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数字で見るルワンダの改善点と問題点〜Vision2020は達成できる?〜

 タケダノリヒロ( @NoReHero

ルワンダには「Vision2020」というものがあるんですが、ご存知ですか?

この国が2020年までに達成すると掲げた成長目標のことです。

参考:ルワンダ、これからどうなるの?Vision2020から見る現状と将来

現在は2019年の10月。

「そう言えばもうすぐ2020年だなあ」なんて思って調べていたら、「2035年と2050年に向けたルワンダの成長目標のハイライトHighlights of Rwanda’s growth agenda 2035 and 2050 : The New Times)」という記事が出てきました。

未来のルワンダはこんな感じ?? 元記事:Highlights of Rwanda’s growth agenda 2035 and 2050 : The New Times

ルワンダの次の目標である「Vision2050」に向けて、現状を解説した記事です。これが分かりやすかったので翻訳してまとめてみました。

ルワンダの良くなっている点や、依然として悪い点これからについて、元記事の内容を別ソースの統計と見比べながら検証しています。

ルワンダ近年の良くなっている点

まずは近年の良くなっている点。

  • 虐殺以降のルワンダは年平均7%の経済成長、世界最速のひとつ(世界全体では3%程度、日本は約0.5%)。ひとりあたりでも5%
  • 平均余命は31歳から現在の69歳に伸びた
  • 貧困は半減
  • 健康保険の普及率は、人口の80%以上
  • ルワンダはSDGsの主流化と進歩の点でアフリカの51か国中11位にランクイン。地域平均およびすべての東アフリカ国家を破った
  • 10人中9人のルワンダ人が何らかの形の金融サービスにアクセス

出典:Highlights of Rwanda’s growth agenda 2035 and 2050 : The New Times

元記事で「いつからいつまでの変化か」という点が明示されていないのでわかりにくいのですが、これを読む限りかなりポジティブな変化が起きているように見えますね。

以下、何点かピックアップして紹介。

経済成長

経済成長についてはルワンダに住んでいるとよく「年平均7%の経済成長!」という話を耳にするので特に驚きはなかったんですが、むしろ日本を調べたら約0.5%だったのがびっくりでした。もうほとんど成長してないんですね。。

↑ルワンダは年平均7%の経済成長を保っている。近隣国と比べても比較的高い。

ちなみに「なんでルワンダはそんなに経済成長できたの?」とよく質問されるんですが、正直よくわかっていません。

目立った資源も産物もないので、おそらく農業の成長と投資によるものじゃないかと思っているのですが(ITではまだそんなに成果は出てないはず)、ちゃんと調べてまた別記事でまとめます。

平均余命の伸長

平均余命は31歳から現在の69歳に伸びた」とされています。31歳て……!!と思って調べてみたら、どうやら1994年の虐殺直後のデータのようです。

世界銀行からデータを引っ張ってきてるGoogle Public Dateによると、1993年が27.61歳、94年が29歳、95年が31.98歳となっています(グラフでガクッと下がっているところ。大虐殺は1994年)。

そこと比べれば現在の69歳は当然劇的な変化と言えますが、近隣のウガンダやコンゴ民主共和国(どちらも約59歳)よりも高い平均余命となっています。

貧困の減少

New Timesの記事では「貧困は半減した」とさらっと書いてあるのみ。実際はどうなんでしょうか。

世界銀行の「Rwanda Overview」によると、「貧困ライン」(1日の所得が1.25USD)以下の人たちが2001年には59%だったのが、2014年には39%まで下がっています。

半減とは言えないまでも、かなり改善しているようですね。ただし、2014年から2017年の間はほとんど横ばいだったそうです。

ルワンダの特に農村部では、貨幣経済にどっぷり浸からずに暮らしている人たちがたくさんいます自給自足や物々交換で暮らしていけるので、お金がなくても生きていけるんですね。

だから「お金がない=不幸せ」とは一概には言えないんですが、医療や教育といった分野ではどうしてもお金が必要になってきます。

そういった意味ではやはり貧困は撲滅すべきなので、従来の暮らしを壊さずに人々が自発的に貧困から抜け出せるような後押しをしていくことが必要なのでは、と個人的には思っています。

ルワンダの依然として悪い点

続いてはルワンダの依然として悪い点。

  • ジニ係数によって測定された不平等は増加4人に1人近くの子どもが発育阻害(stunting)に苦しんでおり、世界的および地域的な割合よりも高い
  • 発育阻害は、将来の生産性に影響を与える。最近開発されたヒューマンキャピタルインデックス(HCI)では、ルワンダのスコアは100分の37。これは、今日生まれた子供が完全な教育と健康を達成した場合に比べて生産性が37%であることを意味する
  • 小学校修了率は66%と低いまま(70%のサブサハラアフリカと比較して)
  • 教育の質も課題
  • 人口構造による影響→ルワンダ人の年齢の中央値は19歳で、世界平均の30歳、低中所得国(25歳)、高所得国(40歳)に比べて好ましくない
  • 輸出ベースと国内貯蓄はそれぞれGDPの約20%と10%と依然として低い
  • アフリカでビジネスしやすい国2位(Doing Business ランキング)にもかかわらず、民間投資セクターは依然として小規模
  • 個人登録車の数は10万台以下(2015年の国別市場規模では、南アフリカが41万3000台と突出し、以下、エジプト(28万台)、アルジェリア(27万台)、モロッコ(12万台))

出典:Highlights of Rwanda’s growth agenda 2035 and 2050 : The New Times

こちらも何点か抜粋して解説します。

不平等の増加

ジニ係数によって測定された不平等は増加」と書かれています。ジニ係数とは所得分配の不平等さを測る指標のこと。ゼロに近いほど平等であることを表しています。

さきほども引用した世界銀行の「Rwanda Overview」によると、2006年は0.522017年は0.43とされているので、若干平等に近づいていることがわかります。

ちなみに他国を見てみると、もっともジニ係数が高い(平等でない)のは南アフリカで0.62

上のグラフはOECD加盟国のみのデータですが、もしルワンダがこれに含まれていたら4位メキシコと5位トルコの間に入ることになります。

ちなみに日本は0.34で14番目に不平等指数が高いです。

いずれにせよルワンダではまだまだ経済的な格差が大きいと言えるでしょう。これが発展に伴って拡大していくことは大いにありえるので、注目すべき指標のひとつですね。

発育阻害

元記事では「4人に1人近くの子どもが発育阻害(stunting)に苦しんでおり、世界的および地域的な割合よりも高い」とされています。

これもどのデータを見るかで結果が異なるのですが、体重ベースで見ると2015年には9.3%と近隣国と比べれば悪くない数値が出ており、この20年で順調に減少しています。

方身長ベースで見てみると、やはり減少はしているのですが2015年には37.9%とまだまだ高い数値になっています。

この問題にはJICAも取り組んでおり、今年8月に農業変革を通じた栄養改善100億円を限度とする円借款貸付契約が調印されました。

参考:ルワンダ向け円借款貸付契約の調印:栄養改善を通じて子どもたちの健康な成長を支援 | 2019年度 | ニュースリリース | ニュース – JICA

これからの発育阻害問題解決に期待が高まります。

ヒューマンキャピタルインデックス(HCI)

元記事では「ヒューマンキャピタルインデックス(HCI)では、ルワンダのスコアは100分の37。これは、今日生まれた子供が完全な教育と健康を達成した場合に比べて生産性が37%であることを意味する」と書かれています。

実際に世界銀行のHCIマップ(下記)を見てみると、アフリカのほとんどの国が低スコアを示すオレンジ色になっています。

アフリカの多くの国がオレンジの低スコアになっている 引用元:Human Capital

HCIが低いということは、国の発展を支える人材が育ちづらいということ。

さきほどの発育阻害の問題もかかわってくることですが、子どもたちの教育や健康状態の改善が望まれます。

小学校修了率

元記事によると「小学校修了率は66%」。

これが本当ならば、小学校をきちんと卒業できる生徒が7割にも満たないということになります。

これまで「ルワンダの初等教育の就学率はほぼ100%」というデータを見聞きしていたので、「なんだ、少なくとも小学生はちゃんと学校に行けてるんだ」と思っていました。

たしかに「就学率」で見れば2015年は95%となっています。

しかし「修了率」を見てみると、やはり7割にも満たないのです。

つまり、小学校に入学はできているものの、なんらかの理由で中退してしまう生徒が3割以上いるということになります。

私が交流のある小学校の校長先生は「ペンなどの学用品を買えずにドロップアウトしてしまう子どもたちがいる」と言っていました。

ルワンダでは小学校の6年間とセカンダリースクール(中高校)の前半3年間が義務教育になっており、日本と同じく9年間は学費を払う必要がないのですが、ペンや制服などは各家庭がお金を出さなければいけません。

さきほども貧困ライン以下で暮らしている人たちが約4割というデータがありましたが、初等教育修了率が低いおもな原因は貧困にあると考えられます。

ルワンダのこれから

これからのルワンダについて。

目標

ルワンダは2035年までに上位中所得国(GNIが3,996〜12,235USD2050年までに高所得国(GNIが12,235USD以上)を目指しています

Vision2020では「2020年までに中所得国になる(GNIが1,006USD以上)」という目標を掲げていましたが、2017年時点では747USDにとどまっています。

右肩上がりに成長はしているものの、まずは中所得国の仲間入りをいつ果たすことができるかがポイントとなりそうです。

 世界銀行による所得分類
  • 低所得国 = GNIが1,005米ドル(約11万円)以下
  • 下位中所得国 = 1,006〜3,955米ドル(約43万5,000円)
  • 上位中所得国 = 3,996〜12,235米ドル(約134万5,000円)

引用元:第5回 発展途上国と先進国を分ける基準って何ですか?《おしえて!知りたい!途上国と社会》(熊谷 聡) – ジェトロ・アジア経済研究所

目標達成の6ポイント

この野心的な目標を達成するための6つの要因が元記事にあげられています。

  1. 人的資本への対応
  2. 競争力のある国内企業の創造(メイドインルワンダ政策にリンク)
  3. 構造変化にリンクし適切に管理された都市化
  4. 農業部門の近代化
  5. 二次産業・三次産業に労働者が移行するためのインセンティブ
  6. 貿易および地域統合イニシアチブの強化

出典:Highlights of Rwanda’s growth agenda 2035 and 2050 : The New Times

2020年、2035年そして2050年のルワンダはどうなっているんでしょうか。

これからが楽しみです。

Vision2020をおさらいする→ ルワンダ、これからどうなるの?Vision2020から見る現状と将来

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