが………
リメイク版最高どら。(そんな語尾じゃない)
旧作を観た数時間後にリメイク版も観たんですが、ストーリーの大枠自体には変わりはありませんでした。
なので、バッチリ内容も覚えてたはずなんです。
なのに大号泣。
旧作ではあっさり流されていたシーンが伏線を回収しながらきっちり山場として演出されていて、観ながら思わず拍手してしまうほど。
よく原作の流れを壊さずにここまでキレイにまとめられたな…。
ということで、映画『ドラえもん のび太の日本誕生』のあらすじや、「怖い」「トラウマになる」という噂の検証、旧作とリメイク版の違いなどをまとめました!
これは子どもができたらまた一緒に観よう。
※後半からネタバレありです
もくじ
『映画ドラえもん のび太の日本誕生』基本情報
あらすじ(ネタバレなし)
まずは旧作とリメイク版に共通するあらすじから(ネタバレにならないところまで)。
- 原始人の子どもククルが時空乱流に飲み込まれ、現代の東京にタイムスリップ
- のび太、しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫、ドラえもん全員がそれぞれの理由で家出するが、行くあてがなく途方に暮れる
- 「日本に人が住む前の時代に行こう」ということで、7万年前の日本へ
- 7万年前の日本に自分たちの居場所をつくる
- いったん家に帰ると、潜んでいたククルと遭遇
- ククルを7万年前の世界に連れて行く
- ククルが時空乱流に飲み込まれた原始人であり、その一族(ヒカリ族)はギガゾンビとクラヤミ族に連れ去られたことを知る
- 「みんなでヒカリ族を助けに行こう!」
というのが前半の流れ。
タイトル通り「日本誕生」という壮大なテーマのもとに、子どもたちの自由と独立、それに伴う葛藤と成長、仲間やペット(動物)との絆を描いた作品です。
主題歌
主題歌も豪華。
旧作は西田敏行の『時の旅人』(作詞:武田鉄矢 作曲:堀内孝雄)。
リメイク版は山崎まさよしの『空へ』。
『新・のび太の日本誕生』のために書き下ろされた楽曲で、歌詞はのび太の成長をイメージした内容になってます。
MVで歌ってる土管もどこかで見たことがあるやつですね。
神隠し・土偶・ギガゾンビがトラウマに?
【ネタバレ度 ★☆☆】
ネットでこの映画のことを検索してみると「怖い」「トラウマになった」という声が散見されます。
実際どの部分がそんなに怖いんでしょうか?
神隠し
まずは神隠しのくだり。
ククルが時空乱流に飲み込まれたことをドラえもんがこんなふうに説明しています。
- 「時空乱流」とは時の流れの中の落とし穴のこと
- そのなかに人が飲み込まれることもある
- 飲み込まれるといま住んでいる世界から消えてしまう
- これが「神隠し」と呼ばれている
- 1937年12月中国の長江で3000人の兵隊がいっぺんに消えた事例も
- 永久に亜空間を漂うか、運が良ければどこかの出口から出られることもある
たしかに「いま住んでいる世界から消えてしまう」とか「永久に亜空間を漂う」とか、子どもの時に聞いたら怖くなっちゃいそうですね。
冒頭のククルがブラックホールのようなものに飲み込まれるシーンもけっこう怖いかも。
土偶のツチダマ
それから、敵キャラクターもけっこう怖い。
精霊王・ギガゾンビの忠実な手下で、土偶なのにしゃべるし衝撃波とか打ってくるめちゃくちゃ強いツチダマ。
画像出典:Amazonプライムビデオ
その無機質な見た目もさることながら、恐ろしいのがどんなに破壊してもまた部品がくっついて復活するところ(形状記憶セラミックという未来の素材で出来ている)。
壊しても壊しても復活するのはちょっとしたホラーですね。
精霊王・ギガゾンビ
そして今回の映画のラスボス、精霊王・ギガゾンビ。
そのネーミングはどうなのと思いますが、見た目はなかなかの怖さです。
↑旧作では仮面がもっとエグい色使いだったのでもっと怖かった 画像出典:Amazonプライムビデオ
ドラえもんが時間を止めてまわりの人はだれも動けないはずなのに、扉の奥から「コツ、コツ、コツ…」と足音が聞こえてくるあの恐怖………!!
これは子どものとき見てたらトラウマになってたかもしれませんね。
個人的には『のび太のブリキの迷宮』がちょっとしたトラウマです。
旧作と『新・のび太の日本誕生』(リメイク)の違い
ここからは、旧作とリメイク版の違いについて!
リメイク版がとにかく良すぎた。
グラフィックの進化
【ネタバレ度 ☆☆☆】
まず表面的なところからいくと、とにかくグラフィックがめちゃくちゃキレイになってます。
本作だけでなく、最近のドラえもん全体に関して言えることですが、昔のドラえもんを主に見ていた世代としては「ドラえもんってこんなにコロコロして可愛かったっけ」と思うほどときめいてしまいましたw
それから自然の情景描写。
人類が住む前の日本が舞台になっていることもあり、とにかく描かれている世界が美しい。
満点の星空やオーロラ、青空に流れる白い雲、カラフルなお花畑に、朝日が山から上がる瞬間のきらめき。
大地を吹く風にのび太たちの髪の毛や服が揺れるシーンや、戦闘シーンの描写も繊細かつ大胆になっていて臨場感があります。
視点の移動も見事で、旧作ではのび太たちを俯瞰的に眺める単調な視点だったのが、リメイク版では星空を下から仰ぎ見たり、ペガサスに乗って飛んでいるような主観的な視点が盛り込まれていました。
画像出典:Amazonプライムビデオ
まるで自分が冒険の世界に入り込んだよう。これは映画館で見たらすごかっただろうな…。
映像技術が発達したいまの時代だからこそ成せるリメイクですね。
世界の歴史へのリスペクト
【ネタバレ度 ★☆☆】
それから思わず「う~ん…!!」と感嘆の唸り声をあげてしまったのが、世界の歴史に対するリスペクト。
のび太たちがヒカリ族(ククルの一族)を中国から日本に連れてきて新たな村をつくるとき、「ドラえもんの道具を貸してあげたら簡単にできるのに…」と思ってしまったのはぼくだけじゃないはずです。
ジャイアンとスネ夫も同じことを思ったのか、リメイク版ではふたりが「みんなに道具を貸してあげてよ!」とドラえもんに頼むシーンがあります。
するとドラえもんはこう言うんです。
石器時代の人が未来の道具を使ったら歴史がめちゃくちゃになる。
人間は苦労した分だけ工夫して便利な道具を生み出していく。
これを文明の発展と言うんだ。
ドラえもん………!!!
そうだよね。これまで積み重ねてきた歴史を無視しちゃダメだよね。そうやって人間は進化してきたんだよね。
軽率な考えをもった自分を激しく後悔するほど感激しました(ジャイアンたちには「ちぇっ、ケチだな―」と言われちゃうけどw)。
さらにギガゾンビとの直接対決にて。一度は真っ二つにされた石槍をもう一度投げ、それが見事ギガゾンビの仮面を割ります。
ギガゾンビ「ばかな…どんな機械も分解できるはずだ…」
ドラえもん「機械なんかじゃない!その槍はククルが使ってた本物の石槍だ!偽物の歴史が本物の歴史に勝てるわけないんだ!」
ドラえもん………!!!(二回目)
これはまじで名言。
「偽物の歴史が本物の歴史に勝てるわけないんだ!」
23世紀からやってきたギガゾンビに、22世紀の道具で戦い一度は敗れたドラえもん。
今度はそんな未来のテクノロジーを「ただの石槍」で打ち破り、歴史の重みを証明するわけです。
このくだりは旧作にはなかったのでめちゃくちゃ感動しました。
伏線の回収と違和感のないストーリー
【ネタバレ度 ★★☆】
前述のように「ひみつ道具の石槍は軽くて叩いてもそんなに痛くないけど、本物の石槍は重くて痛い」みたいな伏線が絶妙に張り巡らされていて、それが見事なまでにキレイに回収されるのがリメイク版のすごいところ。
ギガゾンビとの対決
ラスボス・ギガゾンビとの対決もより強烈に描かれているのがリメイク版。
というか、旧作ではほとんど戦わず、タイムパトロールが来てあっさり解決しちゃいますw
リメイク版では、ドラえもんやのび太たちがヒカリ族と力を合わせて「自分たちの力で」ギガゾンビを追い詰めるというところがポイント。
亜空間破壊装置というまがまがしい機械を使って、この世界そのものを消してしまおうとするギガゾンビの悪役っぷりも存在感を増していました。
さらに旧作にはなかった「ドンブラ粉」の伏線やドラミちゃんの活躍も見事でしたね。
のび太とペットたちの絆
この映画で重要な役割を担っているのが、のび太がひみつ道具で生み出した3匹の空想動物、ペガサスのペガ、グリフィンのグリ、ドラゴンのドラコです。
リメイク版では彼らとのび太の絆もより鮮明かつ自然な筋書きで描写されています。
旧作ではやや唐突に「そうだ!ペガサスをつくろう!」とのび太が思いついた印象がありました。
しかしリメイク版では冒頭にテストで0点を取り、しかもその裏にペガサスの落書きをしていて、さらにママに怒られるというシーンが。
そして7万年前の日本に行き、幹が絡まる二本の木を見て二種類の動物を混合させることを思いつくんですね(白鳥+馬=ペガサスなど)。
大きくなったペガ、グリ、ドラコに乗って、日本からヒカリ族を助けに中国に向かったのび太たち。
しかし身体は大きくなったと言えど、生まれたばかりの空想動物たちは見慣れない土地で眠ることができません。
それを察して、彼らと一緒に外で眠るのび太(そしてそれを遠くから見守るドラえもん)。
このエピソードが挿入されていることで、よりのび太から動物たちに対する愛情と彼らの絆を実感することができ、これが後の「別れ」への切なさを増幅させるんですね。
後半、のび太は雪山で遭難しかけます。
旧作ではマンモスに扮したタイムパトロールがそれを助けてくれますが、リメイク版ではククルからもらった「犬笛」をのび太が消え行く意識の中で吹くことによってペガたちが助けに来るという流れに。
そしてギガゾンビを倒し、別れのとき。
のび太はペガたちを連れて帰ろうとしますが、旧作ではサングラスをかけたタイムパトロールのヒゲのおじさんに諭され、いったんは拒むもののそれをのび太が受け入れるという、わりとあっさりした展開。
しかしリメイク版では、タイムパトロールの人が綺麗なお姉さんになっており(重要)、のび太と動物たちの様子を見てひと呼吸。
「のび太と動物たちを引き離さなければならない」という大人としての葛藤が垣間見えるんです。まさに苦渋の決断。
お姉さんやドラえもんの説得にのび太は泣きながら、
ド…ドラコは食いしん坊だから、食べ過ぎに注意してください…
グリは…木の枝を取ってくるのが好きなんです…
それから…ペガは…ペガは…毎晩ブラシをかけてください…!!
このセリフにドラえもんもジャイアンも大号泣(私も)。
これを聞いたお姉さんはサングラスをはずし、のび太と目線を合わせるようにしゃがんで「わかったわ…しっかり、伝えておきます」と頭を撫でる。
画像出典:Amazonプライムビデオ
これぞ子どもに対する大人の真摯な対応…。
このシーンがあるのとないのでは全然違いますね。
親子関係
リメイク版で描かれる親子関係も素晴らしいのひとこと。
旧作では「家出してくる…!!」と意を決して出ていくのび太に対して、ママは「気をつけるのよー…あら?」ぐらいあっさりしています(パパにいたってはほとんど出てこない)。
子どもがいてもおかしくない年齢になったこちら側としては、大冒険に出かけようとしているのび太のことが心配でたまらないわけですが、そんな心配もよそにママもパパものほほんとしているのが旧作。
しかしリメイク版では、ママがのび太を怒鳴って家出させてしまったことをものすごく悩みます。
それに対してパパは「ぼくにも覚えがある。心配ないさ」と優しく語りかけ、「ずっとかごの中じゃ息がつまるよなー」と言いながらかごからハムスター(※)を出して撫でるんです。
※一時的に部長から預かっている。これが原因でドラえもんは「ネズミ!」と大騒ぎし、家出することに。
パパ…!!!
そして過去の世界から真夜中に一時帰宅したのび太に、「こんな時間までどこ行ってたのよ!」と怒鳴りながら詰め寄るママ。
いつもならここからお説教タイムが始まるのに、ママは気持ちを押し込めたようなのび太の顔を見て「…はやくご飯を食べなさい」とうつむきながら静かに言います(メガネの反射でママの目の表情も見えなくなる)。
そのふだんと違う様子をのび太も翌日になって思い出し、なにかを感じ取るんです。
ここのセリフには表れない親子の微妙な心情がもう素晴らしい…!!書いててまたウルウルしてきた…。
そもそものび太たちが家出したのには、「自由と独立の獲得」という目的がありました。
ジャイアンは「店番ばっかりさせておれは奴隷じゃないんだよ!」と母ちゃんに言い、スネ夫はママから英語とフランス語と中国語の家庭教師を付けられそうになり(旧作では「全科目に家庭教師」)、しずかちゃんはママからのプレッシャーに耐えられなくなり、「自由」を求めて家出をします。
しかし、7万年前の日本に来て、「自由」を手に入れたのと引き換えに、家族のいない「孤独」や「不便さ」を実感します。
それに引き換え、親のことをよく手伝い、当たり前のようにはたらく原始人の子どもたち。
それを見て現代っ子であるのび太、ジャイアン、スネ夫、しずかちゃんも手に豆をつくり、体中に草で切り傷をつくりながら、「自由を得ることの代償」を学んでいくわけです。
そして旧作では描かれていなかった「その後の物語」。
大冒険が終わり、のび太たちにも日常が戻ってきました。
のび太ママが「遅刻するわよ」とのび太を起こしに行くと、机に突っ伏して寝ているのび太。
なんと0点を取って物語冒頭でママに叱られたあのテストを解き直していたんです。
「あと10分だけ(寝かせてあげて)」と言うドラえもんとママの会話。
ママ「家出は終わったの?」
ドラえもん「たぶんね」
ふたり「うふふふふ(笑)」
ママ「…おかえり、のび太」
で、ママが寝ているのび太の頭を撫でてエンドロール。
画像出典:Amazonプライムビデオ
これ以上ない終わり方………!
この物語を締めくくるのに、ママの「おかえり」以上にふさわしいことばは見つかりません。
その後のエンドロールでも、一生懸命お使いをするジャイアン、必死に勉強するスネ夫、楽しそうにピアノを弾くしずかちゃんとそれぞれのママたちの姿が水彩絵の具で描いたようにやわらかいタッチで描かれています。
みんな冒険を通して成長したんですね…。それが丁寧に描かれているのがリメイク版の良さです。
『ドラえもん のび太の日本誕生』まとめ
ということで、『ドラえもん のび太の日本誕生』とそのリメイク版の違いでした。
旧作も良かったんですが、リメイク版は「最高」以外のなにものでもありません。
大自然の美しさを繊細に描いたグラフィック、積み重なる世界の歴史と文化への敬意、空想動物たちとのび太の絆、自由を求めた子どもたちの成長とそれを支える大人たちの葛藤。
子どものときは「大人」って絶対的な存在で、間違ったり悩んだりするなんて思えませんでしたが、のび太のママだって自分の子育てが正しいのか自信がもてなくなるときもあるし、タイムパトロールのお姉さんだって仕事とは言えのび太と動物たちを引き離すのに心を痛めたりするんですよね。
リメイク版はそんな「大人の弱さ」も垣間見える素晴らしい映画になっていました。
このゴールデンウィークは、久しぶりにドラえもんでも観て、涙してみてはいかがでしょうか。
タケダノリヒロ(@NoReHero)
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