ルワンダ、これからどうなるの?Vision2020から見る現状と将来

ジェノサイドを経てめざましい経済発展を遂げ、「アフリカの奇跡」とまで言われるようになった国、ルワンダ。

その発展の指針となっているのが、2000年に策定された『Vision2020』です。2020年に向けた目標や計画が数値化されています。

ルワンダはいったいどのような国を目指し、これからどんな国になろうとしているのでしょうか。

現地在住者として、気になる項目をまとめつつ、2020年以降のルワンダについて考えてみました。

アイキャッチ画像出典:Vision 2020(revised 2012)

Vision 2020 概要

『Vision 2020』はこのような構成になっています(2012年にreviseされたものをタケダが翻訳)。

  1. イントロダクション
  2. 現在の状況と課題
    1. 歴史的視点
    2. ルワンダが今日直面している課題
      1. 農業生産性の低さ、貧弱な経済基盤
      2. 交易のための地理的障壁
      3. 低レベルな人材開発
      4. インフラ開発の遅れ
  3. ビジョン2020のおもな目的
    1. マクロ経済の安定性と脱・支援依存のための豊かさ創出
    2. 経済構造の変化
    3. 生産的な中産階級の創出と起業家支援
  4. ビジョン20206つの柱
    1. 健全な政府と優れた自治体
    2. 人材育成と知識基盤経済
      1. 教育
      2. 健康と人口
    3. プライベートセクター主導の開発
    4. インフラ開発
      1. 土地活用マネジメント
      2. 都市開発
      3. 交通
      4. コミュニケーション&ICT
      5. エネルギー
      6. 下水処理
    5. 生産的な高価値とマーケット統合型農業
    6. 地方と他国との統合
  5. ビジョン2020の分野横断的要素
    1. ジェンダー平等
    2. 天然資源、環境、気候変動
    3. 科学、テクノロジー、ICT
  6. ロードマップ
    1. ルワンダの計画プロセスとビジョン2020の実現
    2. ビジョン2020達成のために:マクロ経済予測
    3. ルワンダのビジョン施行のための組織的フレームワーク
  7. まとめ
  8. 48の指標

参考:Vision 2020 revised 2012

2020年までの変化

『Vision 2020』は国の目標なので、規模が大きすぎていまいちピンとこないものもありますが、現地在住者として生活にかかわってくるものや、ルワンダで働くうえで重要な変化をピックアップしてみました。

年間所得の向上

595USD(2011) → 1,240USD(2020)

ぼくは東部県ルワマガナ郡のムシャセクターという農村部に住んでいるのですが、100軒以上まわって調査した結果、平均所得は300~400USDでした(2016年)。

都市と地方では、かなり格差があるようです。

貧困率の削減

44.9%(2011) → 20%(2020)

貧困ライン【1.90USD/日】以下で暮らしている人たちの割合です。

「2020年になってもまだ20%もいるのか」と思ってしまいますが、前述のように農村部では1日1USD程度で暮らしている人もたくさんいるので、20%まで減ればかなりの前進と言えますね。

2015年のデータでは39.1%なので、目標まではまだまだ長い道のりです(参考:CIA World Factbook)。

平均寿命の延長

49歳(2011) → 66歳(2020)

大幅に伸びていますが、2016年のデータでは60.1歳まで上がってきています(参考:CIA World Factbook)。

現地に住むまで気づかなかったのは、途上国だからと言って決して長生きができないわけではないということ。

平均寿命だけ見ると「もううちの親はルワンダの平均寿命超えてるじゃん!」と思ってしまいますが、ルワンダにもおじいちゃん・おばあちゃんはいます(日本よりは少ないけど)。

ただ、先進国と比べると乳幼児期に亡くなる子どもが多いために、平均数値がぐっと下がってしまうんですね。

 

これらの「所得の向上」、「貧困率の削減」、「平均寿命の延長」などによって、2020年までに“middle-income country”になることを目指しています。

知識基盤型経済

そこでポイントとなるのが、農業中心だった経済から「知識基盤型経済(knowledge-based economy)」への移行です。

具体的には、一次産業から三次産業へのシフトを目指しています。


上のグラフはGDPに占める各産業の割合の推移です。

2011年【一次:二次:三次=32:16:52】

2020年【一次:二次:三次=24:19:57】

ルワンダは内陸国であり、天然資源も少ないため、サービス産業が「ルワンダ経済においてもっとも重要なエンジン」と位置づけられているんですね。

その実現のために、「教育」と「健康」にも力が注がれています。

とは言え、「サービス産業に移行しろっつったって、仕事がないんだよ!」っていうのが現状です。

ルワンダで暮らしていると、初対面であっても開口一番に「仕事をくれ」と言われることがよくあります。それくらい仕事がないんです。

いくら子どもたちに質の高い教育を施して、健やかに育てるように環境や制度を整えて立派な大人になったところで、その能力を生かす仕事がなければ意味がありません

だから、国としても「仕事を創ること」に主眼が置かれていて、2020年までに160万人分の雇用を創り出す必要があるとされています。

都市部への人口移動

都市部への人口移動はますます加速していきます。

14.8%(2010) → 35%(2020)

2010年には10%だったので、10年で3.5倍!

ちなみに「都市部」とは、具体的にどの地域を指すんでしょうか。

RDB(Rwanda Development Board)のサイトでは、「Major cities」としてKigali(キガリ)、Huye(フイエ)、Rubavu(ルバブ)、Musanze(ムサンゼ)の4都市が紹介されています。

キガリ:首都

フイエ:キガリから南に車で約3時間。ルワンダ国立大学などがある、知と文化の発信地(と言われている)。

ルバブ:キガリから西に車で約3時間。キブ湖があるリゾート地(と言われている)。

ムサンゼ:キガリから北に車で約2時間。マウンテンゴリラツアーが有名。

交通網の整備

ルワンダは内陸国であり、東アフリカの貿易窓口であるケニアやタンザニアの港から離れていることがビジネスの障壁となっています。

そこで進められているのが鉄道の敷設。現在タンザニアとウガンダにあるレールをルワンダまで伸ばしているところです。

また、スワヒリ語がルワンダの公用語に加えられるので、タンザニアやケニア、ウガンダとの交易がますます盛んになるでしょうね(現在はルワンダ語、英語、フランス語の3つ)。

コミュニケーション&ICT

「ICT立国」としてこの分野にかなり力を注いでいるルワンダ。

『Vision 2020』では、2020年までにすべての行政レベル、すべてのセカンダリースクール、多数の小学校でインターネットへのアクセスを可能にすると書かれています。

2017年4月現在、ぼくが青年海外協力隊として派遣されているセクター(村役場のようなところ)ではWi-Fiが設置されています(があまり実用的ではない)。

地域のセカンダリースクールや小学校ではまだインターネットは導入されていません。

インターネットユーザーの割合は、2020年までに最低でも国民の50%以上とすることが目標となっています(2010年は4.3%)。

電気

2%(2000) → 11%(2010) → 75%(2020)

2000年には電気の普及率はまだ2%しかなかったんですね…!

2017年現在、ぼくの住んでいる農村部でも大多数の家庭に電気が通っています。ただし、電気代が高いので夜でも電気を付けていない家がほとんどです。

屋根にソーラーパネルが設置してある家庭もたまに見かけますし、それを利用して携帯電話の充電サービスをしているところもあります。

安全な水へのアクセス

74.2%(2010) → 100%(2020)

ぼくの青年海外協力隊としてのおもな任務は水・衛生環境の改善ですが、意外と水へのアクセスは整っていて、まったく水が手に入らないということはありません。

近所の住民の多くが、公共水栓(有料)と湧水(無料)と雨水を併用しています。

ただし、ときには公共水栓に長蛇の列ができてしまい何時間も待たなければいけなかったり、湧水まで谷を降りて重いタンクを頭に載せて何時間もかけて帰ってきたりと、非常に効率が悪いです。

このアクセスを向上させることで、生産性が高まることは間違いありません。

2020年以降の変化

2020年(またはその数年後)に『Vision 2020』で掲げている目標を達成出来たら、ルワンダは次に何を目指すのでしょうか

世界初ということで話題になっているドローン実用化をはじめとしたテクノロジー分野に力を入れていくことは間違いありません。

ほかにもスポーツやエンターテインメントもまだまだ伸びる余地があります。

しかし『Vision 2020』を改めて読んでみてふと気づいたんですが、「観光(sightseeing)」、「旅行(travel, trip)」、「外国人(foreigner)」といった単語が一切出てこないんですね。

街中にはマウンテンゴリラやサファリの広告があるので、イメージ的にはもっと観光に力を入れていると思っていたんですが、それよりもまずは国民の所得向上、貧困削減といった生活の基本となるような事柄が重視されているようです。

とは言え、『Vision 2020』によってサービス産業が成長すれば、ホテルやレストランなどが充実してきます。交通の便もさらに良くなります。

そうなってくると、次のフェーズとしては外国人観光客の招致が考えられますね。

ルワンダがモデルとしているシンガポールは、現在世界で4番目に外国人観光客が訪れる都市となっています(参考:Wikipedia)。

なのでルワンダも2020年以降は観光に力を入れていくのではないかと思っています。

ありがたいことに、これまでたくさんの方が「ブログを読んできました!」と言って来てくれました。

これからルワンダという国自体がますます発展していくのはもちろんですが、数ある旅行先のなかからルワンダを選んでくれる人がひとりでも増えるように、ルワンダという国を身近に感じてもらえるように、この国の魅力を発信していこうと思っています。

タケダノリヒロ(@NoReHero

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