任地ムシャセクターに来て、約2週間。
前任がおらず、上司や同僚も水問題にはノータッチの役所で、「水の防衛隊」であるぼくは、何をしたらいいのかと途方に暮れていました。
我々「コミュニティ開発」という職種の場合、自分の活動テーマを見つけるまでに大体1年かかり、下手したら見つからずに2年間の任期が終わってしまうこともあると聞いていました。
なので1年くらいは焦らずにじっくり探していこうと思っていたんです。
…が、さっそく問題の取っ掛かりが見えました。
強力なパートナーも出来ました。しかも2人も。いや、4人かな。
問題の大きさ・深さにショックを受けましたが、自分にもこの地域のために出来ることがあると感じて、ワクワクしています。
ということで、今日の活動報告です!
獣医さんとフィールド調査へ
いつも通り朝からオフィスに出勤。同僚に挨拶したら、もうやることはないので散歩フィールド調査に行こうとしたら、同じ部屋で働く獣医のノヴァンセが話しかけてきました。
ノヴァ「おれも行きたいなー。どこ行くの?」
ノリ「全然あてはないけど、ぶらぶらして村の人たちと話そうと思ってた。一緒に来てくれたら助かる!案内してよ!」
ノヴァ「村の人たちと何を話すの?」
ノリ「どこから水を得てるかとか、どうやって水を使ってるかとか知りたいんだけど」
ノヴァ「ナチバーゾ!(No problem)」
ということで、ノヴァンセが着いてきてくれることになりました。そして今日気づいたけど、ノヴァンセは結構英語が話せる。これは心強い。
早速オフィスを出ます。
ノヴァ「右と左どっちに行こうか?」
ノリ「右の方はこないだ行ったから左がいいな。あっちには集落があるよね」
ノヴァ「ああ、それならオフィスの裏から抜けた方が早いよ」
ノリ「…ふぇ!?」
この2週間結構歩きまわったつもりでしたが、オフィスのすぐ裏にものすごく便利な道がありました。やっぱり人に頼るのって大事です。
10分ほど歩くと、新しい小屋を建設中の若者たちが。
ノリ「この家は水道ある?」
若者「ないけど、ここを下って行ったら水源があるよ。」
ノリ「おお!そこ行って見てみたい!」
ということで、そこまで案内してもらうことになりました。
水源探索!
子どもを抱えた若いお母さんが、どんどん歩いていきます。ぼくの前にいるのがノヴァンセ。
いい眺めです。まさに「千の丘の国」。
歩きます。
歩きます。
歩きます。
いい眺め(2回目)。
歩きます。
坂を下り、キャッサバ畑を通りぬけ、どこまで下るのかと思っていたら…
水を頭に載せた子どもたちが!
この光景、JICAとかNGOとかのHPでよく見るやつや!と1人興奮。
どんどん来ます。
まだ来ます。かわいいいなおい。
この坂、気を抜いたらズルっと滑り落ちてしまいそうなほど急なんですが、そんな危険な斜面を、こうやって子どもたちは毎日行き来してるようです。
さらに下って行くと…
ありました!水源発見!大勢の子どもたちが水汲みをしていました。
ノリ「この水飲んでるの?」
子どもたち「うん」
ノリ「飲む前にろ過したり、煮沸したりしてる?」
子どもたち「してない」
まじか…。ろ過して煮沸するだけでも病気が防げるのに…。
ルワンダでは、安全でない水や不衛生な環境による下痢で、年間2,000人以上の子どもたちが亡くなっています(※)。ただの下痢ですよ?
※参考:WaterAid – Where we work – Rwanda
わざわざこんな斜面を下ってこなくても、丘の上にはこういう公共の水道があります。
でも、この水道は有料で、彼らはお金がないためにこれを使えないそうです。湧き水を汲んでる子の中には、学校に行っていない子もいると言ってました。
「これ飲んでお腹壊したり、病気とかしてない?」と聞いてみましたが、子どもたちには理解してもらえません。でも、この子たちはどう見ても元気です。
…飲んでみるか。
ってことで、飲んでみました。
この子たちがそのまま飲んでるなら、同じ条件で飲んでみないと彼らのこと理解出来ないですからね。お腹壊したらしょうがない。
両手ですくって、何も浮いてないのを一応確認して、ごくり。
…意外といける!
「ノヴァンセも…」って言おうとしたら、さっと目を逸らされました。
しかし、子どもたちがこういう水が原因で病気になってないか気になるな、と思っていたら…
ノヴァ「ぼくらのオフィスの隣に病院があるよ」
ノリ「そっか!病院に行けば何か教えてもらえるかな?」
ノヴァ「ナチバーゾ!(No problem!!)」
ということで、子どもたちにまたねと言って病院へ。
強力なパートナーその①
ノヴァンセが紹介してくれたのは、ブレイブという勇ましい名前の、30歳ぐらいのお医者さん。
ノリ「さっき水源の水をそのまま飲んでる子どもたちに会ったんだけど、下痢とか水の病気でここに来る人は多い?」
ブレイブ「水の問題は深刻だね。下痢は三番目に多い症状だよ」
と言って、データを見せてくれました。このムシャセクターの病院に、1月に来た患者さんの症状別人数。
問題になったら嫌なので、一応数値は隠してます。
一番患者数が多いのがマラリアで、この村だけ、一月だけで、1,000人以上いました。どうりで最近ラジオでマラリアマラリア言ってたわけだ。気になっていた下痢は三番目で、約50人。
「水関連の病気だけ色を変えられる?」と言ってやってもらうと、上記のように半分の症状が水に関連していることが分かりました。
もちろん一位のマラリアも、汚い水が蚊の発生源になるので、水の防衛隊の活動と無関係ではありません。
綺麗な環境を保ちましょうとか、蚊帳を使いましょうとか、虫よけしましょうっていう啓蒙活動ならぼくにも出来そうですしね。
学校でワークショップとかも出来るけど、子どもだけじゃなくて親にも指導しなきゃ意味ないよねとか、お金がなくて診察に来れない人や、水をろ過・煮沸なんてそもそも出来ない人たちもたくさんいるとか、取組み方や問題点について色々と話すことが出来ました。
ブレイブ「ここには何年いるの?」
ノリ「2年だよ」
ブレイブ「じゃあ十分だね。問題はたくさんあるから、ゆっくり1つずつ解決していこう」
ノリ「ブレイブ!」
と言ってがっちり握手しました。大前進です。
強力なパートナーその②
大きな収穫を得て、12時前にオフィスに戻りました。
ノヴァ「今日はもう十分でしょ」
ノリ「すごく良かった!ほんとありがとう!」
と話していると、来客が。
ノヴァ「この人知ってる?」
ノリ「いや…?」
ノヴァ「この地域の水管理をしてる一番偉い人だよ」
ノリ「…ふぁ!?」
今日はどうやら当たりの日らしいです。ぼくが会いたかった人が次々と…。
コミュニティ開発がぼくの仕事で、特に水に関わるというと、「近くにオフィスがあるからおいでよ」と言って連れて行ってくれました。
我々のオフィスの目の前でした。こんなところに…!!
そして、「歓迎するよ!」と言われ…
昼から飲んじゃいました。バーに移動して。
左がノヴァンセとは別の獣医レアンドレ、右が水管理をしているエイジン。彼の会社が何をやっているか書いてもらいました。
水の供給、建設、道路、ダム…メインオフィスはキガリにあって、さっきのちっちゃいオフィスはただのブランチ…めっちゃ偉い人じゃん!ただの水道屋のおっさんだと思ってました。ンババリラ(ごめんなさい)。
しかも「どんな風にパートナーとしてやっていけるかな?何が知りたい?」とものすごく協力的です。
「この地域の水関連で何が一番問題なの?」と聞いたところ、水道管が小さすぎて十分な水を運べない、大きなパイプもあるけどコストがかかって導入が難しい、彼は住民に水を供給してお金を得ているけど、その住民の所得が低いから設備投資が出来ない、かといってセクターからは補助金が一切出ないとのことでした。
この補助金に関しては、権限がムシャセクターの上部組織であるルワマガナ郡庁にあり、そこでは同期のゆきが働いています。ゆきのカウンターパートがこのセクターを含む郡全体のインフラ担当なので、ぼくらが郡庁とセクターの橋渡し役になれれば改善出来るかもしれません。
それから、水源に牛などの動物が近づいてきて不衛生なので、柵も作らないといけないと言っていました。それも住民と協力していけば、ぼくにも出来そうです。
「ぼくは村の人たちがどんなことで困ってるのか、歩きまわって情報を集めて、改善策を考えるから、水とかインフラとか専門的なことを教えてよ」と言うと、さっそく木曜日にこの村に水を供給している大もとのポンプシステムのとこまで連れて行ってもらえることになりました。
まずはこの村にどういう仕組みで水が供給されてるのか勉強してきます。
一通り活動に関する話が終わったら、日本語の授業開始。みんなかなり学習意欲が高く「オハヨウ!ハジメマシテ!オンナノコ!キレイデスネ!オイシイ!ハハヒャーッ!!」と、それはそれは盛り上がりました。
ぼくがそこそこルワンダ語を知ってたからか、英語が話せないエイジンにもかなり気に入ってもらえて、「トモダチ!トモダチ!」と何回も握手されました。
味方しかいない…。昼からお酒飲みながら、どうやったら問題を解決出来るか話し合って、お互いに言語を教え合って爆笑して…最高かよ。
仲間はそこらじゅうにいる
ノヴァンセ、レアンドレ、ブレイブ、エイジン…彼らと出会って、自分のやりたかったことがぐいぐい前に進んでいくのを感じて、本気で鳥肌が立ちました。
1人で村を歩いてるだけじゃ何の取っ掛かりも見つけられませんでしたが、みんなのおかげで取り組むべき問題はごろごろ転がっているということに気づけました。
「こんなことをやりたいんだ!」「これは出来ないけど、これなら出来るんだ!」と色んな人に話していたら、次から次に仲間が出来ました。
この人たちとのつながりをもっと強く、大きくしていけば、必ずこのセクターを良くしていけます。
ぼくには水の知識もないし、水道修理も出来ないし、病気も直せないけど、「人と出会う力」だけはあると思ってます。
1人じゃ何も出来ないけど、「助けてくれ」って叫ぶことは出来ます。
人に頼ることの大切さを、今日は本当に実感しました。
これから問題をもっとよく調べて、整理して、アプローチを考えて、みんなで一歩ずつ前進していきます。
タケダノリヒロ(@NoReHero)