青年海外協力隊としてルワンダで活動中のタケダノリヒロ(@NoReHero)です。
先日、小学校で水・衛生ワークショップを行い、保護者に対してアンケートを実施。その結果から、水因性疾患を予防・削減するための対策について1人ブレストしてみました。
「この対策をビジネスにするとしたら?」といった視点で考えるとまた面白いですね。
もくじ
問題点の整理
まずは問題点の整理から。
アンケートによると、直近3ヶ月で水に由来する病気に罹った家族がいる人の割合は70%。
その中で特に多かった病気が「下痢(diarrhea)」と「回虫(internal worms)」。
下痢を予防・削減するための方法(赤)、それに伴って発生する課題(白)、その課題の解決方法(緑)を考えてみました。星はその解決方法の難易度を表してます。
たとえば、左の列。下痢の予防・削減のための方法として「水のろ過」(赤)が挙げられます。
それに伴って、「ろ過器を用意しなければいけない」「住民が面倒くさがってやりたがらない」「住民が水は充分綺麗だと考えてやりたがらない」などの問題が出てくることが考えられます(白)。
これらの問題に対して、「ペットボトルで簡易ろ過器をつくる」(難易度2)「住民の意識を変えるための啓発活動を行う」(難易度1)などの解決策を考えました。
回虫の場合はこう。
これらの解決策を、難易度別に整理するとこうなります。
難易度1★☆☆
「住民の意識を変えるための啓発活動を行う」
難易度2★★☆
「ペットボトルで簡易ろ過器をつくる」、「エコシューズ、エコサンダルを作って販売する」、「エコ石けんを作って販売する」、「既存のショップ(アリメンテーション)で浄化薬(塩素など)を販売する」
難易度3★★★
「薪や炭に代わるエネルギーを普及させる(ガスやソーラーなど)」「住民の収入を向上させる」「水・衛生組合を組織する」「公共トイレを設置する」
これらの解決策を「ビジネスにするとしたら?」といった観点から考えてみました。
なぜビジネスとして考えるのか?
青年海外協力隊の支援で大事なことのひとつが持続可能性です。
その指標となるのが「ビジネスとして成り立つかどうか(お金がまわるかどうか)」です。お店が儲からなければ潰れてしまうのと同じように、社会問題の解決アクションも資金が無くなれば立ち行かなくなってしまいます。
もちろんぼくが将来的にソーシャルビジネスをやっていきたいから、というのも理由のひとつです。ビジネスで社会問題が解決出来るんだって考えたらワクワクしますね。
水因性疾患を解決するソーシャルビジネスのアイデア
エコサンダルの製作・販売でランニングブームをルワンダに!
回虫の原因のひとつが、「裸足で歩くこと」です。回虫は口からだけでなく、なんと足の裏からも入ってくるそうです。途上国では裸足で歩く人(特に子どもたち)が多いので、回虫が蔓延しています。
しかし中には「既成品の靴は高くて買えない」という人もいるかもしれません。そこで、廃タイヤやバナナの葉っぱなどを使って、安価な「エコサンダル」を作って販売します。
実際に廃タイヤで作った商品が販売されています(値段は安くはないですが)。お洒落なので普通に欲しいです。
同じく廃タイヤで作る「ワラーチ」と呼ばれるサンダルも、ベアフット(裸足に近い状態で走る)ランナーの間で流行っています。
ワラーチの自作 古タイヤを使う作り方(字幕付) – Simple Market – Fun & Music Videos
メキシコの先住民タラウマラ族を紹介した『Born to Run』という本から人気が出たようです。
ぼくも「世界一過酷なマラソン」と言われるキガリマラソンに出るためにランニングをしているんですが、ルワンダで運動のためにランニングをしている人なんてほとんどいません。
国内最大のマラソンであるはずのキガリマラソンも、昨年の出場者はたったの667名。参加者約3万7千人、応募自体はその10倍はあるという東京マラソンと比べると、ルワンダのマラソン人口がいかに少ないかが分かります。
ということは、逆に伸びしろがあるってこと。ワラーチの販売とともにランニングブームを起こすことによって市場を拡大出来るんじゃ…なんて考えてます。
が、あくまで目的は回虫の予防・削減のためのサンダル普及ですけどね。
ガスの販売で病気予防・節約・森林保護!
雨水や湧水を利用しているこの村では、水因性疾患の予防のために水を煮沸することが不可欠です。しかしアンケートでは約70%が煮沸をしていないと答えました。
その最大の理由が、薪や炭を節約するためです。
薪や炭は住民にとっては高価なので、煮沸せずに水を飲んでしまうんです。
そこで薪や炭の代わりにガスを普及させます。高価だと思われがちなガスですが、実は薪や炭よりもコストはかからないんです。
Clean cooking energy woes haunt Nyagatare, Gatsibo districts
この記事に出てくる男兄弟2人で暮らしている家庭では炭を使っており、年間12万RWF(約18,400円)かかっています。
ところがこれをガスに替えると、シリンダーやチューブ、レギュレーター、クッカーなど一式揃えるのに約10万RWF、リフィル代が5万RWFで、年間計15万RWFとなります。
セットを揃えるのに最初こそお金がかかってしまいますが、純粋な燃料代だけで見ればガスは炭の半分以下の金額で済んでしまうんです。
さらに、薪や炭の場合は屋内で調理した場合、煙による健康被害や、森林の伐採も指摘されています。
ルワンダ政府としてもガスへの転換を図っていますが、住民の「ガスは高い」という思い込みや、「使い方が分からない」といった問題によって、ガス業者も地方への進出に苦労しているようです。
しかしこういった課題をクリアできれば、家計の節約になり、健康被害も防げて、森林も保護できるうえに、一旦顧客を獲得できればリフィルが必要なので安定的な収益を生み出すことが可能という非常に優れたビジネスになります。
これ、どうでしょう。
ソーラークッカー販売で病気予防・節約・森林保護!
これは先ほどのガスをソーラークッカーに変えただけです。
太陽光を利用して、煮沸や調理が出来るソーラークッカーの自作に挑戦していますが、全然うまく行っていません。雨季に入って実験もお休み中。
ソーラークッカー | 検索結果: | ルワンダノオト 青年海外協力隊ブログ
これも、実用化できたら面白いんですけどね…。日本のように材料が手に入りづらいのが難点です。100均とかホームセンターとかがルワンダにもあればなあ…。
もちろんこれらのアイデアがそのままでビジネスになるとは思っていませんが、こうやって考えていくことで何かの「種」にはなる可能性があると思っています。
これからも既存のやりかたに囚われずに、いろんなチャンスを探りつつ出来ることからやっていきます。
タケダノリヒロ(@NoReHero)